- 健康経営
- 2022.10.14
10月から給料が減る?社会保険料のしくみと2022年10月改正の社会保険を解説
10月の手取り額が前月より低い経験はありませんか。それは社会保険料の仕組みが関わっています。さらに2022年10月からは社会保険の加入要件が見直されたため、手取り額が少なくなる人も多いでしょう。今回は社会保険料の仕組みと、2022年10月から改正される社会保険の加入要件、健康経営との関わりについてご紹介します。
10月の給料が減るのはなぜ?
10月は見直された社会保険料が反映される時期です。10月の給料明細を見て給料が減っていると感じたら「社会保険の控除額」欄をチェックしてみましょう。健康保険や介護保険、厚生年金といった社会保険料が見直されることで、負担額の増加し、手取り額を減らす原因と考えられています。
収入にともなって社会保険料が変化する
社会保険料が見直されるケースとして、以下の2つが考えられます。- 労働者の標準報酬月額が変わった
- 社会保険料の保険料率や保険負担割合が変更された
社会保険料はすべての労働者が一律に決められた額を支払うわけではありません。報酬額に応じて支払われるべき社会保険料が定められています。その目安が標準報酬月額です。毎月の給料は人それぞればらつきがあるため、ある程度の範囲で分割し、分割範囲の代表値に標準報酬月額を定めます。たとえばひと月の報酬が195,000円以上210,000円未満の場合、標準報酬月額は200,000円。210,000円以上230,000円未満の場合は220,000円が標準報酬月額です。
標準報酬月額の見直しは4〜6月の給料をもとに行われます。ここで決定した標準報酬月額はその後1年間変わりません。新しい標準報酬月額は社会保険料の計算に用いられ、9月分の報酬から適用されます。よって4月に昇給を受け、5〜9月まで前年度より高い給料を受け取っていても、10月に支給される給料で社会保険料が見直される仕組みです。
昇給によって標準報酬月額が変化していれば社会保険料も変わり、前月以上に社会保険料を支払う必要があります。よってそれまでより給料が減っていると感じられるでしょう。
4〜6月は働きすぎに注意
標準報酬月額を決定するために参考となるのが基本給や残業代などの手当です。基本給は変わらずとも、残業代などで給料がアップしていると標準報酬月額が変動する可能性があります。「4〜6月は働きすぎに注意」といわれる理由はこのためです。標準報酬月額は4〜6月に得られた報酬額によって決定します。一時的に4〜6月の残業が多く給料が通常より多い場合でも、この3か月によって標準報酬月額が決定するため、以降1年間はそれを基準に社会保険料を支払わなければいけません。毎月の給料に差があるという人は4〜6月の働きすぎには特に注意してください。
2022年10月から雇用保険料率がアップ
2022年10月から雇用保険料率が見直されます。社会保険料が見直される2つのケースのうち「社会保険料の保険料率や保険負担割合が変更された」というケースにあたるでしょう。 雇用保険料率が見直される背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大によって雇用調整助成金や失業手当の給付が増加したことがあります。助成や給付金を発行することで雇用保険の財政が悪化。これをうけて2022年10月から雇用保険料率が引き上げられることが決定しました。 雇用保険料は労働者と事業主それぞれが負担しています。労働者が関わる雇用保険の保険料率は以下のとおりです。- 一般事業者:0.3%
- 農林水産・清酒製造事業者:0.4%
- 一般事業者:0.5%
- 農林水産・清酒製造事業者:0.6%
2022年10月からかわる社会保険加入要件
社会保険とは厚生年金や雇用保険、介護保険をはじめとした被保険者やその扶養者のリスクに備える公的保険です。これらに加入することで病気やケガをしたときの自己負担額が軽減されたり老後の年金額が保障されたりします。
社会保険は一定の要件を満たした従業員に加入義務があり、保険料の負担は企業と従業員の双方で行います。毎月の給料から天引きされるため、社会保険料によって手取り額が減っているように感じるかもしれません。アルバイトや派遣社員として働く人のなかには、社会保険に加入しない働き方を選択する人もいます。
社会保険の加入要件拡大
2016年以降、社会保険の適用範囲が拡大されています。アルバイトや派遣として働く非正規雇用の場合、労働条件が正社員とは異なるケースが多くあるでしょう。そのひとつが社会保険に加入するためのハードルの高さです。これを是正するため段階的に加入要件が拡大し、2022年10月には社会保険の加入要件が以下のように改正されました。- 週労働時間20時間以上の従業員
- 月額賃金8,8万円以上(年収換算で約106万円以上)の従業員
- 勤務期間2か月超を見込む従業員
- 従業員101人以上の企業等が対象
2022年10月の改正以降、非正規雇用で働く人の多くが社会保険の適用対象となるでしょう。たとえば半年程度の雇用期間であってもそのほかの要件を満たしていれば社会保険の加入対象です。手取り額が変わるので、あらかじめ確認しておきましょう。
社会保険加入によって変化する手取り額
社会保険に加入することで手取り額は変化します。たとえば東京都の協会けんぽが適用される40歳、年収1,200,000円の人なら、これまで月収100,000円を得ていたところ社会保険に加入することで厚生年金保険料9,000円と健康保険料5,700円が差し引かれ、手取り額は85,300円になります。手取り額が減ると聞くと、社会保険に不満を感じる人もいるかもしれません。たしかに一時的にはデメリットとして感じられる社会保険料ですが、将来的にはメリットとなりえます。
社会保険のメリット・デメリット
社会保険に加入することで以下の4つのメリットがあります。- 老齢年金:国民年金に上乗せして厚生年金に加入することで、将来の年金受給額が増える
- 障害年金:障害基礎年金に加え、障害厚生年金に上乗せで加入できる
- 遺族年金:遺族基礎年金に加え、遺族厚生年金に上乗せで加入できる
- 健康保険:傷病手当金や出産手当金が受け取れる
一方、社会保険への加入によって手取り額が減るのはデメリットに感じられるでしょう。将来やいざというときの備えは重要ですが、目先の収入を確保しなければ生活できません。社会保険の加入要件を満たしている場合、社会保険への加入は企業と従業員の義務です。よって社会保険料を支払いたくない場合は加入要件に満たない働き方をする必要があります。アルバイトの掛け持ちや労働時間の短縮、社会保険の加入要件を満たさない企業への転職など、働き方の選択を迫られるのは従業員にとってデメリットといえます。
健康経営と社会保障
社会保障は健康経営にも大きく関わります。近年、少子高齢化や新型コロナウイルス感染症の拡大によって圧迫されている日本の社会保障。健康経営によって社会保障を支える、健康経営と社会保障の関わりについてご紹介します。
健康経営とは
従業員が健康に生き生きと働くことで、経営面でも大きな成果を期待する健康経営。企業ごとにさまざまな取り組みが進められています。たとえば健康診断や健康相談の定期的な実施は、従業員の身体的健康を支えるでしょう。またワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方改革やスキルアップ研修によるモチベーションの向上など、精神的健康を支える事例も報告されています。事業内容や風土にあわせた健康経営の取り組みが重要です。経済産業省では2015年度から健康経営銘柄制度を設けて、健康経営を推進する企業を選定しています。あらかじめ定められた項目にしたがって企業の取り組みを評価し、健康経営優良法人として表彰。これによって各企業の取り組みが見える化され、社会的評価や組織価値の向上につながっています。健康経営優良法人に認定された企業には認定マークが付与されているので、チェックしてみてください。
社会保障費の削減に貢献する健康経営
企業が健康経営に取り組むことで、健康に暮らし働く人が増えるでしょう。医療費や介護費をはじめとする社会保障費をいかに削減するかは、少子高齢化社会の渦中にある日本が抱える大きな課題です。一人ひとりが健康に暮らし働くことで、社会保障費の削減に大きく寄与できます。人生の大部分を占める職業人としての暮らし。健康なくしては成果もあげられません。働く人の健康をサポートすることが、生産性のアップや企業価値の向上はもちろん、少子高齢化社会にある日本の社会問題の解決にもつながります。健康診断や健康相談といった身体的健康のサポートをはじめ、ストレスチェックや働き方改革による精神的健康のサポートによって、誰もが長く健康に働ける社会を目指しましょう。
社会保険料とともに考える働き方
社会保険料の仕組みと2022年10月から改正される社会保険の加入要件、健康経営との関わりについてご紹介しました。毎月の給料からは、所得税や住民税のほかに社会保険料が引かれています。社会保険料は4〜6月の給料をもとに見直され、10月から適用されることで10月の給料が減っていると思われがちです。給料明細の社会保障の控除欄をチェックしてみてください。また2022年10月からは社会保険の加入要件が見直されます。新たに社会保険に加入することで手取り額が少なくなる人も多いでしょう。普段あまり給料明細を見ないという人も、この機会に給料額や社会保険料をチェックしてみてください。
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