• 働き方改革
  • 2021.12.22 (最終更新日:2022.04.06)

健康経営に向けた働き方改革とは?メリットや取り組み方をご紹介

目次

日本の労働環境は課題だらけ

働き方改革 目的

みなさんの働き方、勤める企業は健全ですか?
日本の労働環境は世界的に見ても課題が多いとされています。

常態化している長時間労働やサービス残業、有給休暇の取得率の低さ、女性の就業支援、正規・非正規の待遇格差など、挙げればキリがありません。

そんな中で国も「働き方改革」を打ち出し、それに応じて企業もさまざまな取り組みを行っていますが、その意識や取り組み方は企業によって異なり、また大手企業と中小企業では現実にできる取り組みで差が出てきてしまいます。

今回はよく知られるようになった働き方改革について、改めて概要や目的をおさらいし、日本が抱える解決すべき課題とそれに対する取り組みの一例をご紹介します。

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働き方改革とは?

働き方改革 生活できない

早速ですが、「働き方改革」とはそもそもどのようなものか、概要とそれに至った背景を見ていきましょう。

概要

働き方改革とは、厚生労働省の定義によると「働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革」を指します。
労働課題を解消するため、「一億総活躍社会」の実現を目指し、2016年に政府主導で「働き方改革実現推進室」が設置されたのが始まりです。

その後2018年7月に「働き方改革関連法」が交付されたことで、労働基準法や労働安全衛生法などのさまざまな労働関連法が改正されており、2019年から順次施行されています。
この法改正によるポイントは主に8つです。

  • 時間外労働の上限規制
  • 「勤務時間インターバル制度」導入促進
  • 有給休暇の取得率向上
  • 労働状況の客観的把握
  • 「フレックスタイム制」の拡充
  • 「高度プロフェッショナル制度」の導入
  • 月60時間を超える残業に対する割増賃金の引き上げ
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

これらを実践することで、単に長時間労働を減らすだけでなく、労働者一人ひとりが意思やスキル、ライフスタイルに応じて働き方を選ぶために、いわゆるワークライフバランス実現によって、将来の展望がより良くなるようにという期待が込められています。

背景

この改革が注目される背景として、長時間労働に加え労働力人口の減少も挙げられます。
労働力の主となる「生産年齢人口(15~64歳)」が想定以上のペースで、総人口を上回るペースで減少しているということは大きな課題です。

政府の予測によれば、日本の総人口は現在の減少率のままだと2050年で9000万人前後、2105年では4500万人まで減少すると言われています。
さらに生産年齢人口に関しては、2013年時点で8000万人、2027年では7000万人、2051年には5000万人を割り、2060年では4418万人まで減少する算段です。

これが現実となれば国全体の生産力低下、国力そのものの低下が免れないことから政府は本格的に「働き方改革」に本腰を入れ始めました。

働き方改革で解決すべき課題

働き方改革 取り組み

それではここで、概要で挙げた8つの改正ポイントの内容でもある、企業が解決すべき労働課題をおさらいしていきましょう。

長時間労働の改善

日本は長時間労働について、2013年に国連から「多くの労働者が長時間労働に従事している」、「過労死や精神的なハラスメントによる自殺が職場で発生し続けていることを懸念する」という内容で是正勧告をされています。
世界的に見て日本の長時間労働は深刻なレベルであり、特に働き盛りである30〜40代の割合が多い状態です。

また長時間労働は「出生率」の問題にも関連しています。
働き盛りの年齢と出産・育児の年齢が重なることで、女性は休職や退職といったキャリアの中断の懸念と、育児と仕事の両立への不安から出産に踏み切れないという問題が生じ、男性も育児・家事へ協力が困難になるという問題が生じるためです。

これらを解消するための法改正として、先程述べた「時間外労働の上限規制」がポイントとなります。
元々時間外労働に関しては、「1ヶ月45時間」「1年間360時間」までしか残業は不可という基準がありましたが、「特別条項」を加えることで実質無制限に残業が可能になっていました。

ここの上限を「1ヶ月100時間」「2〜6ヶ月平均80時間」としっかり定めたことで、時間外労働に制限を加えたのです。

正規・非正規の格差是正

日本の非正規雇用の待遇は、正社員を時給換算して比較したときの6割程度しかなく、欧米が8割程度であることを考えると格差が激しいと言えるでしょう。

また育児や介護の負担がある女性や高齢者からすると、そもそもフルタイムの正社員で働くこと自体、体力や時間的に困難であるのが現状です。
労働者全体のおよそ4割を占める非正規雇用の働き方と待遇を改善することは、生産性を発揮する機会の創出と労働人口の増加にあたって急務と言えます。

そこで、この改革の目玉ともなるのが「同一労働同一賃金」です。
同じ職務内容であれば差別的な扱いを禁じ、異なる場合でも不合理な待遇差は禁ずるという内容で、例えばベテランの非正規の給与が、新人の正社員よりも格段に安いといった場合は是正されるべきという検討がされています。

将来的な目標として、「非正規という枠組みもなくし、一人ひとりのライフステージに合う働き方を選べるようになる」ことが挙げられており、さらには非正規の賃金が上がることで消費の促進、経済の活性化が進むことによる「デフレの解消」も大きな目的です。

労働人口不足の解決

少子高齢化に歯止めが効かず、労働人口が減ることで深刻な人手不足に陥っています。
しかしこの高齢化社会において高齢者の方々の労働意欲は高く、内閣府の調査によると日本で働く高齢者のうち、「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答している方が4割です。

彼らの就業環境を整えていく必要があり、「65歳以降の継続雇用の延長」や「65歳までの定年延長」を行う企業に対して支援が検討されています。

取り組むメリット

働き方改革 とは

働き方改革に取り組むことは、企業にも働く従業員にもメリットが多くあります。
それぞれ見ていきましょう。

企業のメリット

企業には大きく二つのメリットがあります。

働き方改革により就業環境が整うことで、従業員一人ひとりの仕事の質が上がることが期待できるため、生産性が向上し企業の業績アップにも直結するでしょう。

長時間労働や無駄な残業がなくなれば、より短時間で集中して業務に励む必要があり、より効率的な業務の進め方、システムが求められます。
働き方改革は従業員の働き方の是正というよりも、それを可能にするために企業体質、企業の経営システムそのものを見直す重要な機会です。

また人材確保の点で大きなメリットがあります。
働き方が多様化すれば、今まで時間の都合で働けなかった人が働けるようになるかもしれませんし、先ほど触れたように労働意欲がある高齢者の労働力も期待できます。

さらに働き方改革を推進し就業環境が整っていると、既存の従業員の離職が防げる上、新たな求職者へのアピールという点でも強力です。
誰もがより自分に合った働きやすい環境で働きたい上、特に昨今は転職が当たり前の時代であるため、他社よりも福利厚生が優れている、従業員ファーストの企業というのは非常に魅力的に見えます。

人材確保が難しい現代では、健康経営に根ざした社員が働きやすい環境を整えることが何よりも大事です。

従業員のメリット

続いて従業員のメリットですが、まずは健康の維持管理がしやすくなる点です。
身体的な消耗だけでなく精神的にも疲弊する長時間労働や残業ですが、しっかり制限されることで以前よりも自分の時間を確保できるようになるでしょう。

規則正しい時間に食事・睡眠が取れれば、身も心もかなり休まるでしょうし、趣味ややりたいことに充てる時間もできます。
ワークライフバランスが整い、リフレッシュができれば仕事のモチベーションにもつながるため、日々の張り合いが出てくるでしょう。

モチベーションが上がり仕事に精が出ることで、それだけ生産性が上がり、以前よりも短時間でより多くの業務をこなせるようになるかもしれません。
そうすれば評価も上がるでしょうから昇格や昇給といったキャリアアップも期待できます。

取り組み方の一例

働き方改革 いつから

働き方改革に対する実際の取り組み方を具体的にご紹介します。

テレワーク

コロナ禍で急速に広まりましたが、会社に出社せず自宅やカフェといった任意の場所で業務をすることです。
通勤時間がなくなることで自分の時間が増えたり、その日の予定に合わせて勤務場所を変えたりすることで、よりライフスタイルや家庭の事情に合わせた働き方が可能になります。

育児や介護など、なるべく家を離れたくない人も働きやすくなり、労働者の間口が広がり人材確保に有効です。

フレックスタイム制

月の総労働時間さえ守ればその内訳は従業員次第で、いつ何時間働くかは日によって変えられる非常に柔軟な制度です。

「作業が多く長引いてしまったから明日は早く退勤する」「家庭の事情で昼から出勤する」など、日々調整が効きプライベートの時間を確保しやすく、まさにワークライフバランス実現に効果的でしょう。

「コアタイム」という、必ず出勤していなければならない時間が設定されている場合もあるためそこは注意しましょう。

時短勤務

元々法的にも認められている時短勤務ですが、企業が独自に制度を作り、より充実した福利厚生になっているケースもあります。
出産や育児、介護をするにあたって企業のサポートは不可欠です。

有給休暇や時短勤務など、手厚くすればするほど従業員は安心して所属し続けるでしょう。

業務のデジタル化

働き方改革には、長時間労働の必要がなくなるだけの業務効率化が欠かせません。
そこで可能な限り業務をデジタル化することで、人の負担を減らし、なおかつ人為的なミスなく効率的に遂行できるようになります。

「パソコンだけで完結する業務」や「ルーティン作業が多い業務」、「ルールやマニュアルが定めやすい業務」といったようなものはデジタル化がしやすいため、積極的に導入し、業務の効率化を図りましょう。

働き方改革推進支援助成金について

働き方改革 アイデア

取り組み方をいくつか挙げましたが、資金力に乏しい中小企業は実行がなかなか難しいという実情もあります。
そんな中小企業を対象にした、取り組み推進を支援する助成金があることを最後に紹介しましょう。

2021年には4つのコースが用意され、それぞれで「支給対象になる取り組み」「達成が必要な成果目標」「支給額」「実施期間」が定められています。
大手か中小かに関わらず働き方改革への対応は必須であるため、より負担を減らして対応するためには助成金の活用は欠かせません。

支給の対象となる取り組みはさまざま用意されているため、自社で活用できるものがないか、適切な情報を入手し素早く行動したいところです。

まとめ

働き方改革 エンゲージメント

あらゆるところで聞いたことはあったであろう「働き方改革」でしたが、昨今のコロナ禍でさらに進んできていると言えるでしょう。

テレワークやフレックスタイム制も広まり、ワークライフバランスを重視した従業員個人の健康や幸せを追求する風潮ができたのは素晴らしいことです。
しかしやはり現実として、大企業は環境づくりが進んでいる中で中小企業はまだまだであり、日本全体で見ると労働課題の解消は依然程遠いでしょう。

助成金の存在がもっと周知され、活用できると分かれば、資金繰りが大変な中小企業でも進められる取り組みはあるはずです。
少しでも労働環境改善の兆しが見えるだけで、従業員の負担も軽くなるでしょう。
できることから少しずつ、取り組んでいきましょう。

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