- 働き方改革
- 2022.11.10
最低賃金の引き上げは正社員へも影響あり!プラスとマイナスの影響をそれぞれ確認
最低賃金は毎年見直されているものです。8月頃に改定後の金額が発表され10月から適用されます。2022度の最低賃金は全国平均で時給961円、前年から31円アップで過去最高額となりました。
最低賃金の改定は「正社員には関係ない」と思われるかもしれませんが、正社員、派遣社員、アルバイト・パートなど雇用形態に関係なく適用されます。最低賃金の改定が、正社員にどんな影響を与えるのかを予め知っておくことで、計画的に行動ができるでしょう。
この記事では、最低賃金について理解を深め、正社員へのプラスとマイナスの影響について解説します。
最低賃金とは
日本には、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた「最低賃金制度」があります。最低賃金とは、この最低賃金制度で定められた労働者に支払わなければならない最低限度の時給額のことです。
最低賃金の種類
最低賃金には以下の2種類があります。
- 地域別最低賃金
- 特定最低賃金
地域別最低賃金は都道府県によって設定されます。生活費や労働の生産性などは地域によって異なることから、最低賃金は、都道府県(地域)によって異なります。
特定最低賃金も都道府県によって設定されることがほとんどで、特定の産業や職業の最低賃金のことをいいます。地域別最低賃金と特定最低賃金も適用される場合は、使用者は高い方の最低賃金以上を支払わなければなりません。
最低賃金の対象
最低賃金は正社員、派遣社員、アルバイト・パートなどの雇用形態、給与形態、産業や職種などに関わらず、働くすべての人が対象となります。また、毎月支払われる基本給が対象ですが、以下のような賃金は対象外となるため除かれます。
- 賞与
- 時間外割増賃金
- 休日割増賃金
- 深夜割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当、結婚手当など
正社員の場合、以下で計算した結果が最低賃金を下回らないようにしなければなりません。
月給額×12ヶ月÷年間所定労働時間
その際、上記で紹介した対象外となる賃金は除外して計算しましょう(職務手当は対象)。
下回った場合は罰則
最低賃金を下回った場合は罰則があり、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。
もし、従業員が最低賃金より低い賃金で了承していたとしても無効になります。地域別最低賃金を下回った場合には50万円以下の罰金(最低賃金法40条) 、特定最低賃金額を下回った場合には30万円以下の罰金が定められています(労働基準法120条第1号) 。
最低賃金の引き上げが正社員に与えるプラスの影響
最低賃金改定(引き上げ)は、正社員も給与がアップする可能性があります。時給計算して最低賃金を下回る場合は、賃金を引き上げることになります。
2022年であれば、東京都や大阪府は10月1日から改定となります。
また、最低賃金を上回っていたとしても、最低賃金の引き上げによって給与全体を引き上げるという判断をする企業もあるでしょう。
最低賃金の引き上げが正社員に与えるマイナスの影響
では逆に、マイナスの影響は何でしょうか。以下でご紹介します。
モチベーションが保てなくなる可能性がある
最低賃金が引き上げになることで、正社員としては、モチベーションが保てなくなるかもしれません。
例えば、パート・アルバイトの賃金が最低賃金を下回っていたために給与が引き上げられると、正社員との給与差がなくなることが考えられます。給与差がなくなることで正社員で働くモチベーションが保てなくなる人もいるでしょう。生産性も悪化してしまい、自分が思うような成績を残せないといったことが起こるかもしれません。
業務負担が増える
最低賃金が引き上げられると、正社員の業務負担が増える可能性があります。
最低賃金の引き上げによって人件費の負担が膨らめば、企業としては採用コストを割くことが難しくなる可能性も。ある程度採用人材の働きを見越した業務量になっていた場合、採用を先送りにすると既存社員でその業務をこなさなければなりません。
また、賃金面で他社との採用競争で優位になれないと、優秀な人材の確保が難しくなり、一人ひとりの社員の業務負担が増えることも考えられます。
残業代が削減される
人件費が膨らむことへの対策として、残業時間が削減されて残業代が抑えられる可能性があります。
また、非正規労働者の雇用が抑制されることで、時間外労働・休日出勤などが発生することもあるでしょう。その場合、本来であれば時間外・深夜・休日割増賃金が発生するわけですが、サービス残業として未払いになる恐れがあります。さらに、残業代の削減により、報酬が減ってしまうかもしれません。
正社員でも最低賃金の改定について知っておこう
最低賃金の改定は正社員にも影響があります。引き上げになった場合、プラスだけでなくマイナスの影響も考えられるため、毎年動向には注意しておくと良いでしょう。それによって、改定後に起こる変化に先回りして対処しておけるようにしましょう。そのためにも毎日の仕事で効率的に生産性を高めておくことは重要です。そうすることで非正規労働者の雇用が抑制された場合でも対処できる可能性が高まります。
なお、健康経営をおこなう企業であれば従業員の業務負担に偏りがある場合などは積極的に改革することが考えられます。最低賃金の引き上げにより職場環境が悪化し、自分では改善が難しい場合は、健康経営優良法人に認定されている企業への転職も検討すると良いでしょう。
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