- ヘルスケア
- 2022.07.06
うつ病の初期症状とは?心の叫びをキャッチして早期治療を目指すために
厚生労働省の調査によると日本人の20~39歳における死亡原因第一位は自殺であることがわかりました。自殺を選んでしまう原因の1つにうつ病があり、発症率は年々増加しています。
うつ病は心の風邪と言われており、原因や症状は人によってさまざまです。中には正常時と区別がつきにくかったり、甘えと勘違いされたりと周囲から理解が得られないこともあります。
うつ病を完治するためには周囲の協力が必須です。今回は判別しにくいうつ病の初期症状や治療法などをご紹介します。
うつ病とは
うつ病とは日常生活に支障をきたすほど気分が落ち込んだ状態が続いたり、何事にもやる気や興味を示さなくなる心の病気です。
悲しいことや辛いことなどがあれば誰でも気分が落ち込むことがあります。うつ病との違いは、特に要因がないにもかかわらず落ち込んだり、落ち込む出来事に対しての一般的な反応より激しい気分の落ち込みです。
うつ病患者は年々増加しており、放置するとさらに悪化します。最悪の場合自殺する可能性もあるため、早期発見・治療が大切です。
うつ病の初期症状
うつ病は初期の段階では甘えと勘違いされやすく、見抜くのが非常に困難です。うつ病の初期症状について知ることで、自分や周りの人がうつ病になったときの早期発見に繋がります。
うつ病は誰でもなる可能性があるため、初期症状について知っておきましょう。
ちょっとしたことで泣く
うつ病の初期症状でよく見られる症状がすぐに泣いてしまうことです。正常な人も悲しかったり感動したりする感情によって涙を流します。これは、コントロールしきれないストレスなどの感情を体が察知すると、涙として外に出すために泣くというメカニズムによって起こる生理現象です。
しかし、うつ病を発症すると感情や心のバランスをコントロールする機能が弱まり、脳内のホルモンバランスが崩れてしまいます。その結果感情のコントロールができずに、些細なことや今まで泣かなかったようなできごとで涙が出るのです。
無気力・やる気が起きない
うつ病を発症すると、何に対してもやる気が起きず、無気力な状態が続きます。正常な人もやる気が起きず、何もしたくなくなる時はありますが、好きなことをしたり休養をとれば数日で改善することがほとんどです。
うつ病の場合は、一週間以上休んでも回復することがなく、好きなことに対しても興味が湧きません。今まで好きだったことや趣味にも興味が湧かず、何もできない状態が続くようであればうつ病の可能性が高いでしょう。
不眠・過眠などの睡眠障害
うつ病と睡眠障害は非常に深く関係しており、日本うつ病学会によれば、うつ病患者のうち85%が不眠を経験しているようです。特に不眠はうつ病の発症リスクを上げることで知られており、不眠の人が3年以内にうつ病になる確率は4倍、1年以上不眠の場合は40倍にも高まる結果がでています。
睡眠障害の中にも、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害といった種類があります。この中でも、寝つきが悪く入眠までに30分~1時間以上かかる入眠障害が、うつ病の発症に深く関係するようです。
また、うつ病を治療しても不眠は残りやすい症状です。完治せずに残った場合はうつ病の再発リスクを3~6倍高くする研究結果も出ています。睡眠障害を甘く見ずに、長年悩むようであれば一度専門医を受診しましょう。
身だしなみがだらしない
うつ病になると判断力が低下するため、身だしなみなどにも変化があらわれます。発症すると自分で身だしなみの変化に気づくことは難しいため、周りが気づくことが大切です。
周りの人でこのような症状が出ていればうつ病の可能性があり、要注意です。
- 2日間同じ服を着ている
- 化粧をしない
- お風呂に入らない
- 髪の毛もセットせずボサボサ
そのほかにも部屋の中が散らかっていたりゴミが溜まっている、デスク周りが整頓されていないなど身の回りにも変化があります。職場の人や家族など、突然だらしなくなったと感じる場合はうつ病の初期症状が出ている可能性があるため、見逃さないようにしましょう。
ミスが増える
うつ病になると判断力・集中力が低下するため、日常生活や仕事でもミスが増えます。書類作成などのケアレスミスだけでなく、大事な商談や約束を忘れるなど普段は絶対にしないようなミスを連発するようであればうつ病の可能性が高いでしょう。
これらの症状から、うつ病であることに周りが気づくのは難しく、ミスによって叱責を受ける可能性もあります。うつ病が悪化する原因にもなるため、以前と比べてミスが目立つようになった場合は注意が必要です。
うつ病の原因
うつ病の原因は主に環境要因・身体的要因・遺伝の3つが多くあげられますが、はっきりとしたメカニズムは解明されていません。 死別や離別、引越しや就職などの環境の変化がストレスで発症する人もいれば、いじめやハラスメントなどの人間関係が大きなストレスとなり発症するケースもあります。
また、病気やホルモンバランスの変化などの身体的ストレスが原因で発症する可能性もあるため、体調が優れない時は無理せずに心の状態にも気遣いましょう。また、うつ病は遺伝とも関係しており、親子や兄弟などの血縁者のうち、2親等以内にうつ病患者がいる場合は発症率が2~3倍に上がるようです。
うつ病になりやすい人の特徴とは
うつ病になりやすい人には次のような特徴があります。当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
- まじめである
- 責任感が強い
- 周囲の評価が高い
- 完璧主義
- 人あたりがいい
真面目で責任感が強く、周囲の評価も高い人は周りからの期待に応えようと頑張りすぎる傾向にあります。頑張りすぎた結果キャパオーバーし、やる気が起きず無気力のうつ状態になるケースが多いでしょう。
完璧主義な人は「こうでなければならない」と決めつけたり、自分が理想像に届かなかった時に必要以上に自己批判を繰り返したりします。 自分で自分を追い詰めることでストレスが溜まり、うつ病を発症するようです。
人あたりがいい人は、自分の意見を言わずに我慢をしていることが多いでしょう。常に周りを気遣い、自分が不利益になることも断れないためストレスを溜めこむ人が多数います。
チェック項目に当てはまるものが多かった人は、完璧を求めるのをやめてみたり、自分がやりたくない事だけは断るようにするなど少しずつ変えていくといいでしょう。
うつ病の治療について
うつ病を発症した場合、どのような治療をするのでしょうか。ここではうつ病に効果的な3つの治療法についてご紹介します。
休養をとる
休養をとることはうつ病を治療する上で最も重要です。うつ病の患者は、常に何かしないといけないと思っていたり、休むことを罪に感じたりしています。体は動かなくても心は休まっていない状態なため、何もせず家でリフレッシュする期間が必要です。
家でリフレッシュできない場合は入院するなど、何も考えずにゆっくりする時間を作りましょう。
薬物療法
風邪をひいたら薬を飲むように、うつ病も薬を用いて治療します。「抗うつ薬」と呼ばれており、脳内環境を整える働きがあります。個人差はありますが、だいたい1~2週間ほどで気分の落ち込みなどの症状は改善されますが、完治したわけではありません。
途中で服用を止めると再発のリスクが高まるため、半年を目安に服用しましょう。
精神療法
精神療法には、認知行動療法と対人関係療法の2種類があります。認知行動療法では、主にマイナス思考を改善する治療法です。悲観的な考え方をするくせを改善することで、うつ病になりにくい精神状態をめざします。
対人関係療法は、うつ病の原因となった対人関係の問題を解消する治療法です。対人関係が悪いとうつ病が完治しても再発するリスクが高まるため、周りの理解も得るために行うといいでしょう。
職場環境でのうつ病を防ぐ方法
仕事や上司との関係など、職場の環境が原因でうつ病を発症する可能性もあります。労働環境環境によってはうつ病を発症しやすい可能性があるため確認が必要です。 ここでは、職場によるうつ病の発症を防ぐ方法についてご紹介します。
うつ病になりやすい職場の特徴を把握する
社員がうつ病になりやすい職場には以下のような特徴があります。自分の職場が当てはまっているものがないか確認してみましょう。
- 長時間労働
- ハラスメントが多発している
- 休日出勤が多い
- 対人関係が悪い
- 仕事の責任が重い
これらに当てはまる職場はうつ病になりやすいでしょう。長時間労働や休日出勤など、労働環境が悪く常に忙しい環境では心に余裕がなくなります。とくにまじめな人ほど膨大な量の仕事を全てこなそうとするため、キャパオーバーになりうつ病を発症するケースが多いようです。
また、職場での対人関係も大きな原因の一つです。同僚や上司から無視をされたり、パワハラやセクハラなどのハラスメントが多発している職場はうつ病になりやすい環境でしょう。
職場環境に問題がある場合は、自分一人の力で解決するのは厳しいことがたいはんです。休養を取り、仕事復帰できるようになったら転職するのもおすすめです。
健康経営優良法人から選ぶ
健康経営とは、社員の健康に投資をすることで企業全体の業績をあげる経営戦略です。経済産業省では、毎年健康経営優良法人の認定を行っています。その中で上位500以内に入った企業は、大企業であればホワイト500、中小企業であればブライト500の認定を受けています。
ホワイト・ブライト500であれば非常に優良な健康経営を行っており、残業の削減に取り組み豊富な休日・休暇が揃っている企業が多いでしょう。そのため、転職をする場合は健康経営優良法人から選ぶといいでしょう。
体の負担が少ない仕事を選ぶ
シフト制や力仕事など、体に負担がかかる仕事もうつ病予防のために避けるべきです。シフト制の仕事は夜遅くまで働くことも多く、生活習慣が乱れによって自律神経のバランスが乱れる可能性があります。自律神経のバランスが乱れることでうつ病を発症するケースもあるため、なるべく定時が決まっていて規則正しい生活を送りやすい仕事にしましょう。
力仕事などは、毎日体に負担をかけるため、怪我のリスクも高く慢性疲労に陥りやすいです。怪我をしたことによるストレスからうつ病を発症する可能性もあるため、デスクワークなど負担の少ない職種にしましょう。
心が壊れる前にうつ病の初期症状に気づこう
うつ病は初期段階の場合、見分けるのが非常に難しく、うつ病に気づかずに無理をして悪化するケースもあります。周りからも、「だらしない」、「甘えている」など印象が悪く映ってしまうこともあるでしょう。
しかし、心が弱っていて助けを求めているサインの可能性もあるため、初期症状があらわれていると感じたら無理せず一度休むことが大切です。自殺という最悪の事態を防ぐために、初期症状で気づいて早期治療を目指しましょう。
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