• 健康経営
  • 2022.03.18 (最終更新日:2022.03.27)

勤務間インターバル制度とは?何時間必要か、助成金

目次

勤務間インターバル制度で働きやすい会社を実現しよう

勤務間インターバル制度は、前日の勤務終了から翌日の勤務開始までの時間に一定のインターバルを設けることで、社員の健康状態を維持することを目的にした制度です。

この制度は2019年4月1日に努力義務が課せられ、注目されています。今回は勤務間インターバル制度とは何か、実施のメリットや課題、実施の手順まで解説します。勤務間インターバル制度を導入し、健康経営を実現する際の参考にしてください。

勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度とは、「勤務終了後、一定時間以上の休息時間を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する」ことを目的とした制度です。

勤務開始時間が8時で、11時間のインターバルが設けられている場合で考えてみましょう。前日の業務が夜22時に終了した場合、11時間後の時間は朝9時です。そのため本来の勤務時間は8時ですが、9時からの出勤が認められます。

EUでは、ヨーロッパ共通の労働基準法といえる「EU指令」の中で、勤務間インターバル制度が導入されました。24時間につき、最低でも連続11時間の休息時間を設けることが義務付けられています。

日本でも、2019年4月1日に働き方改革関連法案によって勤務間インターバルが施行されました。最低限9時間、健康管理指標として、11時間以上のインターバルを設けることが、会社側の努力義務として規定されています。

参考:厚生労働省「勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度は努力義務であるため、実施していなくても罰則の対象にはなりません。しかし、働き方改革関連法によって、長時間残業の禁止が義務付けられています。そのため、その対策として、勤務間インターバル制度を導入するという選択も十分に考えられるでしょう。

勤務間インターバル制度導入のメリット

勤務間インターバル制度の導入には、以下のメリットがあります。
  • 社員の健康状態の改善
  • 生産性の向上
  • イノベーションの促進
  • 働き方改革への対応
次でそれぞれのメリットについて解説します。

社員の健康状態の改善

勤務間インターバル制度を導入することで、従業員は、勤務終了後から翌日の勤務開始時間までの休息が取れることがメリットです。その結果、従業員の健康状態の改善につながります。特に長時間労働が多いような会社であれば、より高い効果が期待できるでしょう。

従業員の健康状態の改善は、従業員満足度の向上や離職率の低下の施策としても効果的です。また、優秀な人材の確保にもつながります。

生産性の向上

勤務間インターバル制度の導入は、生産性向上に貢献します。制度を導入していない場合、勤務終了から翌日の休息時間が取れず、睡眠時間が減るなど健康状態に悪影響を与えてしまいます。

従業員は適切な休息を取れることで、モチベーションが下がりにくくなり、パフォーマンスが高まるでしょう。

イノベーションの促進

勤務間インターバル制度は、社員が適切に休息を取れることで、イノベーションの促進にもつながります。休息時間が確保され、さまざまな物事を熟考できる時間が確保できるためです。

イノベーションが生まれるよう組織の制度まで整えれば、これまでにないイノベーションが生まれる可能性が高まるでしょう。

勤務間インターバル制度導入のための課題

勤務間インターバル制度の導入は、生産性の向上などの効果が期待できます。しかし、制度がうまく機能せず、意味がないという場合もあるでしょう。ここでは勤務間インターバル制度を導入するうえでの課題について解説します。

体制を整える手間がかかる

勤務間インターバル制度の導入には、体制を整えるための手間が必要です。具体的には、労働時間の管理体制などが挙げられます。この制度への対応のためにITツールの導入が必要になる場合もあるでしょう。

ただし、勤務間インターバル制度は、働き方改革関連法への対応に求められる体制と、重複しているものもあります。そのため、働き方改革関連法への対策と同時に勤務間インターバル制度を導入するのも選択肢の一つです。

ルールを守らない従業員がいる可能性

勤務間インターバル制度を導入しても、ルールを守らない従業員がいる可能性を考える必要があります。大きな原因としては、残業しなければ業務が終わらない場合や、残業時の賃金を必要とする従業員がいる場合など、業務の実情と制度が噛み合っていないことが原因として考えられます。

現状の業務状況を把握し、適切に運用できる体制作りが必要です。

現状、残業しなければ終わらないような業務量である場合、勤務間インターバル制度を導入しても十分な効果が期待できません。

このような場合には、業務体制の見直しや業務効率の改善から取り組む必要があります。

勤務間インターバル制度実施の手順

勤務間インターバル制度の実施は、ただ制度を導入するだけではうまくいきません。ルール作りや就業規則の改訂など、必要な手順を押さえておくことが大切です。具体的にどのような手順で進めればよいか、解説します。

実施ルールの策定

まずは、勤務間インターバル制度を実施するための、基本的なルールを策定しましょう。ルールの策定のためには、現場状況を把握し、実現可能な制度設計が必要です。具体的に決めるべきものは以下のものなどが挙げられます。
  • 開始時期
  • インターバル時間
  • 対象となる社員
  • 勤務時間とインターバル時間のカウント方法
これらのルールを決める上では、現状の労働環境に合わせた内容にする必要があります。現状に合わないルールや制度を作っても実施時に守られなくなるためです。

経営層だけではなく、現場にいる従業員の声をヒアリングし、実現できる状態を整えましょう。

就業規則の見直し・テスト運用・従業員への周知

勤務間インターバル制度のルールを作る際、労働時間については、就業規則との矛盾が生じがちです。そのため、以前の就業規則と矛盾が生じる可能性があります。

勤務時間とインターバルが重複する場合には、「重複した部分を労働時間として計算する」か、「就業開始時間を繰り下げる」か、どちらかの対応が一般的です。そのような場合には、就業規則を見直したうえで改正しましょう。

実施体制が整ったら、まずは小規模な範囲でテスト運用を行い、必要に応じて見直しを行います。

制度を実施する際は、従業員に対して、制度の目的や具体的な内容についての周知が必要です。しっかりと周知し、従業員に納得してもらえなければ、勤務間インターバル制度は形骸化する恐れがあります。

実施・検討・見直し

勤務間インターバル制度を導入したら、定期的に現状を確認し、必要に応じて見直しましょう。勤務間インターバル制度が導入された後も、制度がうまく運用されていない、導入によって問題が生じるという可能性があります。

現状の課題を把握し、必要に応じて改善することが、勤務間インターバル制度を成功させるために大切です。

勤務間インターバル制度成功のポイント

勤務間インターバル制度を成功させるためには、会社の課題の分析や従業員への説明などの準備が重要です。成功のために押さえたいポイントを解説します。

導入前に会社の課題を把握する

勤務間インターバル制度の導入前に、会社の課題を把握しておきましょう。勤務間インターバル制度の導入は、現場に与える影響が大きく、業務に支障が出る場合もあるためです。

「残業が多く、勤務間インターバル制度が導入されると、業務が処理しきれない」というような場合、制度が形骸化する可能性があります。そのような場合は、まず会社の課題解決から図りましょう。

業務効率改善を図る

勤務間インターバル制度を導入すると、実労働時間が短くなります。そのため、業務効率が悪い状態のままであれば、勤務間インターバル制度は機能しません。

「無駄な業務はないか」「ITなどで自動化できないか」「外部にアウトソーシングできないか」など、業務を効率化させる方法を検討・導入することを検討してみましょう。これらの対策を整えることで、勤務間インターバル制度が実施しやすくなります。

従業員へ説明する

勤務間インターバル制度を実施する際は、従業員に説明し、理解・納得してもらうことが重要です。

従業員が勤務間インターバル制度の概要や実施体制、ルールについて把握していなければ、導入されても実施されないままになってしまいます。

従業員からの不満がある場合には、不満の内容を把握しておくことで、制度改善のヒントになる場合もあるでしょう。
産業医と連携する
勤務間インターバル制度は産業医と連携することで、より適切な体制で実施しやすくなります。産業医とは、会社で従業員が快適な環境で仕事ができるよう、専門的な立場から助言・指導する医師です。

産業医と連携することで、従業員のメンタルヘルス対策への質が高まり、長時間労働の課題把握や、改善にも貢献します。

勤務間インターバル制度で利用できる助成金

中小企業の場合、条件に該当すれば、勤務間インターバル制度導入に助成金が利用できます。

「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」は、2021年度についてはすでに募集を終了しています。しかし、今後申請できる可能性もあるため、導入を検討しているのであれば、一度確認してみましょう。

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

健康経営実現のため、勤務間インターバル制度を導入しよう

勤務間インターバル制度は長時間労働を減らし、健康経営を実現するうえでも効果が期待できる制度です。現状この制度は努力義務であり、実施しなければいけないわけではありません。しかし、実施することで、従業員だけではなく、経営者にとってもメリットがある制度です。

長時間労働を見直し、健康経営を実現させたい方はぜひ勤務間インターバル制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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