- ヘルスケア
- 2022.01.05 (最終更新日:2022.04.05)
メンタルヘルス対策に必須なセルフケアとは?方法とその効果をご紹介
ストレスと上手く付き合うために
みなさんは日々、ストレスとどう向き合っているでしょうか。
学校や職場や家庭など、あらゆる場所でストレスは発生します。
ストレスへの対処が上手くできないと、心身の両方に大きな悪影響が出るため、いわゆるメンタルヘルス対策が重要なのですが、中でも一番身近にできるもの、わたしたちが日々自分自身でできるものが、今回取り上げるセルフケアです。
一口にセルフケアと言っても、その方法にはさまざまな種類があります。
いくつか具体例を取り上げながら、セルフケアの重要性を見ていきましょう。
また職場においては、従業員の健康管理が会社の業績にも直結し、その管理も企業側の大切な使命です。
健康経営の意識のもと、従業員に対するセルフケアの推進が大切であるため、それらも合わせて紹介していきます。
メンタルヘルス対策の重要性
現代はストレスを感じやすい世の中です。
厚生労働省の調査によると、職業生活の中でストレス等を感じると回答した労働者の割合はおよそ58%にも上ります。
ストレスはメンタルヘルスに影響を及ぼし、程度によっては休職や退職も余儀なくされるため、労働者本人だけでなく企業にとっても注視しておくべき課題の一つです。
メンタルヘルス対策を行うことで、休職や退職のリスク回避だけでなく、一人ひとりが高いモチベーションで業務に取り組めるため、活気ある職場環境の実現や生産性の向上も期待できます。
メンタルの不調は最初から重症というようなことは少なく、本人でも意識していない限り気付けないような軽い症状から始まるため、この早い段階でいかにセルフケアによって対処できるかが、深刻なメンタルヘルス不調にならないためには重要です。
セルフケアとは?
それではセルフケアとは一体どのようなものなのか、概要を見ていきましょう。
概要
セルフケアとは、厚生労働省が発表している「労働者の心の健康保持増進のための指針」における、「心の健康づくり計画」で盛り込まれている4つのメンタルヘルスケアの一つです。
労働者が自らのストレスや心の問題を抱えていることに気付き、予防・対処するための知識や方法を身に付け、それらを実践することで、深刻な不調になるのを防ぐ効果が期待できます。
その他のケア
セルフケア以外の具体的方策をそれぞれ紹介しましょう。
ラインによるケア
直属の上司やチームリーダーといった、管理監督者が労働者に対し行うケアです。
企業には「安全配慮義務」があり、労働者が心身の健康を損なわないように注意していなければなりません。
過度の疲労や負担が掛からないよう、職場環境の把握や改善、仕事の進捗管理、問題を感じている労働者からの相談を受けるなどの役割があります。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内における、産業カウンセラーや臨床心理士などの専門スタッフによるメンタルヘルスケアです。
産業医や衛生管理者との連携のもと、相談窓口の整備や相談の実施、さらにセルフケアやラインによるケアが効果的に行われるためのサポートをします。
事業場外資源によるケア
事業場外にある医療機関や地域保健機関等を利用するケアで、より専門的な知識が必要な場合や、相談者が事業場内に知られたくない場合などに効果的です。
セルフケアの主な内容
それではいよいよ、セルフケアの内容に移っていきます。
ストレスへの気付き
ストレス対処の第一歩は、なるべく早くストレス反応に気付くことです。
普段の正常な心身の状態を把握し、少しの異変にも気付けるようになりしょう。
体や精神、行動へと現れる初期症状をいくつか挙げてみます。
身体面
頭痛・肩こり・からだのだるさ・疲れやすい・食欲不振・睡眠障害・タバコや酒といったものへの依存症状
精神面
無気力・憂鬱・集中力がない・ネガティブ思考・好きなことでもやりたくない
行動面
ミスの増加・遅刻や欠勤の増加・人付き合いが悪くなる・口調が攻撃的になる
ストレスへの対処
ストレスへの対処法については後ほど具体例を出しながら改めて解説しますが、ここでは日頃から意識すべき「3つのR」をご紹介します。
Rest(休息)
オンとオフをしっかり切り替え、休息を意識的に取りましょう。
疲労が蓄積する前に、例えば少し席を立って歩く、コーヒーを飲むなど、短い休憩だけでも効果的です。
Recreation(趣味・気晴らし)
ストレスが発散できる趣味を持つことは非常に大切です。
買い物や料理、旅行やゲームなど、好きなことなら何でもいいでしょう。
ストレスが意識からなくなるような時間を週に少しでも確保できれば、常にリフレッシュした状態で日々仕事ができます。
Relax(リラクゼーション)
音楽を聴いたりストレッチをしたり、アロマを焚いたりと、自身が落ち着ける時間を作りましょう。
家族や友人との会食も、緊張がほぐれて効果的です。
呼吸を落ち着かせ、筋肉の緊張を解きほぐすことで、精神的に安定します。
周囲への健康相談
ストレスに気付き対処したいと思っても、自分一人ではどうにもならないことも当然あります。
そんなときは家族や友人、信頼できる上司や同僚などに、不安や悩み、ストレスの種を打ち明けてみましょう。
相手が専門家でなくても、ただ話すだけで心が楽になり、気持ちが整理できるものです。
見知った人には言いづらければ、職場の相談窓口や公的機関の無料相談窓口などを利用することで、より専門的な見地からアドバイスをもらえます。
セルフケアの具体例
それではセルフケアの実践編です。
具体的な例をいくつか紹介し、それらの効果や注意点も合わせて見ていきます。
十分な休息と睡眠
睡眠不足や睡眠の質の低下は、疲労感や情緒不安定につながりストレスが増加するため、メンタル不調への近道です。
うつ病患者の多くに睡眠障害の症状が見られることから、十分な休息と睡眠の時間を確保できれば、うつ病発症とその他メンタル不調を未然に防ぐことにつながります。
睡眠の質を上げるために、以下のことを避けるように注意しましょう。
- 寝る直前にパソコンやスマートフォンを見る
- カフェインの入った飲み物の摂取
- 適量を超えたアルコールの摂取
- 喫煙
- 激しい運動
リフレッシュできる趣味や活動
趣味に没頭したり、好きなことをしたりすることで、日々のストレスから解放され心がリフレッシュします。
趣味を楽しむことは自己肯定感を高めてくれるため、ストレスの初期症状としてある、ネガティブな感情の解消も期待できるでしょう。
趣味を通じて新たな人間関係ができれば、仕事と家庭以外の居場所が生まれ、よりリフレッシュに効果的です。
また適度な運動は不安感を和らげる効果があり、これも初期症状への対処として適しています。
睡眠を促す効果もあるため、日頃から軽いストレッチ程度でも習慣化できるとよいでしょう。
よく笑う
「笑う」ということはそれだけで心身の健康に効果的です。
身体に悪影響を及ぼす物質を退治してくれる「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」というものがあるのですが、笑うことによりその数値は上昇します。
また他方で、幸福感を得られたり、気分を高揚させたりする作用のある「エンドルフィン」というホルモンがあり、このホルモンも笑うことで脳内に分泌されます。
ストレスを感じている時には笑うことが難しい場合もありますが、口角を上げて作り笑いをするだけでも効果的です。
NK細胞は作り笑いでも活性化するデータがあるため、ストレス軽減と「笑う」ことはとても密接な関係があります。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、過去や未来に目を向けず、「今、この瞬間」を意識することで、目の前のことに100%集中できるようにするためのスキルです。
普段わたしたちが無意識に行っている「呼吸」に意識を向けることが基本で、食事や歩いている時など、その際の身体の変化を意識的に感じることで、ありのままの現状を認識します。
これをすることでストレスの軽減に加え、「集中力」「ストレス耐性」「ワーキングメモリ(作業記憶)」「寛容性」などの向上が期待できるため、近年では従業員研修に大手企業が取り入れていることで注目されています。
職場におけるセルフケアの推進
セルフケアの重要性、その方法について紹介してきました。
それでは企業が従業員に対してできる取り組みは、どのようなものがあるでしょうか。
従業員がストレスによって健康を損なってしまえば、当然その業務はストップし、組織として生産性が落ちてしまいます。
ストレスのない働きやすい環境を作れれば、離職率が低下し人材の定着にもつながります。
企業の取り組み方を考えてみましょう。
ストレスチェックの実施
ストレスが悪化しないよう、初期症状の時点で対処できるように、従業員がセルフケアをする機会を意識的に設けることが大切です。
そのためにストレスチェックの活用は効果的と言えます。
自身のストレス状態についてのデータが可視化されるため、従業員一人ひとりが現在の程度とその課題を把握でき、セルフケアをするきっかけとしては非常に有効です。
ストレスチェックのツールもさまざまあるため、「ストレスへの気付き」に敏感になれるようぜひ導入しましょう。
セルフケア教育や情報提供
そもそもセルフケアについて知識がなければ、ストレスの初期症状に気付くことも、それに対する適切な対処もできません。
重要性についてもしっかり教育しなければ、「自分の身体は自分が一番分かっている」と過信してしまい、本人も意識しないうちに無理をしてしまうこともあるでしょう。
ストレスとメンタルヘルスに関する基礎知識について、セミナーを開催したり、社内報で情報提供をしたりして、その重要性を周知していきましょう。
相談できる・しやすい環境作り
社内外で、悩み相談やストレスへのケアができる環境を整えておくことは重要です。
事業場内に相談窓口を設けた場合、それを全従業員が周知できるよう、しっかり情報提供していきましょう。
また、それ以前に直属の上司や先輩社員が、部下の変化に気付いてあげることが大切です。
社内外問わず、相談窓口に行くというのはなかなかハードルが高く感じるでしょう。
普段から何気なく相談しやすいような関係性を築くことで、ストレスや不安への早い段階での対処が可能です。
社内でのコミュニケーションは、メンタルヘルス関係なく業務上大切なことですが、人間関係の良好な職場は従業員の満足度も高く、ストレスをそもそも最小限に済むでしょう。
「ラインによるケア」がまさに該当しますが、一人ひとり気にかけ、日頃からコミュニケーションを取り、何かあれば相談しやすい環境を作ることが大切です。
まとめ
ストレスとの上手い付き合い方、セルフケアの方法は、今の時代必要不可欠なスキルです。
生きていれば常に何かしらのストレスには悩まされます。
取り返しがつかなくなる前に、早い内からの対処が大事であり、そのためには初期症状など基礎知識を知っていなければなりません。
やはり「質のいい睡眠」「適度な運動」「バランスのいい食生活」は基本として、これらに加え楽しめる趣味を持つことで、休日や退勤後に効果的なリフレッシュができます。
セルフケアの方法とその重要性を、一人ひとりしっかり認識しましょう。
そして企業側も、従業員がセルフケアに取り組めるように、教育や環境整備をしていきましょう。