• 健康経営アドバイザー
  • 2022.01.27 (最終更新日:2022.03.27)

ワークライフコンフリクトとは?健康経営との関連性を解説

目次

仕事と生活の調和が求められる時代

ワークライフコンフリクト 「ワークライフコンフリクト」という言葉をご存じですか?
ワークライフコンフリクトとは、子育てや介護・長時間労働等により、仕事と家庭のバランスが取れず、アンバランスな状態となっていることを指します。
会社や上司の期待に応えられるように仕事をしようとすると、仕事以外の活動に必要な時間を割けず、ワークライフコンフリクトが生じることになります。
ワークライフコンフリクトにより心身の健康が損なわれ、生産性の低下や離職などの要因になりかねません。
従業員のワークライフコンフリクトを把握することが、これからの企業において重要とされるでしょう。
そこで今回は「ワークライフコンフリクト」について解説します。

ワークライフコンフリクトとは?

仕事と家庭の両立 ワークライフコンフリクトとは、ワークライフバランスの対義語として使われる言葉です。
コンフリクトは対立や衝突などを意味しており、仕事と生活の調和ができず葛藤が生じている状態です。
ワークライフコンフリクトは、多すぎる役割を負うこと・家庭に仕事を持ち込むこと・仕事に家庭を持ち込むことの3側面からなるものと示されています。
労働者が仕事と生活の調和を図るにあたり、希望を満たせない状況といえるでしょう。
 
カナダで行われたワークライフコンフリクトに関する調査では、コンフリクトの負の効果を論証するためワークライフバランスの欠落がもたらすコストの試算が行われました。
調査により、ワークライフバランス施策に企業経営上の効果・利益は認められていることが判断できるでしょう。
コスト試算では、カナダの企業は欠勤により年30億ドルのコストがかかっており、医療にかかる費用が年間4億2,500万ドルに上るとしていることが調査によりわかりました。
モデル企業によるシミュレーションにおいて、施策を実施によって得られるコスト削減効果は施策導入費用を上回り、利益率は25%程度になるとの試算が出されています。
この調査を踏まえて、企業経営者に対するアンケート調査結果として、ワークライフバランス施策は費用対効果に優れていると考える企業は3分の2に上ることが示されています。

 企業経営においてワークライフバランスの実現をするために従業員のワークライフコンフリクトを理解し施策を行うことが重要とされるでしょう。
参考資料:第5章: 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)

ワークライフコンフリクトの背景

育児と仕事 では、なぜ今仕事と生活の調和が求められるのでしょう。
長時間労働だけでなく、労働者の生活関心や労働者が希望するライフスタイルが変化してきたことなどの背景としてあります。
仕事にすべて注ぎ込むことが美徳とされていた時代から金銭的な価値よりも精神的なゆとりを重視する時代の変化があると考えられるでしょう。
具体的には次のような背景がワークライフコンフリクトを発生させている原因と考えられます。

 1.働き方の二極化

企業間競争の激化や経済低迷や産業構造の変化により正社員以外の労働者が大幅に増加し正社員の労働時間の高止まりが問題視されています。
現代の企業における働き方は過密な労働が求められる正規労働者の働き方か経済的基盤の確保が難しい非正規労働者の働き方という二者択一となっているのが課題です。

2.共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識

かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的でした。
現在は女性の社会参加等により勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっているが、働き方や子育て支援などの社会的基盤は従来のままであることが大きな課題です。

職場や家庭・地域では、男女の固定的な役割分担意識が残存し、自己啓発や地域活動への参加が困難な社会となっている要因といえるでしょう。
女性の職場進出や共働き世帯が増加した結果、家庭生活や地域生活により多くの時間を割くことを必要になり、多様な働き方を希望する労働者が増えているのが実情です。

3.仕事と生活の間で問題を抱える人の増加

若年非正規労働者の増加により経済的基盤を確保することが難しく経済的に自立できない層が増加しています。
雇用やキャリアの将来を描きにくいことが、若年層の結婚・出生行動にも影響を及ぼしているでしょう。
正規労働者においては、長時間労働など過密な労働が求められており心身の疲労・家族の団らんを持てないなどの心身の健康問題が懸念されています。
両立希望に反して仕事中心になる男性と家庭責任が重く希望する形で働くのが難しい女性など働く人の抱える現代の問題です。
これらの問題により、子育てと仕事のどちらかをあきらめざるをえない状況も生じています。

4.企業や社会全体への影響

ワークライフコンフリクトは個人の結婚や子育てに関する人々の希望を実現しにくい要因となり、今後の少子化加速や労働力人口減少につながりかねないと懸念されています。
働き方の選択肢が限定され女性や高齢者等の多様な人材を活かしきれないなどの労働力確保問題です。
それにより労働力不足の深刻化につながり、人材獲得競争の激化・生産性の低下・活力の衰退など企業活動にも影響を及ぼしていくでしょう。
社会全体の問題として地域社会のつながりの希薄化などにも影響するため、経済社会の活力向上のためにも働き方の見直しが必要となります。
企業は若年層・子育て層・介護層・高齢層など従業員個人の生き方や人生の段階に応じて多様な働き方の選択に対応し、多様な人材を生かし競争力を強化するためにワークライフバランスの実現は重要となるでしょう。

求められるワークライフバランスとは

ワークライフバランス 健康で豊かな生活を送るために、仕事とプライベートのふたつの時間がバランスよく両立された状態がワークライフバランスです。
やりがいや充実感を得て仕事を行なうことで、家族や自己啓発・趣味やプライベートの充実を指します。

ワークライフバランスの定義(仕事と生活の調和とは)

憲章では、仕事と生活の調和が実現した社会は、国民一人ひとりがやりがいや充実感を得ながら働き、仕事上の責任を果たすとともに家庭や地域生活などにおいても、子育て期・中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会とされています。
具体的には3つの社会実現を目指しています。
  • 就労による経済的自立が可能な社会
  • 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  • 多様な働き方・生き方が選択できる社会
出典元:仕事と生活の調和とは(定義) - 「仕事と生活の調和」推進サイト - 内閣府男女共同参画局 (cao.go.jp)
 ワークライフバランスは経営戦略の重要な柱となる「従業員への投資」となるでしょう。

そこで注目されているのが健康経営です。
健康経営では従業員の心身の健康に配慮することで企業の経営課題を解決に導く経営戦略です。
従業員のワークライフバランスに配慮し、働きやすい環境を整備することによって従業員の心身の健康を企業が管理するという考え方になります。
大企業はもちろん、中小企業にとっては特に大きな意義をもたらす取り組みとなるでしょう。
従業員がワークライフコンフリクトに陥らないために健康経営の取り組みにはどんな取り組みがあるでしょうか。

ワークライフコンフリクトを防ぐ健康経営の取り組みとは?

健康経営 ワークライフバランスの実現には、組織や管理職は部下の個人的な実情や希望する働き方の情報を得る必要があります。
そのためには日ごろから組織のコミュニケーションの活性化・円滑化が必要です。
たとえば、職場内での情報共有のためアンケートを実施したり、家族同伴の運動会や社員旅行等の社内イベントやセミナーを開催したりするなどコミュニケーションを図る取り組みもひとつの方法でしょう。
またワークライフバランスの実現を支援するために、管理職の理解やアクティブな行動が重要となります。
職場のコミュニケーション向上においても、必要不可欠なスキルとして、聴く・共感する・伝える等の、カウンセラー的な研修を継続的に開催することが重要です。
実際の支援や取り組みも重要ですが、こうした土台作りが企業へ浸透することで支援の有効性が高まります。
ワークライフバランスの実現に有効な支援具体例の一部をご紹介します。

柔軟な働き方を支える制度整備とその制度を利用しやすい職場づくり

  • 経営トップによる職場風土改革等
  • 働き方を見直し、業務の見直し等により、時間当たり生産性を向上
  • 労働時間関連法令の遵守の徹底
  • 男性の育児休業等取得促進に向けた環境整備
  • 女性・高齢者等の再就職・継続就業機会の提供

柔軟な働き方についての制度

  • 時間外勤務の縮減
  • 年次有給休暇取得の促進
  • 定時消灯日・退出日(ノー残業デー)
  • 業務繁閑に応じた休業日の設定
  • 短時間勤務・フレックスタイム制度・短時間正社員制度
  • 在宅勤務制度・勤務地限定制度

スキルアップ・研修等について

  • 管理職への意識啓発研修
  • キャリア研修
働く人々にとって子育て・介護を始め、仕事以外の活動に責任を持ち時間を割く必要が増えおり、仕事とそれ以外の活動で希望するワークライフバランスを実現することが切実な課題となっているでしょう。
ワークライフコンフリクトを防ぐことは、働く人々が心身ともに健康であるためにも必要となります。
健康経営では、企業で働く人たち一人ひとりの健康を大切にしようという考えに基づいた取り組みです。
従業員のワークライフコンフリクトを把握し、健康経営を推進することでワークライフバランスの実現につながり、企業の経営目標達成に近づくでしょう。

 まとめ

ワークライフコンフリクト 今回は「ワークライフコンフリクト」について解説しました。
ワークライフコンフリクトが生じることによって、仕事とプライベートの調和がとれず心身の健康に影響を及ぼします。
それは企業の生産性低下や人材不足につながり、ひいては社会全体に影響します。
従業員のワークライフコンフリクトを把握し、改善を促す健康経営の推進が個々の企業の競争力を左右する経営戦略となるでしょう。
ぜひ自社でもワークライフコンフリクト対策をしてはいかがでしょうか。
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