- 働き方改革
- 2022.07.30
コロナ渦で注目される「出向」とは?派遣との違いと健康経営との関係を解説
一般企業に勤めている人であれば、出向や派遣という言葉を聞いたことがあるでしょう。では、この2つの違いは何だと思われますか?
この2つには似ているようで大きな違いがあります。そこを理解しておかないと、重大な法律違反を犯す危険があるのです。状況次第では行政処分の対象になります。人材を雇用する立場にある経営者や管理職にとっては、大変なことです。そして、実際に働く人にとっても他人事ではありません。
法律違反や行政処分を防ぐためにも、この記事を読んで違いをきちんと理解しましょう。
出向と派遣の違いは大きく4つ
ここでは出向と派遣の違いについて詳しくご紹介します。
雇用形態
出向は、勤務先の企業に籍を置いたまま別の企業に勤務することをいいます。主な出向先は、勤務先の子会社や関連会社です。出向のメリットには、社員のキャリアアップ・企業間の交流などが挙げられます。これに対して派遣は、人材派遣会社・派遣先・派遣社員の3者が関わる働き方です。派遣社員は人材派遣会社に登録しており、所定の派遣期間が終了したら別の企業で働きます。
雇用契約先
出向の場合、社員と勤務先との雇用契約が続く「在籍出向」と、社員が出向先と新たに雇用契約を結ぶ「転籍出向」の2つがあります。派遣の場合、派遣社員の雇用契約先は人材派遣会社です。派遣社員と派遣先に雇用関係はありません。
雇用期間
出向の場合は、雇用期間について定めた法律がありません。在籍している会社(出向元)の規定によって雇用期間が決まります。
一方派遣の場合、労働者派遣法が根拠法令です。労働者派遣法により、派遣社員は同一部署で3年以上働くことが原則禁止されています。逆に、30日以内の短期派遣も禁止です。
給与形態
出向の場合、社員の給与形態は出向元と出向先の事前協議の結果で決まります。
派遣の場合、派遣社員の給与を支払うのは派遣会社です。
出向と健康経営
在籍出向
在籍出向とは、社員と出向元との雇用契約が続くものです。厳密に言うと、社員は出向元と出向先両者と雇用契約を結びます。
転籍出向
転籍出向では、社員と出向元の雇用契約は解消されます。そして新たに、出向先と雇用契約を結ぶのです。実際のところは、別企業への転職とも言えます。
在籍出向と健康経営の関係性
在籍出向は、出向元の企業に籍を置いた状態で別企業に雇用されるものです。
現在、コロナ渦の影響で業績不振であったり、休業せざるを得ない企業も少なくありません。勤め先が休業になった場合、社員も仕事がなくなり、給与も大幅に減額されます。給与が減額になったことで生活が苦しくなった人も多いでしょう。
休業中の企業が社員に対し人材不足の別企業へ在籍出向を命ずることで、社員は仕事を続けられます。仕事と給与が維持されるので、社員の精神的負担を軽減できるのです。
このように、在籍出向は健康経営にも大きな役割を果たします。
偽装出向は、出向と派遣の違いを知らないために起こるもの
最初にも述べたとおり、出向と派遣は、所属先企業と別の企業で働くという点は同じですが、目的は大きく異なります。
出向社員や派遣社員を受け入れる企業が出向と派遣の違いを理解していないと、知らず知らずのうちに法律違反を犯す危険があります。充分に注意しましょう。
偽装出向とは何か
偽装出向とは、実際は派遣である社員を出向として取り扱うことを言います。また、出向先から出向元へ対価を発生させることも偽装出向の1つです。
偽装出向に関する法的根拠
偽装出向は、職業安定法第4条の第44条、「労働者供給事業」に該当する事業を無許可で行うことに当てはまります。2006年には、日野自動車が偽装出向で約1,100人の労働者を受け入れ、東京労働局から指導を受けたケースがありました。この偽装出向は、実際は派遣であったにも関わらず出向契約を装っていたものです。
なお、労働者派遣法による「労働者派遣」は、偽装出向には該当しません。
偽装出向とみなされるケース
偽装出向とみなされる主なケースは、以下のとおりです。
- 勤務実態は派遣なのに派遣社員を出向として扱う
- 出向元と出向先が無関係で、単に労働力派遣のために出向が行われている
- 出向元から出向先に対価が支払われている
危機回避のため、出向と派遣の違いを理解しよう
出向と派遣は、雇用形態・雇用契約先・雇用期間・給与形態などさまざまな違いがあります。出向には「在籍出向」と「転籍出向」があり、在籍出向は健康経営を推進するために有効な方法です。
出向と派遣を間違えてしまうと、法律違反や行政処分といった危機的事態への直面も考えられます。
社員・経営者ともに、危機回避のため正しい知識を身につけることが大切です。
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