- 健康経営
- 2022.09.07 (最終更新日:2022.09.08)
従来のうつ病とは異なる新型うつ病の特徴とは?原因や治療法についてご紹介
従来のうつ病は常に気分が沈んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状が多く見られました。しかし、最近では20〜30代の若い世代を中心に「新型うつ病」という新しいうつ病が増えています。
従来のうつ病とは全く異なる症状のため、本人や周囲の人も発症していることに気が付きにくく、「甘えている」「怠けている」と勘違いされることもあるようです。
今回は、新型うつ病の特徴や原因、治療などについて従来のうつ病と比較しながらご紹介します。
新型うつ病の特徴をチェック
新型うつ病は若い女性が発症しやすく、従来のうつ病と特徴が全く異なります。普段の様子とさほど変わらないケースもあるため、周囲の人はもちろん本人も気が付かないことが多いようです。
ここでは、新型うつ病の代表的な症状をいくつかご紹介します。当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
仕事に行くときに気分が沈む
従来のうつ病は、常に気分が沈んだり落ち込んだりといった精神症状の他に、食欲が湧かない、眠れないといった身体症状も見られるのが特徴でした。
しかし、新型うつ病は仕事や学校へ行く時など、自分にとって嫌なことをする時だけ気分が落ち込みます。それ以外はさほど気分が落ち込んでいることはないでしょう。
そのため、周囲の人からは「単に仕事や学校へ行くことを嫌がっているだけ」「甘えている」などと捉えられてしまい、発見が遅れるケースが多いようです。
新型うつ病は気づくまでに時間がかかるため、発見したときにはすでに合併症が起きていたということもあります。 学校や仕事へ行く際にいつもより気分が沈むなど、異変に気づいた時は無理せず休むなどの対策をしましょう。
夕方に気分が沈みやすい
従来のうつ病は、朝に気分が沈むことが多く、夕方になると回復する症状が多く見られました。しかし、新型うつ病は夕方に気分が沈むことが多く、朝は症状があまりでません。
従来のうつ病とは正反対の症状であるため、この症状だけを見てもうつ病を発症していると気づくのは難しいでしょう。
また、うつ病ではなくても夕方は1日の疲労などにより気分は沈みやすい傾向にあります。
この症状の他にも、新型うつ病に当てはまる症状がある場合は精神科を受診することをおすすめします。
休日や趣味の時間は元気
従来のうつ病は平日・休日問わずいつでも気分が落ち込んでいることが特徴でした。大好きだった趣味に関心がもてなくなり、全てのことに対して無関心になるケースも多く見られます。
新型うつ病の場合、休日や趣味の時間は元気でいられることが、従来のうつ病との決定的な違いです。仕事や学校などの嫌なことに関する時間は気分が沈み、好きなことに関する時間であれば元気になることは誰にでもありえることでしょう。
好きなことをしていると元気になるため、周囲の人や本人もうつ病であることに気づかず、発見が遅れるケースが後を断ちません。 休日や趣味の時間は元気でも、仕事や学校へ行く時に気分が沈みすぎることが多い人は、新型うつ病の可能性があるかもしれません。
過食・過眠の症状がある
従来のうつ病は食欲がなくなり、不眠などの症状に悩まされることがあります。しかし、新型うつ病では過食・過眠の症状が見られることが多いです。
新型うつ病になると食べることで不安感を打ち消すため、常に何かを食べていなければ落ち着きません。そのため、空腹でなくても常に何かを食べたいという衝動に駆られます。
度を越した過食を繰り返す場合、摂食障害を疑われる可能性があり、症状の根本的な原因である新型うつ病に気づくのが遅れるケースもあるのです。
他責思考である
従来のうつ病では、「自分が悪い」、「自分のせいである」など、全ての出来事に対して自分を責める「自責思考」が強くあらわれます。常に自分を責めてしまうことから、自分の存在意義を見いだせなくなり、自殺願望に繋がるケースもあるようです。
しかし、新型うつ病では全ての出来事に対して「周りのせいだ」と思い込む「他責思考」が強くあらわれます。そのため、イライラしやすかったり、他人に対して攻撃的になったりと性格的な変化も見られるでしょう。周囲の人からは性格的な問題があると勘違いされるケースもあり、敬遠される原因になりかねません。
また、うつ病になりやすい人は幼少期から「良い子」だったり、責任感が強かったりと周りからの信頼が厚い人が多い傾向にあります。そのため、新型うつ病を発症した際、性格の変化に周りが驚き、性格が変わってしまったと捉えられるケースも少なくありません。
新型うつ病の原因
新型うつ病は環境やもともとの性格など、さまざまな原因から起こることがわかっています。 ここでは、新型うつ病の原因についてご紹介します。
脳内の異常
精神科では、脳と精神の状態は深く関係しており、「精神病=脳の病気」とも捉えられています。そのため、脳内に異常があると精神的にも影響を及ぼし、うつ病や新型うつ病を発症すると考えられています。
最近の研究で、うつ病患者の脳内を調査したところ、脳内神経伝達物質に異常があることが明らかになりました。例えば、パニック障害の患者は「セロトニン」という神経伝達物質の働きが活発になりすぎています。セロトニンは、本来精神を安定させたり脳内の働きを活発にしたりするため、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
このセロトニンの働きが高まりすぎると、逆に不安感が増したり錯乱状態に陥ったりする「セロトニン症候群」を引き起こすのです。そのため、セロトニンが何らかの原因で増えすぎるとパニック障害を引き起こすことがあります。
このように、脳内神経伝達物質の異常からうつ病などの精神病に発展するケースもあるのです。
不規則な生活
不規則な生活を続けることで、自律神経のバランスやホルモンバランスが乱れるなど、脳内や神経系に大きな影響を及ぼします。
とくに睡眠は身体にとって重要なため、睡眠時間が極端に短すぎたり長すぎたりすると体内のバランスが崩れてしまいます。
また、食事の時間が日によってバラバラだったり、朝昼晩3食を毎日摂れなかったりすることも、自律神経のバランスを崩す原因になります。
家庭環境
うつ病患者は、両親のどちらかがうつ病である人が多いことで知られています。そのため、明確な調査結果などはありませんが、うつ病の発症には遺伝や家庭環境の影響も大きいと考えられているようです。
とくに新型うつ病は、発症患者のうち、両親のどちらかがうつ病である人は7割程度といわれています。そのため、従来のうつ病よりも新型うつ病の方が家庭環境の影響が大きいようです。
性格的な要因
もとの性格が原因で新型うつ病になりやすい人もいます。 新型うつ病になりやすい人の特徴は下記のとおりです。
- 責任感が強い
- 自己主張が苦手
- プライドが高い
- 完璧主義
- 優しい
責任感が強かったり完璧主義だったりする人は、物事に対して「適度に手を抜く」ことができません。全てを完璧な状態に仕上げようとするあまり、1人で抱え込んでしまい新型うつ病を発症するケースがあるようです。
また、自己主張が苦手な人も自分が希望することや嫌なことを周りに伝えられないため、知らないうちにストレスを溜めやすい傾向にあります。周りの人に意見を合わせることが多いため、「優しい人」という印象をもたれることも多いでしょう。
新型うつ病の治療方法
新型うつ病を放っておくと、境界性人格障害などの合併症を引き起こす可能性があります。 そのため、早期発見・治療が重要です。ここでは、新型うつ病の治療方法についてご紹介します。
薬物での治療
薬物療法は、乱れた脳内神経伝達物質のバランスを整えることを目的としています。そのため、ほとんどのうつ病患者が「抗うつ剤」を処方されるでしょう。
不安感や気持ちが落ち込むことを抑えるために、症状に合わせて抗不安薬や抗精神病薬などの薬も処方されることもあるようです。
しかし、従来のうつ病よりも薬の調整が難しく、薬の効果が感じられないケースもあります。また、抗うつ剤には副作用があるため、効果を感じられないまま副作用に苦しむこともあるのです。
磁気刺激による治療
磁気刺激治療とは、脳に磁気による刺激をあたえることで脳内神経伝達物質のバランスを整える治療法です。 磁気刺激治療は副作用もなく、短期間で治療が終了します。抗うつ剤での効果が感じられなかった人や、副作用が強く出た人などにおすすめでしょう。
精神療法
新型うつ病は、もともとの性格が原因でささいな出来事で発症するケースも多くあります。精神療法では、主に「行動認知療法」を行います。普段の自分の行動や考え方などを振り返り、偏った考え方を改めさせる療法です。
偏った考え方を改善できれば、ささいなことでストレスを溜めにくくなり、新型うつ病を再発するリスクも低くなるでしょう。
薬物療法と並行して行われるケースが多いようです。
新型うつ病は甘えではない
今回は新型うつ病の特徴や原因、治療についてご紹介しました。新型うつ病は認知度が低く、従来のうつ病の特徴とは全く異なることから発見するまでに時間がかかります。また、新型うつ病の特徴は「甘えである」と捉えられる可能性も非常に高いため、周りの人で疑い深い症状がみられる場合は注意が必要です。
また、長時間勤務をしたり、さまざまな仕事を押し付けられたりすることも新型うつ病を発症する原因になります。
心と体の健康を守りながら仕事に励むために、従業員の健康管理はもちろん、健全な労働環境を整備した健康経営に取り組む企業で働くことをおすすめします。
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