- 健康経営
- 2021.12.16 (最終更新日:2022.04.06)
健康経営に欠かせない「見える化」とは?メリットや取り組み方法をご紹介
効率的な健康経営のために
「見える化」と「可視化」は同じように思えますが、実は異なる意味をもつ言葉です。
何となくで意味は理解し、実際に使っていた方も多いでしょうが、正確に理解できていたかと問われるといかがでしょうか。
今回は「見える化」という言葉について、意味や目的、経営への活用法やその際のポイントなどをお伝えしていきます。
健康経営を推進する上でも「見える化」は非常に大事になるため、効率的で継続的な経営のためにしっかりと理解し、活用していきましょう。
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見える化とは?
それでは早速「見える化」について、意味や起源、そして「可視化」との違いを見ていきます。
概要
まず意味合いを言葉通りに解釈すれば、「それまで見えなかった・見えにくかった情報を、誰が見ても分かるようにすること」です。
業務がどのような流れで行われているのか、目で見て分かりやすいように「業務プロセス(計画・実施・評価)」をグラフや図表なども用いて示すことで、問題点にも気付きやすくなり、問題点が共有されることで改善に向けた対策を効率的に行えるメリットがあります。
「見える化」の起源は、トヨタ自動車が1998年に発表した「生産保全活動の実態の見える化」という論文が始めです。
当時トヨタの生産ラインにおいて、ラインの異常を知らせるランプを設置することで、その色により「異常発生の報せ」「異常の種類」が瞬時に分かる(見える)ようになりました。
この方法が生産現場における「見える化」の原点です。
「見える化」により生産性は大きく向上し、この「見える化」という考え方は生産現場に留まらず、ビジネス分野全般に広まっていきました。
ちなみにこれ以前から「可視化」という言葉は使われており、むしろ「見える化」という言葉が日本語の表現的には通常使わない上、意味合い的にどちらも似たような理解であったため、これら2つの言葉は意味の区別が曖昧なまま、当時定着した背景があります。
可視化との違い
ではより正確に理解するために、見える化と可視化、両者の違いを整理しましょう。
可視化とは、会社にとって都合がいい・悪いに関わらず、全ての情報をオープンに、誰もが見られる状態にしておくことを指し、その目的はこの「情報公開そのもの」という認識が多い傾向にあります。
対して、見える化の目的はあくまでも「経営上の問題を解決すること」です。
見える化された指標を使って、経営層から一般社員まで一丸となり、問題解決に向けて取り組むということに意味があります。
可視化しただけの状態では、問題意識の高い社員しか見ない、あるいは見たあとの改善に向けたアクションがないまま終わってしまいがちです。
ただ情報が見られるというのが「可視化」、体系的に整理された情報で、その上で社員が自立的かつタイムリーに入手でき、自身の問題解決に活用できるというのが「見える化」です。
両者はこのように、「目的」によって区別するのが正確でしょう。
見える化によるメリット
見える化することの主なメリットを5つご紹介します。
課題の発見と把握
分かりやすく業務を見える化することで、誰もが課題を発見・把握しやすくなります。
全従業員が共通認識を持てるため、問題解決もスムーズに効率的に進むでしょう。
企業のミッションも抽象的な表現ではなく見える化することで、従業員一人ひとりが具体的行動を取りやすくなります。
業務内容の共有と標準化
詳細なマニュアルがなければ、業務の進め方一つひとつが人それぞれ異なってしまい、人によって精度や効率に大きな差が出てしまいます。
業務を見える化することで、最も効率的な方法による共有・標準化が可能です。
人材育成の効率化
業務内容が最適な形に標準化されることで、全従業員が最も効率的な方法で業務に取り組めます。
その分新規の従業員にも誰でも教えられるようになるため、特定の人しか教育できないといった非効率さがなくなり、人材育成において非常に有効です。
リスクやミスの軽減
作業上のリスクやミスの改善が期待できます。
またリスクが高いために特定の従業員しかできない作業があった場合、見える化により誰でもできる作業に変わる可能性があるため、非効率なプロセスがなくなり生産性が向上するでしょう。
コスト削減
見える化は業務のムダを明らかにしてくれます。
過剰な人員や不必要な業務などが削減され、コストカットが可能です。
取り組むポイント
実際に取り組むにあたって、どのような順序で進めればよいでしょうか。
3つのステップに分けてそれぞれ解説していきます。
ビジョン・戦略・ルールの見える化
社長が常日頃から社員に目標や組織のあり方を伝えているとしても、社員ごとで受け止め方が異なり、その言葉がビジョンに基づくものと理解されていない場合は、見える化されているとは言えません。
重要なのは「ビジョンが示され、実現のための戦略・ルールが共有できていること」です。
以下に意識して欲しい主な要件を挙げていきます。
- 会社のあるべき姿、経営ビジョンの明文化されている
- 社員の行動指針があり、「やるべきこと・やってはいけないこと」が示されている
- 中期計画・長期計画が策定され公開されている
- 社長が最低限月に一度は、自らの言葉で社員にビジョンや戦略を語っている
- ビジョンや戦略について経営層は社長と同程度理解している
問題・課題の見える化
次に問題を把握し、課題の設定を自立的に行いましょう。
例えば注文の減少に対して、「営業の強化」「新規開拓」などに加えて「社員のモチベーション向上」など、あらゆる課題が考えられます。
優先順位をつけ、「今、何をすべきか」明らかにしていきましょう。
主な要件の例は以下の通りです。
- 社長は状態把握のために必要な経営指標を各種入手し、判断に活用している
- 何が問題かという定義が明らかになっている
- 要因の分析により再発防止が徹底されている
- 役職に応じて各々の裁量が明文化されている
進捗状況の見える化
最後に進捗の管理です。
ステップ2で設定した取り組みがどの程度進んでいるか把握し、適宜新たな一手を打てるように管理しましょう。
- ビジョン・戦略に基づく重点分野の管理指標が具体的にあり、管理されている
- 週単位で数値関連は集計され、幹部に共有されている
- 会議の体系が整理され、適切に運用されている
- 報告・連絡・相談の基準が明確
これら3ステップの順序を意識して取り組むことで、見える化はより効率的に進みます。
経営層の「伝えているつもり」をなくすためにも、明文化や定期的な進捗管理で、組織一丸となって取り組んでいきましょう。
取り組み方法の一例
見える化に取り組む例として、健康経営において効果的な「健康投資管理会計ガイドライン」の活用と、ビジネス一般として見える化を考えたときに役立つツールとして、「見える化エンジン」というものの2つについてご紹介します。
「健康投資管理会計ガイドライン」の活用
企業の健康経営に向けた取り組みを促進するために、経済産業省は2019年9月から「健康投資の見える化」検討委員会を開催し、健康投資とその効果の見える化を目指して検討してきましたが、それに基づいて、企業が健康経営を効果的に実施するための枠組みを示したものが「健康投資管理会計ガイドライン」です。
対象となる企業は「すでに健康経営に着手していて、効果の分析や評価方法を模索している企業」なため、中小企業や健康経営をまだ始めていない、あるいは始めたばかりの企業は少しハードルが高いと感じる場合があります。
出来る範囲からガイドラインの内容に着手し、徐々に範囲を広げていきましょう。
活用するメリットとして、まずは目指す指標が明確になる点です。
健康経営は取り組みに対する数値を見える化しづらいという欠点があり、改善点や成果が出にくい部分がありました。
国がガイドラインを定めたことで指標が明確になり、取り組みに対する分析や評価がしやすくなります。
もう一つのメリットとしては、従業員・取引先・顧客・投資家・地域社会といった外部との適切なコミュニケーションが可能になる点です。
社外に健康経営の取り組みを発信する際、定性的な説明に留まり十分な理解が得られない恐れがありましたが、ガイドラインを活用することで定量的な成果・取り組みを伝えられるため、従来よりも意図が伝わりやすくなり、適切なコミュニケーションが取れるようになります。
見える化エンジンの導入
膨大なデータの中から有益な情報を選び取り活用することが効果的な企業経営には不可欠ですが、そのためにデータマイニングツールというものを導入する企業は多く、その中でも「見える化エンジン」が注目されています。
大きく3つの特徴があり、「あらゆるところからのデータ収集が可能」「収集・分析・レポート化を一本化」「時系列の分析も瞬時にできる」というのが強みです。
膨大な量のデータを瞬時に収集・分析し、視覚的に分かりやすくグラフ化できます。
レポート化までがスムーズなため、見える化してからの改善に向けたアクションが即座に取れ、問題解決に非常に効果的です。
デメリットを挙げるとすれば初期費用が60万円と高額なことと、用途や分析の目的、課題が明確になっていないと使いこなすのが困難かもしれない点です。
しかし上手く活用すれば、業務の効率化・経営課題の解決は間違いありません。
ムダがなくなれば従業員の負担も減り、心身の健康維持にもつながります。
健康経営の取り組みとしても非常に有効なため、導入する価値は大きいでしょう。
まとめ
見える化は企業経営にあたって非常に重要な要素です。
問題の発見・共有・解決といった流れを従業員が自発的にできるような組織は非常に強く、高い生産性は企業の業績向上にもつながり、企業価値の高まりは人材の確保にも効果的でしょう。
業務の効率化は従業員の負担軽減、健康維持に直結し、まさに健康経営そのものです。
不要な業務プロセス、過剰な労働をなくすためにも見える化は常に意識しましょう。
健康経営において課題であった数値の見える化も、ガイドラインの活用により進めやすくなりました。
この記事を参考に「見える化」という意味を再確認した上で、健康経営の推進にお役立てくださると幸いです。
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