- ヘルスケア
- 2022.05.26 (最終更新日:2022.05.27)
睡眠負債に寝溜めは効果なし?!正しい解消法をご紹介
睡眠負債を作らないように心がける
現在の日本では慢性的な睡眠不足が問題視されています。フランスの企業が行った睡眠時間の調査結果では、日本の平均睡眠時間は6時間22分と最短で、世界的にも睡眠時間が短いことがわかりました。
今回は慢性的な睡眠不足が積み重なることによる睡眠負債について、症状や解消法をご説明します。
睡眠負債とは?
睡眠負債とは、慢性的な睡眠不足が借金のように膨れ上がり、負債が蓄積されることで健康被害が発生することを指します。睡眠負債が膨れ上がるとどのような影響があるのでしょうか。
ここでは睡眠負債の原因や具体的な症状についてご紹介します。
睡眠負債の原因や症状
睡眠負債は睡眠不足の習慣化が原因で起こります。世界的に見ても日本の睡眠時間は群を抜いて少なく、睡眠不足大国とも言えるでしょう。日本は24時間営業のコンビニエンスストアなどが発達している影響もあり、多くの人が夜勤で深夜まで働いています。また、残業が多く充分な睡眠時間が確保できていない人が多いことも原因の一つです。
人間は睡眠によって心身ともに十分な休養をとっています。それだけでなく疲労回復・免疫機能の増加・記憶の固定など、日中活動するための準備を睡眠中に行うため、睡眠負債は日中の活動にも悪影響をもたらすのです。
主な症状として次のことが挙げられます。
- 記憶力の低下
- 集中力の低下
- 常に疲労感や倦怠感を感じる
- 免疫力の低下
- 生活習慣病の悪化
- 肥満
- 感情のコントロールができない
- 抑うつ
上記の症状を見ると肉体的にはもちろん精神的にも支障をきたすことがわかります。睡眠負債の状態が続くと、自律神経の乱れも引き起こすため、さらに寝付きにくい状態になります。
このような状態が続くと仕事でのミスが増えたり、パフォーマンスが低下したりと業務上でも何らかの不利益が生じる可能性があるため注意が必要です。
睡眠負債のセルフチェック
睡眠負債になると「慣れ」が生じてしまい、睡眠不足であるという自覚のない方がほとんどです。ご自身に睡眠負債があるのか、以下項目をチェックしてみましょう。
- 休日は昼まで寝てしまう
- 日中眠気を感じている
- 電車などで居眠りしてしまう
- やる気が出ない
- 仕事などでミスが目立つ
- 風邪をひきやすい
- 夜中や朝方に目が覚める
- 5分以内に寝る
以上の項目に当てはまる数が多いほど睡眠負債が大きくなっています。とくに3つ以上当てはまった方は、生活習慣を見直し睡眠時間を確保するなどの対策が必要です。
睡眠負債に寝溜めは効くのか
休日は昼過ぎまで寝て、平日に大きくなった睡眠負債を解決しようとする人もいるでしょう。しかし、一時的に睡眠時間を増やすだけでは睡眠負債の返済はできないものです。休日に長時間睡眠をとることで一時的によく眠った感覚になるかもしれません。しかし、疲労感や免疫力の低下など、長年蓄積された睡眠負債による症状の根本的な解決は難しいでしょう。
長い時間眠りすぎると自律神経が乱れてしまいます。だるさや頭痛を感じやすくなるため、おすすめできません。また、睡眠は預金のように貯めることは不可能です。休日に寝溜めをしたからといって、次の日は寝なくて平気ということはなく、毎日適切な時間の睡眠をとることが求められます。
理想的な睡眠とは
ただ寝るだけではなく、質の良い睡眠を適切な時間でとる必要があります。ここでは睡眠負債を防ぐための理想的な睡眠について見ていきましょう。
適切な睡眠時間をとる
睡眠はただ長い時間とればいいというものではありません。短すぎるのも問題ですが、長すぎても心身に悪影響を及ぼします。
適切な睡眠時間は年齢などで個人差があり、歳をとるほど短くなっていきます。 そのため一概には言えませんが、アメリカ国立睡眠財団(NSF)は26〜64歳で心身ともに健康に過ごすために必要な睡眠時間は、7〜9時間であると発表しました。さらにサウスフロリダ大学の研究では「睡眠時間が一日でも不足すると精神・肉体ともにダメージが生じ、6時間以上の睡眠をとらないと回復しない」という結果が出ています。
研究中の8日間のうち、一日でも睡眠時間が6時間を下回った被験者は、怒り・孤独感・欲求不満・いら立ちなどの感情が増加したり、胃腸に問題が生じたりと心身ともに支障をきたしました。またベースラインまで回復させるためには、6時間以上の睡眠をとらせるしか方法がないことも明らかになっています。
これらの結果から一日に最低でも6時間以上の睡眠をとらなければならないことがわかります。ただし、6時間未満でも日中眠気を感じないショートスリーパーの人もいるため、今の睡眠時間で眠気を感じるかどうかで判断しましょう。短い睡眠で眠気を感じる方は、どれだけ忙しくても最低6時間は睡眠時間を確保してください。
中途覚醒をしない連続した睡眠
夜中や早朝など、途中で目が覚めてそのまま眠れない状態のことを中途覚醒といいます。睡眠時間を7〜9時間確保しても、中途覚醒によって眠りが妨げられていては質の良い眠りとは言えません。
中途覚醒を引き起こす原因について、次の理由が挙げられます。
- 睡眠時無呼吸症候群
- ストレス
- うつ病
- 夜間頻尿
- 加齢
中途覚醒にはさまざまな原因がありますが、中でもストレスが最も多い原因とされています。ストレスが溜まるとうつ病などほかの病気を併発する恐れもあるため、ストレス源から離れるなどの対処が必要です。
とくに職場や人間関係のストレスを抱える人が多くいます。仕事量の多さやコミュニケーションをとる上で、知らないうちに気を遣いすぎることも原因の一つです。毎日残業しているにも関わらず、常に締切に追われていたり、上司からのセクハラやパワハラに悩んでいたりする人は転職を考えてもいいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まることで低酸素状態になる病気です。主に肥満やいびきをかく人がなりやすく、息苦しさから中途覚醒の原因となり睡眠負債を増大させます。放置すると脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性があり、最悪の場合突然死に繋がるため注意が必要です。家族からいびきをかいていると指摘を受けたことがあって日中眠気を感じる人は、1度病院に行くことをおすすめします。
夜間頻尿も中途覚醒を引き起こします。多くの原因は加齢によって膀胱の機能が弱り、睡眠中に尿を貯めておくことができなくなるためです。そのため高齢になるほど発症率は高くなります。対策としては、寝る前に水を飲みすぎないようにしたり、塩分の高い食事を控えたりするといいでしょう。
睡眠負債の解消法
睡眠負債を根本から解消するには寝溜めでは不可能なことがわかりました。ここでは効果的な解消法について見ていきましょう。
自分にあった睡眠時間を知る
まずは必要な睡眠時間を把握し、その上で睡眠負債がどのくらい溜まっているのかを調べましょう。一般的には7〜9時間の睡眠が必要と言われています。しかし、中には5時間程度で足りる人もいれば10時間以上必要な人もいるため個人差があります。
自分に必要な睡眠時間を調べるには、最低でも14時間以上睡眠に費やせる環境が必要です。長期休暇などを利用することををおすすめします。
初めの2〜3日は今までの睡眠負債を返済するために、10時間以上の長い睡眠になるでしょう。その後少しずつ睡眠時間は減っていき、だいたい7〜8時間ほどに短縮します。その睡眠時間での日中の眠気や寝付くまでの時間で判断します。
日中の眠気が続くようであればさらに睡眠時間を増やし、寝付くのに時間がかかるようであれば減らして調整しましょう。
目安は食後を除いた日中は眠気を感じず、寝付くのに10〜15分ほどかかるぐらいが適切な睡眠時間です。5分もかからず寝てしまう場合は不足しており、20分以上かかる場合は寝すぎです。
適切な睡眠時間がわかったら、今までの睡眠時間と比べて1日あたりどのくらい睡眠負債が溜まっているのか把握できます。日々の睡眠時間を、なるべく適切な時間に近づけるために生活習慣を見直しましょう。
仕事量を見直して残業を減らすことや、平日の飲み会の帰る時間を早めることも効果的です。翌日の仕事のパフォーマンスも上がるため、さらに効率よく仕事ができるでしょう。どうしても会社の都合で難しい場合は、残業の少ない会社に転職することもおすすめです。
健康経営に取り組んでいる会社は、社員の睡眠時間確保や食生活改善などを積極的に行っています。健康経営優良法人に認定された会社は社員の健康を非常に大切にしているため、そのような会社を選ぶといいでしょう。
寝つきやすいように寝室に工夫をする
騒音や室温など睡眠をとるのに適切な環境が揃っていなければ、良質な睡眠をとることは難しいでしょう。静かで暗い状態の部屋で寝るなど、寝つきやすい工夫が必要です。入眠時の室温は15℃〜20℃の少し肌寒いぐらいが適温と言われています。
人間は深部体温が下がることによって体を休める状態に入ります。体温が高いと体が興奮状態となり、目が冴えてしまい入眠できません。しかし、寝てる間に体が冷えすぎると風邪をひいてしまいます。室温は涼しくして布団などを被った状態がおすすめです。
また、眠りにつきやすい効能のあるアロマをたくのもいいでしょう。ラベンダーやオレンジスイートなどは安眠効果がある事で知られています。寝室をリラックスできる環境に整えることで、体も寝る場所であることを認識します。自然と入眠しやすくなるため好みに合わせて整えるのもいいでしょう。
まとめ
今回は睡眠負債の症状や解消法などについてご紹介しました。
睡眠は三大欲求の一つであり、人間にとって必要不可欠です。睡眠負債が溜まると心身ともに悪影響を及ぼします。日々の生活習慣を見直すためにも、時間があれば自身にあった睡眠時間を計測してみるといいでしょう。
改善できるところは改善を行い、仕事などどうしても難しい場合は自身の健康を優先できる所に移動することがベストです。体調を崩してまで会社に尽くす必要はありません。社員の健康も大切にしてくれる会社に尽くし、お互いを高めていけるのが理想的です。
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