- 取組事例
- 2022.02.03 (最終更新日:2022.03.27)
イニシャルコストとは?意味や類義語の解説と経営における重要性をご紹介
健全な会社経営のために
事業の継続、健全な会社経営のためには、売上を増やすことももちろんですが、コストカットにも目を向けなければなりません。
コストの中でも、みなさんは「イニシャルコスト」という言葉をご存じでしょうか。
イニシャルコストを抑えることで黒字への転換が早くなりますが、場合によっては業務の効率化を妨げ、逆に不要なコストがかかってしまうこともあります。
今回はイニシャルコストの意味やその重要性、併せて覚えるべき類義語を解説していきます。
利益の出る健全な経営を目指すために、現在会社を経営している人も、これから事業を始めようとしている人も、しっかり学んでいきましょう。
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イニシャルコストとは?
まずはイニシャルコストについての概要を解説します。
意味・言い換え
イニシャルコストは英語で表記すると「Initial cost」と書き、言葉の意味そのまま「初めの費用」ということで、言い換えれば「初期費用」や「初期投資」です。
略称として「IC」を使うこともありますが、会社によりけりなため、例えば最初の打ち合わせや書面では使わないほうがいいでしょう。
「初回の一回だけ支払うコスト」であり、事業を始める際に必要な費用を指すのはもちろん、事業の開始後であっても、例えば新しく機器を導入するにあたってかかる費用はイニシャルコストになります。
またイニシャルコストはビジネス用語ではありますが、例えば日常の場面において「住宅の購入」に関して言えば、最初にかかる購入費や建築費はイニシャルコストと言われるため、決してビジネスシーンだけで使われる言葉ではありません。
イニシャルコストの実例
より具体的にイメージするため、いくつか実例を挙げましょう。
例えば会社のオフィスにおけるイニシャルコストは以下の通りです。
登記費用
会社を立てようと思ったら「登記」を登録しなければならないのですが、登記そのものに費用がかかります。
株式会社なのか合同会社なのかといった、会社の形態や種類によって費用は異なり、株式会社の場合は費用が高くなります。
オフィス(物件)の契約費用
オフィスを構える物件の賃貸契約をする際にかかる敷金や礼金、仲介手数料などはイニシャルコストにあたります。
ちなみに月々の家賃に関してはこのあと紹介する「ランニングコスト」です。
設備費用
仕事をするために必要な設備費用、つまりデスクや椅子などの家具類や、パソコン・電話・コピー機・ファックス機などの事務機器など、数多くの初期費用がかかります。
ネット回線の工事費や、社用車の購入費などもこれに含まれます。
広告宣伝費用
新事業が世間に認知されなければ売上は取れないため、効果的な広告や宣伝費用も大切です。
ホームページの開設や会社のロゴ作成、名刺の作成などがこれにあたります。
オフィス以外で言うと、例えば飲食店であれば物件の契約費などは同様で、厨房設備や食器、調理器具などがイニシャルコストです。
最近人気のYoutuberであればカメラやマイク、三脚などの機材と、動画編集のためのパソコンやソフト類がイニシャルコストと言えます。
ランニングコストとの違い
次にイニシャルコストと対をなす、「ランニングコスト」について解説します。
ランニングコストとは?
ランニングコストは英語で書くと「running cost」で、「RC」と略されることもあります。
「running」とは「経営・運営・管理」という意味に加え、「運用する・維持する」という意味もあり、「何かを維持・続けていくための費用」、あるいは何かを維持・続けていくために「払い続けていかなければならない費用」のことを指し、「維持費」「管理費」「運用費」などと言い換えが可能です。
イニシャルコストとどう違う?
イニシャルコストとは「費用が発生するタイミング」で大きな違いがあります。
イニシャルコストが事業運用開始までの準備にあたる初期費用であり、初回の一回しか発生しないのに対して、ランニングコストは事業の開始後や物品の導入後に継続して発生し続ける運転費用です。
事業が継続する限りは必ず定期的に発生し続けるため、売上や利益の予測に大きく関わってくる上、ここを見誤ると月々の支払いが滞る恐れもあります。
ランニングコストの実例
先ほどのイニシャルコストと同様、まずはオフィスにおける例を挙げてみます。
賃貸費用
会社経営におけるランニングコストで大きな割合を占めるのが、オフィスの月々の家賃です。
当然オフィスの立地条件や広さなどで賃貸費用は大きく変わってくるため、経営を圧迫しすぎないよう、身の丈に合った物件を選びましょう。
光熱費
電気・ガス・水道といった光熱費も、ランニングコストとしてイメージしやすいでしょう。
会社によって料金が異なるため、なるべく負担の少ないところを選びたいところです。
消耗品の購入費用
経営に必要な備品には消耗品がたくさんあります。
プリンターやファックス機で使うコピー用紙やインク代にトナー代、各種文房具といった事務用品から社用車のガソリン代などの他、定期購読している新聞料金や、ウォーターサーバーのボトル代など、導入しているサービス如何によってランニングコストは多岐にわたります。
人件費
人件費もランニングコストで多くの割合を占め、経営を圧迫する要因の一つです。
単純な月々の給料に加え、家賃補助や交通費補助といった各種手当も含み、特に交通費手当は従業員の居住地が遠いほど負担が大きくなるため、賃料に惹かれて郊外にオフィスを構えると、想定外のランニングコストがかかる場合があります。
税金
会社を経営していくだけで、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税・源泉徴収額といったさまざまな税金がかかります。
イニシャルコストとランニングコストの関係性
イニシャルコストとランニングコスト、二つのコストを紹介しましたが、この両者の関係について少し詳しく解説します。
どちらが重要?
事業の運営にあたって、継続的で安定した売上の確保が非常に重要ですが、売上は外部的要因に大きく左右されるため、常に計画通り得られるものではありません。
競合他社の動向や市場の変化によって世間の需要はいつでも変わってしまう上、事業によっては気象条件にも左右されます。
そのため売上だけでなくコスト面についてもしっかり検討を重ねる必要があるのですが、イニシャルコストとランニングコストではどちらがより重要と言えるのでしょうか。
両者のバランスが大事なのは言わずもがなですが、強いて言えばイニシャルコストでしょう。
初期投資には当然それなりの費用がかかるため、事業開始後に利益として回収できるようになるまで時間がかかります。
そのためイニシャルコストを低くできればできるほど、利益は早く出て金銭的リスクも低く済み、会社が軌道に乗りやすいでしょう。
売上を取れなくてもランニングコストはかかり続けるため、売上予測を見誤ってイニシャルコストを高額にしすぎないよう注意が必要です。
とはいえ両者は密接に結びついており、イニシャルコストを低くした結果ランニングコストが高額になってしまうことがあります。
例えば費用を抑えようと旧型の設備を導入したところ、電気代が余計にかさんだり、動作が遅く作業効率の低下につながったりするケースです。
反対にイニシャルコストが高額だったが、その分期待以上のパフォーマンスにつながった結果、ランニングコストが想定より低く済むというケースもあります。
相関関係にあるためどちらを重視するかは事業によっても異なり難しい判断になりますが、中長期的な視点を忘れずに二つのコストを検討していきましょう。
損益分岐点との関係
ここで、今まで紹介した二つのコストを考える上で大切な「損益分岐点」という言葉を解説します。
損益分岐点とは?
長期的な経営の安定、事業の発展を目指すためにはコストのバランスが重要と述べましたが、その指標となるのが損益分岐点です。
会社の営業利益は「売上高-(固定費+変動費)」であり、この数字が「0」になるところを損益分岐点と言います。
「損失はないが利益もない」状態のため、少なくともこの損益分岐点に達するだけの売上さえ取れれば赤字にはなりません。
つまり損益分岐点が低ければ低いほど利益が出やすい良い状態です。
先ほどの数式でイニシャルコストが固定費、ランニングコストが変動費にあたりますが、固定費の割合は全費用の大部分を占めるため、ここをいかに抑えるかで利益の出やすさが変わってきます。
早期の黒字化経営のためには、イニシャルコストが非常に重要な要素です。
会社経営はトータルコストで考える
イニシャルコストとランニングコスト、両者のバランスが悪ければ、それだけ経営を軌道に乗せるまでの時間が長くかかってしまいます。
経営していく中で何かを決定するときには、最初にかかる費用(イニシャルコスト)と継続するための費用(ランニングコスト)のどちらも計算し、全体像をしっかり把握しなければならず、いわゆるこの「トータルコスト(イニシャルコスト+ランニングコスト)」の考え方が非常に重要です。
経営者は先ほど解説した損益分岐点をもとに、売上目標やそれに伴う人件費を計算していきます。
例えば月の売上が100万で、ランニングコストに30万かかっていた場合、単純計算でその月の利益は70万です。
しかしそもそも開業時のイニシャルコストが1000万かかっていた場合は、毎月70万の利益が出せるとしても、本当に利益が出始めるのは20ヶ月ほど先になります。
また長期的な経営を考えるとランニングコストは重視すべきですが、先ほど述べたようにイニシャルコストとの相関関係がネックになります。
イニシャルコストを下げすぎたことでランニングコストが高くなるということもありますし、ランニングコストを低くするために人件費や材料費を下げたことで、商品やサービスの質も落ち、売上自体が下がってしまうこともよくあるケースです。
イニシャルコストを極力抑えながら、毎月の維持費となるランニングコストも考慮して、「トータルコスト」としてバランスのとれたコスト削減に努めましょう。
まとめ
イニシャルコストについて取り上げましたが、最も大事なのはバランスです。
初期費用としてのイニシャルコストが低いに越したことはありませんが、そこから定期的にかかる維持費、運用費としてのランニングコストが結果的に経営を圧迫してしまうこともあります。
両者は相関関係にあり、一方に偏りすぎては一向に黒字経営にはなりません。
イニシャルコストとランニングコスト、どのような費用がそれにあたるかをそれぞれ把握し、目の前のコストだけでなく中長期的かつトータルコストとしての視点で、事業の発展を目指しましょう。
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