- 働き方改革
- 2022.10.02 (最終更新日:2022.10.20)
パラレルキャリアとは?始め方や注意点、個人と企業のメリット・デメリットをご紹介
本業以外で仕事をもつ人が増えています。副業が浸透するなかで、近年注目されつつあるのがパラレルキャリアです。副業とは異なる特徴があり、実践する本人はもちろん、本業の企業にも多くのメリットがあります。新しい働き方の実現を目指す人、理想のキャリアプランをもつ人には特におすすめの働き方です。今回はパラレルキャリアのメリット・デメリットや始め方、注意点をご紹介します。
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアとは、本業をもちながら第二のキャリアを築くこと。オーストリアの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが提唱した考えです。本業とは別に企業へ就職したり、自営業を始めたりボランティア活動を行ったりするのがパラレルキャリアの代表的な例としてあげられます。必ずしも金銭的な報酬を得ることが目的ではなく、スキルアップや将来の夢の実現、社会貢献のための行動である点が大きな特徴です。ひとつの仕事にこだわらず、すべての仕事や活動を等しく捉えて取り組む姿勢から、複業と表現する場合もあります。
パラレルキャリアと副業の違い
副業とは一般的に、報酬を目的とした仕事のことを指します。スキルアップややりがいを求めて副業をしていても、そこには報酬を支払われることが前提です。一方パラレルキャリアの概念では、報酬のないボランティア活動もパラレルキャリアのひとつです。パラレルキャリアの大きな特徴はスキルアップややりがい、本業では得られない経験を目的としていること。副業と異なり、必ずしも収入を伴うとは限りません。パラレルキャリアと副業では、同じように行動しても本人が目的意識をどこにもっているかでとらえ方が異なります。これによって従業員同士や従業員と会社間に認識のズレが生じることもあるので注意が必要です。
注目される背景
副業志向の高まりとともに、パラレルキャリアも注目されつつあります。総務省統計局が5年ごとに発表している「就業構造基本調査」によると、2017年に副業をしている人は、雇用されている人全体のなかで4.0%。267.8万人の人が副業をしているという結果です。また副業をしたいと考えている人は約424.4万人でした。これ以降も副業をしている人・したいと考えている人は増加するでしょう。副業志向が高まっている背景には、多様な働き方の変化があります。終身雇用制度が崩壊し、少子高齢化によって定年年齢が引き上げられた近年。フレックスタイム制の導入やリモートワークの増加、転職に対する考え方の変化など、働く人を取り巻く環境は大きく変わっています。これを受けて厚生労働省は2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表。このなかで副業を認める方向性を打ち出しています。副業志向の高まりとともに、パラレルキャリアという考え方も注目されつつある現状です。
パラレルキャリアのメリット・デメリット
パラレルキャリアは個人の意思のもとに行われるため多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。パラレルキャリアを実践する本人はもちろん、企業が得られるメリット・デメリットをあわせてご紹介しましょう。
メリット
パラレルキャリアの目的は活動を通じたやりがいやスキルアップ、新たな経験の習得などです。パラレルキャリアを通じて得られた経験が、本業に生かされる場合もあります。他の活動で刺激を受けて仕事に対するモチベーションが上がったり、視点が広がって創造的なアイデアが生まれたりすることもあるでしょう。パラレルキャリアによって得られる個人のメリットは、企業のメリットにも通じます。個人のメリット
パラレルキャリアに取り組む人には、以下のようなメリットが期待できます。- 本業では得られない経験やチャンスが得られる
- 本業のモチベーション向上
- 転職せずに新たなキャリア形成を行う
- 人脈が広がる
- 視野が広がる
- 経理やマネジメントのスキルが身に付く
- 時間管理能力が身に付く
- 社会に貢献できる
- 気軽に始められる
- 夢を実現できる
企業のメリット
従業員がパラレルキャリアに取り組むことで、企業には以下のようなメリットが期待できます。- 人材育成コストの削減
- 生産性の向上
- 自社への定着
- リーダーとなるべき人材の育成
- 主体性や自主性の向上
デメリット
パラレルキャリアは個人にも企業にも大きなメリットがある一方、弊害があることも十分に理解する必要があります。特に企業における弊害を事前に想定し、対策を練って対応します。デメリットを見極め、支障をきたした際には的確に対処できるよう、事前に準備しておくことが重要です。個人のデメリット
パラレルキャリアに取り組む人には、以下のようなデメリットが考えられます。- マネジメントスキルが求められる
- 本業に支障をきたす可能性がある
- 本業の就業規則違反に注意
- パラレルキャリアについて周囲の理解が浅い
企業のデメリット
パラレルキャリアを推進する企業には、以下のようなデメリットが考えられます。- 本業の生産性を低下させる
- 情報漏えいの危険性
- 人材の流出
- 事務コストの増大
パラレルキャリアを始めるために
パラレルキャリアを始めるためには、目的ややりたいこと、将来的になりたい姿を明確にすることが大切です。また本業として所属する会社の規定をしっかりと確認しておきましょう。パラレルキャリアの始め方や手順、注意点などをご紹介します。
パラレルキャリアの始め方
パラレルキャリアを始めるなら、まずは自分のやりたいことを書き出してみましょう。時間やお金に縛られず、やりたいことや成し遂げたいことを考えます。パラレルキャリアの始め方に決まりはないので、自身の趣味や興味を突き詰めるのも方法のひとつです。将来的になりたい姿や目指すべきところを想像すると、パラレルキャリアの方向性をより明確に描けます。やりたいことが明らかになったら、それができる企業や団体、サークルに加入したりSNSで自らの活動を発信したりします。実際に現場で活動することで、活動に対するやりがいやスキルアップを感じられるでしょう。経験を積んで自らの価値を高めることが、パラレルキャリアをさらに豊かにしていきます。
パラレルキャリアを始めるうえで大切なのは、自分なりの計画に沿ってスモールステップで進めることです。パラレルキャリアに没頭すると、本業やプライベートを圧迫します。なりたい姿や目指すべきものに対して、無理のない範囲で小さな目標から設定しましょう。目標達成の積み重ねによって確実に理想の姿に近づけます。焦らず長期的な視点でパラレルキャリアをとらえてみてください。
パラレルキャリアの注意点
パラレルキャリアを始めるためには、以下のような点に注意しましょう。- 所属企業が副業を禁止していないか
- 時間や収入などの管理
- 信頼獲得のためにスキルを磨く努力をする
- パラレルキャリアの目的を明確にする
パラレルキャリアの形成は誰かに指示されるものではありません。また本業や副業と異なり、収入を目的としないため自己管理や自己研磨といった自分で自分を律することが求められるでしょう。パラレルキャリアによって成し遂げたいことを明確にして、コツコツと経験と実績を積み上げていくことが大切です。
パラレルキャリアと健康経営
健康経営とは業績や組織の価値向上を目的に、企業が従業員の健康維持・増進に取り組む手法のことです。従業員の活力や生産性アップを目指して、心と体の両面から健康促進事業を展開しています。たとえば定期的な健康診断の実施やストレスチェック制度の導入は健康経営の代表的な事例です。また残業時間の見直しやフレックスタイム制度の導入といった働き方改革や、ワーク・ライフ・バランスの推進によって、従業員の精神的健康が保たれることもあるでしょう。企業の働きかけによって、従業員が健康かつ生き生きと働く職場づくりが進められています。
健康経営に通じるパラレルキャリア
多様な働き方を支援するパラレルキャリアは、健康経営の取り組みとも関わっています。パラレルキャリアは従業員のスキルアップややりがいの創出に効果的です。一人ひとりのパラレルキャリア形成を支援することで、本業の生産性アップや就業意欲の向上につなげられるでしょう。実際にパラレルキャリアを支援する企業では、副業を認めたり社内保育施設を兼業するパラレルキャリア枠を設けたり、従業員同士が副業に関する情報交換を行う機会を設けたりする事例があります。本業企業がパラレルキャリアをサポートしたり始めやすい環境を整えたりすることで、従業員によるパラレルキャリアが実践されるでしょう。本業と両立させながらパラレルキャリアで得たスキルや経験を生かすよい循環が期待できます。
パラレルキャリア支援の注意点
パラレルキャリアを推進するためには、社内規則を改訂したり情報漏えいの予防対策をとったりする必要があります。実際、副業を認めない企業の懸念点には労務管理の煩雑化や情報漏えいの危険性などがあげられます。これらの懸念はあらかじめ社内規定を設けることで払拭できるでしょう。従業員本人ばかりでなく、企業にも大きなメリットをもたらすパラレルキャリア。生産性の向上も期待できるため、パラレルキャリアの推進は健康経営の取り組みに通じます。正しく効果的なパラレルキャリアの推進によって、従業員が生き生きと働く職場づくりを目指しましょう。
パラレルキャリアによって個人も企業もモチベーションアップ
パラレルキャリアのメリット・デメリットや始め方、注意点をご紹介しました。本業とは別の活動で第2のキャリアを築き、多様な働き方や生き方を実現するパラレルキャリア。実践する本人はもちろん、本業として勤める企業にも多くのメリットがあります。パラレルキャリアで得たスキルや経験を本業にも生かすためには、従業員と企業がお互いにパラレルキャリアについて正しく理解し、デメリットとなりうる注意点にあらかじめ対応することが大切です。
パラレルキャリアは収入を期待する活動ではありません。しかし新たな経験やスキルの習得、新しいワークスタイルの確立など、理想的なキャリアライフを形成するうえで貴重な糧になるでしょう。本記事の始め方や注意点などを参考に、新しい働き方の実現やキャリアプランの実現を目指して挑戦してみてはいかがでしょう。
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