- 働き方改革
- 2022.09.08 (最終更新日:2022.11.21)
VRオフィスとは?導入のメリット・デメリット、おすすめのツールもご紹介
- 目次
コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増えたことで、Web上の仮想空間内で業務するVRオフィスが注目されています。IT企業で市場調査をおこなっているITRによると、VRオフィスの国内市場規模が2020年度は3億2,000万円となり、前年度比べて6,4倍に拡大しました。
また、今後も市場が活性化していくとされており、2025年度の市場規模は95億円にも上ると予測されています。
(ITR「バーチャルオフィスの市場規模推移および予測を発表」より)
今回は、仮想空間を使用したVRオフィスについて詳しく解説していきます。
VRオフィスとは
VRオフィスとは、「Virtual Reality(仮想現実)」とオフィスをかけ合わせたもの。通常であればオフィスは社員が出勤し、オフィス内で仕事します。VRオフィスは実際に出社しなくても、バーチャル空間でオフィス業務を完結できるという、先進技術を使用したオフィスです。
VRオフィスでは会議や雑談を、お互いがその場にいるかのようにリアリティのある職場で再現することができます。リモートワークの一つに含まれますが、通常のリモートワークでは同じ空間で働くことができません。その点、VRオフィスなら、同じ場所で一緒に仕事しているような感覚で仕事をすることができます。
VRオフィスの活用の仕方
無限構築できるオフィス
アクセンチュアでは、マイクロソフト・AltspaceVRと共同で、無限にフロアが構築できるという意味を含んだ「Nth Floor」というサービスを共同開発しました。
社内外へ向けた「バーチャルイベントの課題」や「VR空間における放送の未来」に関するディスカッションなどのイベントも定期的におこなわれています。
VRオフィスで取材
株式会社ゆめみでは、リモートワークをベースに業務が進められています。2021年から導入された「oVice」に加えて「Gather」や「Horizon Workrooms」を実験的に使用するなど、積極的に職場環境をアップデートし続けています。
社内見学
株式会社ミラティブでは、2021年3月よりフルリモートとなり、同年10月からは「Gather」を使用開始しています。その上でカスタマイズ性を損なわないよう、あえて「ルールをきっちりと決めない」というVRオフィスに合わせた就業規則の工夫がなされています。
お産合宿
GMOペパボ株式会社では、2020年4月からバーチャル空間サービス「cluster」を使用開始し、その中で2007年からおこなっている「お産合宿」を実施しています。
開発と品評会をおこなうイベントですが、仮想空間での参加で宿泊がなくなったことで、参加者が約30名から約200名まで急増しました。
VRオフィスを導入するメリット
リアリティのあるコミュニケーションが取れる
同じ仮想現実空間で社員が集まり、仕事をするためリアリティのあるコミュニケーションが取れます。また、使用ツールによっては言語翻訳機能がついているものもあり、話す言語を選ばずに人と関わることが可能です。
VRオフィスに出勤することで、その場の雰囲気を感じられたり、スピード感のある会話共有をすることができます。そのため、テレビ会議の時とは違った快適なコミュニケーションを取れるようになるのです。
生産性の向上に繋がる
VRオフィスを使用することによって「会議の時は広いスペースに」「2人きりで話したい時は個室に」など、実際のオフィスで過ごすように、スペースを移動することができます。
また、場所や言語を選ばず、優秀な人に仕事を任せることができます。業務の生産性向上や新たな視点での企画・開発にも繋がるため、事業の幅も広がるでしょう。
オフィスの費用が浮く
多くの従業員がオフィスで働いたり、オフィスの数が増えたりした時に問題となるのが、高額の賃料がかかることです。
VRオフィスを利用すれば、重要書類を保管できる小規模なオフィスの賃料のみで済ませることができます。また出社の必要がないことから、従業員の交通費をはじめとするコストの削減につながります。
居住地を問わずに従業員を雇用できる
基本的にオフィス出勤となれば、自宅に近い範囲の職場を選んだり、その職場にあるエリアに引っ越したりする場合が多いです。
VRオフィスを使用すれば、居住地を変更したり出張しなくても、希望の仕事をすることができます。
感染症などの状況が悪くなっても業務ができる
コロナという感染症が蔓延したことで、多くの企業が業務を一時停止しなければいけない状況に追い込まれました。
VR内でオフィス業務が完結するように整備できれば、そういった感染症が今後蔓延したとしても、業務に支障を来すことなく継続することが可能です。
VRオフィスを導入するデメリット
インターネット環境を整えておく必要がある
VRオフィスを導入する際は、セキュリティ保護されたインターネット環境で通信をおこなう必要があります。セキュリティが甘い環境でVRオフィスを使用してしまうと、社外秘の情報が漏れ出てしまう恐れがあります。
個々で設備を設置したり操作に慣れる必要がある
膨大な3Dデータを使用するVRオフィスを使用するには、それに耐えられるだけのスペックのパソコンが必要になってきます。また、VR機器などほかにも必要となるものが、従業員それぞれの自宅に揃っていない可能性もあるでしょう。
個々で設備を揃えたり、会社から支給したり、機械の設置・操作について研修をおこなうなど、環境を整える必要があります。
連携がうまく取れない可能性がある
VRオフィスは、リモートワークに使用されているシステムツールと比べると使用しやすくなっていると言われています。しかし、現実世界で人と話す環境と比べると、不便さや連携の取りにくさを感じてしまう可能性があります。
VRオフィスを導入する際の問題点とその解決策
就業規則を大幅に変更する必要がある
実際にオフィスに出勤していた時とは大きく環境が変わり、従業員の自己管理だけではマネージメントが行き届かない可能性があります。業務の進み具合を確認できるシステムや残業時間の管理、風紀など、VRオフィス仕様に柔軟に規則を変えていくことが大切です。
電子契約を済ませられる環境にする必要がある
VRオフィスでの業務は、対面で人と関わることがなく基本的に仮想空間の中でのやり取りで完結させることになるので、契約書においても電子システムを導入するのがおすすめです。
重要書類への電子押印に関しても、誰が担当したものなのか明確に分かり、パスワードを必要とするなど厳重なシステムも必要となってきます。
共有不足・連携不足
多くの人が関わる仕事では、基本的に情報共有やチームの連携によって効率的に業務が進んでいきます。しかし、リモートワークでもよく見られる情報の共有不足や連携不足によって、業務内容のすれ違いが起こる可能性が高くなります。
そのため、VRオフィスだからといって距離を取るのではなく、オフィスに出社していた時と同じように積極的にコミュニケーションを取っていくことが重要です。
VRオフィスにおすすめのツール4選
1.Remotty
東京都にある「株式会社ソニックガーデン」で開発された「Remotty(リモティ)」は、従業員の顔写真を使用することによって、「今誰が何をしているのか」把握しやすい仕様になっています。
従業員のつぶやきも共有でき、話しかけやすさのあるカジュアルな雰囲気を出したい企業におすすめのサービスです。
2.Remo
海外製のサービスである「Remo(リモ)」は、料金は少々張るものの、Web会議ツールとして評価の高いVRオフィスとして知られています。画像・音声・ホワイトボード・チャット・ビデオをなどの共有が可能なので、重要な会議にも問題なく使用して頂けます。
3.Immersed
アメリカにあるImmersed社が出している「Immersed(イマースド)」は、ヘッドセットを用意する必要がなく、普通のノートパソコンでも起動できます。比較的低予算で企業でも導入しやすいといったメリットがあります。
4.Sococo
「一緒に」仕事ができることをコンセプトに開発された「Sococo(ソココ)」は、30種類以上のオフィスレイアウトが用意されており、それぞれの社風に合ったものを選んで使用することができます。また、対象のアバターをクリックするだけで相手と会話を開始することができるので、リアルな空間のようにすぐに会話を始められるメリットがあります。
VRオフィスを取り入れている企業をご紹介
株式会社ソニックガーデン
2008年ペーパーレス開始、2011年リモートワークを導入、2014年VRオフィスを導入といった先進的な働き方を積極的に取り入れている企業です。また「情報を伝えない時も一緒に働いている」という環境づくりを目指している企業でもあります。
株式会社HIKKY
従業員の約9割がVRオフィスで勤務し、業務委託契約の方が多く働いている企業で、介護・子育て・身体的な障害などがあっても働きやすい環境となっています。
また株式会社HIKKYの舟越社長は、「VRオフィスの使用によってみんなで助け合うが、成果主義である。パフォーマンスが高くないと生き残れない。」と、VRオフィスを使用した業務に差が出ていくとの発言もされています。
(ニュースイッチの「副業市場 遠隔マネジメント」より)
eXp Realty LLC
従業員の大半が「eXp Realty(イーエックスピー リアルティ)」というソフトを使用したVRオフィスで勤務し、本社登録・重要書類の保管以外で使用されるオフィスがほとんどありません。
また、オフィス賃料のコスト削減によって、仲介手数料を安く借りられるサービスを展開していることから、現在注目されている企業でもあります。
KDDI株式会社
KDDIで開発されたVRオフィスでは、東京都の虎ノ門に実際にある「DIGITAL GATE」を再現しています。
仮想空間の中でも実在しているオフィスに行けることによって、慣れ親しんだ環境でリラックスしながら、業務をおこなえるようにしたいという狙いがあります。
健康経営に取り組むVRオフィスで、従業員の働きやすい環境を整えよう
今後感染症が蔓延したとしても、前もってVRオフィス上での勤務が成立していれば、滞りなく業務を進めることができます。VRオフィスで従業員のメンタルヘルスケアをおこなう、健康経営優良法人に認定された企業は、今後増えていくことでしょう。
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