- 健康経営
- 2022.05.31
もしかして、適応障害?原因や症状から考える仕事との向き合い方
メンタルの不調を患う人が増加している近年、働く人が生き生きと仕事に取り組むことのできる環境づくりとして、企業には「健康経営」の実践が求められています。仕事上、誰もがストレスを抱えるものですが、そのなかから今回は適応障害に注目。原因や症状、向き合い方のポイントを解説します。
適応障害とは
適応障害とは、強いストレスを受けることで落ち込みや焦燥感、不眠などのさまざまな症状が現れる精神疾患です。ストレスの原因を明確にし、環境を変えたりすることで症状が治ります。
うつ病と混同されることが多いので注意が必要です。適応障害で現れる症状はうつ病や不安障害などと非常に似ていますが、決定的な違いとして、ストレスの原因が明確であること、さらにそのストレスが何らかの形で取り除かれれば症状は治まっていくことが挙げられます。つまりストレスの原因が仕事にある場合、仕事を休むなどすることで症状が改善されれば適応障害です。状況に応じて、適切な対策を講じましょう。
適応障害の主な症状
適応障害の症状は人によって異なり、心や体、行動が変化します。精神面で大きく見られるのは、抑うつ状態や不安、怒り、焦り、緊張などです。コミュニケーションに変化が見られ、職場関係がスムーズに行かなくなることもあります。精神面の変化は、体調にも現れます。ドキドキしたり、頻繁に汗をかいたり、不眠や頭痛、手の震え、めまい、食欲不振などの症状が特徴です。これらが続くと生活にも支障をきたし、結果として仕事がうまくいかないといった悪循環に陥ってしまいます。
精神面、体調面での不調は行動となって現れます。職場での業務遂行に積極的でなくなったり、注意力がなくなり今までしなかったようなミスを犯すなどの変化が見られます。また症状が重度化すると、職場に来ることに大きな不安を覚え、欠勤が増えることも特徴です。職場へ連絡すること、さらに職場からの連絡を受けることにも嫌悪感や緊張がともなうため、無断欠勤の傾向もあります。
適応障害の原因
適応障害は、特定の原因に対してストレスを感じ、心に大きな負担がかかることで発症します。ストレス要因は人によってさまざまです。仕事においては、ハラスメントや業務の内容、ノルマやプレッシャー、勤務形態や通勤手段に困難を覚えることが多くあります。
適応障害の対処法
ストレスの原因がなくなった場合、症状はそれから6か月以上続かないと定義されています。そのため、治療にあたっては原因であるストレスから離れることが効果的です。ストレス要因が仕事にある場合、長期休暇をとるだけで回復する人も多くいます。また、薬物療法や心理療法といった治療法もあります。医師と相談のうえ、自分にあった治療法を見つけましょう。
心身の不調を感じたら、まずは産業医をはじめ周りの人に相談することが大切です。異動や業務量の調整を申し出る、場合によっては休職や転職など、大きな選択を迫られるかもしれません。しかし、我慢を続けることで再発や慢性化のリスクが高まります。適切な対処法を探って、症状の改善を試みましょう。
適応障害と診断されたら、仕事はどうする?
適応障害の症状は仕事上でもさまざまな支障をきたします。適応障害と診断されたら、まずは今のまま働き続けたいのか、働くことができるのかを考えましょう。ストレスの原因を明らかにし、どのように対処していくかがポイントです。
できるだけ今のまま仕事を続けたい場合
今の仕事を続けたいと考える場合には、職場の理解と協力を得なければなりません。上司やカウンセラーなどの産業保健スタッフに相談して、働き続けるための方法を模索します。信頼できる人と一緒に、自分の体調とキャリアプランを考えてみましょう。ストレスの原因を明らかにすることで、その対処法が明らかになります。残業やノルマなどで多忙な場合には、業務量を減らすことを検討します。通勤や職場などの物理環境や、上司部下、同僚との関係性など、職場環境に困難を感じる場合は、出社時刻、席の位置、職場のミーティング方法を変えてみましょう。業務内容がストレス原因となっている場合もあるので、業務分担を見直したり、異動を願い出ることも方法の1つです。しかし、業務を変えることは新たなストレスとなる可能性もあるので注意しましょう。
また、心身の疲労によってストレス耐性が弱くなります。適応障害と診断を受けた場合には、十分な休息と規則正しい生活を心がけましょう。リラクゼーションや軽い運動、趣味に打ち込むなど、自分に合ったリフレッシュ方法を生活に取り入れることも効果的です。ストレスから距離を置き、心の回復を試みましょう。
適応障害で休職してもいいの?
働き続けることが困難な場合には、休職することも方法の1つです。責任感が強い人は休むことに抵抗を感じるかもしれませんが、しっかり休むことで体調を整え、中長期的により良い仕事をすることにつながります。それは、自分のキャリアプランのためにも大切です。まずは、職場の休職制度について確認してみましょう。休職は、各企業で取得できる期間や条件が異なります。就業規則を確認したり、上司や経理担当者に相談して、企業のルールや休職から復職の流れ、傷病手当金などについて確認しておきましょう。
休職と聞くと、自宅で安静にするというイメージが強いかもしれません。しかし、休職期間の望ましい過ごし方はさまざまです。特に適応障害と診断された人は、ストレス要因から距離を置くだけである程度回復する特徴があります。ゆっくり休んで体調不良などの症状が落ち着いたら、健康的な生活を心がけながら趣味や特技を生かした楽しみを取り入れましょう。また、休職期間の後半には職場復帰をイメージして生活リズムや活動量を調整することが大切です。
退職、転職の際のポイント
現在の仕事を続けることが困難である、休職してもメリットを感じないといった場合には、退職を視野に入れましょう。適応障害を抱えながらも、適職を見つける方法は多くあります。国の制度も活用しながら、自分にあった働き方を見つけましょう。また、退職の際に受けられる経済支援が多くあります。雇用保険をはじめ、傷病手当金や自立支援医療制度、障害年金や生活保護など、実際にどの程度の支援を受けられるかは個々の状況によって異なります。まずは自治体の窓口などに相談してみましょう。民間が運営する転職エージェントには、さまざまな求人情報があります。適応障害を明かさず転職活動をしたり、支援スタッフによるカウンセリングで自分にあった転職先を見つけることが可能です。また、在職中・休職中・退職後のいつでも利用できるので、自分に合いそうなサービスを並行的に利用してみましょう。
公共の職業紹介機関であるハローワークには、障害専門の窓口があります。障がい者職業センターや障がい者就労・生活支援センターなどとも連携しているため、自分で転職活動を行うより多くの支援が受けられます。雇用保険給付などの相談もできるので、まずはハローワークに足を運んでみましょう。
障害のある人を対象に人材紹介をする専門の事業所もあります。障がい者雇用の機運の高まりから、このようなエージェントが増えており、得意分野や個性を生かした就職が可能です。一般的な転職エージェントと同様に、登録や基本的なサービスは無料となっているので、気軽に登録してみましょう。
適応障害の人に向いている仕事とは
まずは、自分にとって何がストレスとなるのか、しっかりとふりかえります。長期的なキャリアプランを考えると、給料や企業規模より、安心して楽しく働くことのできる職場を見つけることが大切です。また、適応障害になりやすい人の特徴から、向いているといわれる仕事には傾向があります。真面目で完璧主義といった特性を持つ人は、コツコツと自分のペースで進めることができる仕事が向いています。流動的な仕事より、ある程度、仕事内容が定型化された職業がおすすめです。例えば、経理や工場のライン作業員、清掃員や警備員が挙げられます。
人間関係にストレスを感じやすい場合には、個人の範囲でできる業務が良いでしょう。具体的には、システムエンジニアやWEBライター、WEBデザイナー、ゲームクリエーターなどが挙げられます。経験を活かして独立開業につながれば、職場の人間関係といったストレスと無縁に働くことが可能です。
通勤や職場の物理環境にストレスを感じる人は、在宅ワークも選択肢の1つです。被雇用者として働く場合も、そうでない場合も、昨今のコロナ禍に在宅ワークが増えつつあります。交通費やオフィスの維持費の削減という企業側のメリットもあることから、現在は、家にいながら仕事を得るチャンスといえるでしょう。
適応障害とうまく付き合いながら仕事に励もう
ストレスが原因で生じる適応障害。人間関係がスムーズにいかなくなったり、仕事へ行くのが難しいほどの不調を感じたら要注意です。ストレスの原因を探って、働く環境を変えたり、仕事の仕方を見直すなど自分にあった解決方法を見つけましょう。また、休職することも選択のひとつです。
働き方に正解はありません。自分と向き合い、自分の気持ちを大切にしながら、より良いキャリアライフを築きましょう。
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