- 健康経営
- 2021.12.10 (最終更新日:2022.04.06)
健康経営につながるQOLとは?向上させる方法と企業の取り組み
豊かとは?幸福とは?
物や情報にあふれた現代に生きるわたしたちは、昔と比べて恵まれているのは間違いありません。
しかしストレス社会やメンタルヘルスという言葉もあるように、むしろ悩みも多く精神的に苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。
今回は生き方について考えさせられる、「QOL」という言葉についてお話ししていきます。
この言葉はビジネスシーンにも大きく関わっており、企業の健康経営にもつながるため現代社会で非常に重要な概念です。
言葉の意味はもちろん、企業経営との関わり、実践方法などもしっかり紹介していきます。
ぜひ理解して実践していきましょう。
QOLとは?
まずQOLがそもそも何なのか、その意味や定義についてご紹介します。
概要
QOLとは「Quality of Life」の略であり、主に「人生の質」「生活の質」と訳されます。
物理的に満たされている状態ではなく、精神的に満たされている状態のことを指すもので、「より多く」よりも「より良く」という価値観に基づき、「毎日が充実し心身が満たされた生活」にフォーカスした考え方です。
主に医療や福祉の分野で使われていた言葉で、療養中の患者が身体的・精神的・社会的・経済的な面で、納得できる生活を維持していくことを目指す考え方を指します。
昨今では企業経営において、従業員の健康管理や働きやすい就業環境などの点で注目されており、健康経営を目指す上で重要な要素の一つです。
ADLとの比較
QOLと比較される言葉に「ADL(Activity Daily Living)」というものがあります。
これは日常生活に必要な基本的動作のことで、食事・更衣・排泄・入浴・整容・移動を指すのですが、介護保険制度における「介護が必要か否か」の判断指標に、このADLが使われています。
ADLとQOLの関係性を、例を出して説明しましょう。
例えばスポーツを好きな人が怪我により歩行困難になった場合、リハビリにより歩行自体が可能になってもスポーツはできないとなると、趣味・生きがいを一つ失うという精神的ダメージが大きく残ります。
日常生活は問題ないという点でADLは満たされていますが、「生活の質」という点でQOLは満たされているとは言えません。
逆に例えば寝たきりの人でも、本人の意思が尊重された上で介護を受けているのであれば、QOL、満足度は高いものであるはずです。
評価方法
QOLは精神的な部分であるため評価しにくいという問題がありましたが、「SF-36」という評価方法が生まれました。
「身体機能」「体の痛み」「全体的健康感」「社会生活機能」「心の健康」など、36項目のアンケート方式により、健康概念を測定します。
これを利用することで、異なる病気の患者同士でQOLを比較したり、患者と健康な人とでQOLを比較したりでき、より良い看護や介護に活かせるメリットがあります。
注目される背景
QOLが元々注目されるようになったのは1970年代頃で、技術の進歩も手伝い、物が簡単かつ豊富に手に入るようになったため、生活の豊かさを考える評価基準が、物の量から質の良さに変わっていったのがきっかけです。
衣食住の確保が簡単になった現代において、「ではわたしたちは幸福なのか」と問われた時に、多くの人が人間関係や仕事の悩みなど、満たされている「物」以外の要素で幸福を感じられないのが現状ではないでしょうか。
QOLと健康経営
昨今企業の健康経営という言葉が知られるようになってきましたが、その実現はまさにQOLに直結するため、ビジネスの世界でも注目されています。
「生活の質」「人生の質」は、人生の大部分を占める仕事に大きく左右されるため、仕事がやりがいを持ってできるか否か、あるいは仕事とプライベートのバランスがいいか悪いかで、その人のQOLは変動します。
働きやすい環境を作ったり、長時間労働を是正したり、社員のQOLを上げるために企業が取り組むことが健康経営そのものです。
現代におけるQOLは、医療や福祉における元々の意味合いよりも、ストレスフルな現代社会で働く社会人の働き方改革に向けた意味合いの方が強くなっているかもしれません。
QOLが上がるメリット
QOLが上がるとどのようなメリットがあるでしょう。
ビジネスシーンにフォーカスして、社員個人と企業それぞれに分けて説明していきます。
社員視点
QOLが上がることで、心身ともに健康になることが全てと言えるでしょう。
仕事とプライベートの両立、いわゆる「ワークライフバランス」が整い、公私ともにメリハリのある生活が送れます。
プライベートでしっかりリフレッシュできると仕事への意欲も増すため、それだけ生産性も上がり、仕事の成果にもつながるでしょう。
成果が上がれば昇格や昇給といったステップアップも期待できるため、プライベートの充実というのはそれだけ大切であり、仕事とも大きく関わってくる要素です。
QOLの向上、心身の健康は仕事面での充実にもつながり、それによりさらなるステップアップという好循環を生む効果が期待できます。
企業視点
企業は社員のQOL向上によるメリットの恩恵がそのまま期待できます。
どういうことかというと、社員の生産性が向上すれば、それはつまり企業として生産性が向上するということです。
それにより企業の業績が上がれば、その分社員に還元することでまさに双方メリットがあります。
また社員の仕事の意欲が上がる、やりがいを持って働いてくれているということは、離職率の低下も期待できるため、人材確保が困難で競争の激しい昨今では非常に有意義です。
QOL向上に努めている、健康経営を推進している企業というのは強いアピール力もあります。
既存社員の離職防止に加え、より有能な求職者が集まりやすくなるメリットも期待できるでしょう。
企業にとって、従業員のQOL向上というのは良いことずくめと言っても過言ではありません。
QOLを上げるには?
では実際にQOLを上げるためにどうすればよいでしょうか。
個人が日々意識するポイントをいくつかご紹介します。
良質な睡眠をとる
単純な睡眠不足は疲れが取れないだけでなく、判断能力が鈍ったり情緒不安定になったりという状態を招きます。
また熟睡できず質のいい睡眠がとれていないと、生活習慣病のリスクも高まり、すでにかかっている人に関しては症状が悪化する恐れもあります。
良質かつ十分な睡眠の確保は、QOL向上の大前提です。
規則正しい食生活を送る
食べるという行為は単なる栄養補給に留まりません。
美味しいものを食べる幸福感に加え、例えば誰かと一緒に食べることで気持ちを共有できれば、さらなる満足感につながります。
健康のため、規則正しい時間にバランスの取れた食事をすることはもちろんですが、精神的に満たされるためにも食事は非常に大切な要素です。
適度な運動をする
激しい運動は必要なく、軽いストレッチやウォーキング程度で全身の血行が良くなり体が温まります。
全身のコリもほぐれ、節々の痛みが和らぐ効果も期待でき、さらに生活習慣病の予防にも有効です。
またいい汗をかくと気持ちよくて、気分もどこかスッキリして明るくなります。
日々の健康維持とストレス解消、心身ともに効果的な運動はQOL向上にぴったりです。
瞑想をする
「マインドフルネス」という言葉も昨今言われていますが、心と体の鍛錬によりリラックス感が高まるため、瞑想は精神バランスの改善に昔から長く活用されてきました。
不安感や抑うつ感の症状も緩和する効果も期待でき、ストレス社会の現代には非常に有効です。
よく笑う
「笑う門には福きたる」ということわざもあるとおり、笑うことは心身ともに良い影響があります。
笑うと全身の筋肉や呼吸器が活発に動くため全身運動になるのと、さらにはストレスの解消にも効果的で、よく笑う人は実際に長生きする傾向もあるようです。
生きがいを持つ
好きなことや趣味に没頭する、ボランティア活動に参加するなど、仕事以外に打ち込めるものがあると、会社以外の世界ができ公私ともに張り合いのある日々を送れます。
「生活の質」「人生の質」という訳のとおり、生きがいにできるものを持つことは日々の充実、QOLの向上につながります。
健康経営に向けた取り組み
最後に、企業が社員のQOL向上に貢献するためにどのような取り組みができるか、いくつか例を挙げていきます。
日々の健康チェック
健康状態の管理そのものは欠かさず行いましょう。
法定の健康診断だけでなく、会社独自の施策を行うことで、より社員一人ひとりに寄り添った対応ができます。
体の健康だけでなく、例えばストレスチェック診断や、カウンセラーによる相談など、メンタル的なケアもできればより効果的です。
有給休暇の取得
仕事から離れてプライベートの時間を作ることは、リフレッシュできる上改めて仕事への意欲もわくため、社員と企業双方に有効です。
また有給だけでなく、育休や産休など休暇制度は企業に必ず多々ありますが、どれも取れなければ意味がありません。
「人手不足で休めない」「休暇を取ったら職場に迷惑がかかるかも」などといったことがないように、企業文化として休暇を取りやすい環境を整備することが大切です。
テレワークの導入
コロナ禍で急速に広まったテレワークですが、QOL向上の観点からも有効な面が多くあります。
通勤時間がなくなったり、仕事する場所も自宅やカフェなどその人次第であったり、より個人の生活スタイルに合わせた働き方が出来るようになります。
育児や介護など家庭との両立に悩んでいた人や、通勤で毎日疲労が溜まっていた人など、多くの問題が解決できるかもしれません。
労働環境の見直し
長時間の労働や毎日の残業など、労働環境を改めて見直し改善することで、社員はより自分自身に時間を使えるようになり、自分磨きや家族サービスなどをする機会が増やせます。
過剰な労働がなくなればそれだけ心身への負担も減るため、健康維持にも当然効果的です。
これらは一例に過ぎず、QOLの実践、健康経営の推進にはさまざまな方法が考えられます。
従業員の健康維持と働きがいの向上は、企業の業績アップと社内外を問わない魅力度アップにつながります。
自分の会社ではどんな取り組み方ができるのか、社員はどのような施策を望んでいるか考え、できることから着実に進めていきましょう。
まとめ
QOLの向上を考えることは、自らの生き方、人生を考え直す機会になります。
「趣味や生きがいは何か」「今の仕事はやりがいがあるか」「今自分は満たされていて幸せかどうか」など、改めて考えることで、以降の暮らし方が変わるでしょう。
ストレスが多い現代社会で生きるわたしたちは、QOL向上のために日々の生活習慣を見直すべきです。
企業もそれに貢献できるよう、社員一人ひとりが働きやすく、やりがいを持って働ける社内規則や就業環境を整えていきましょう。
QOL向上に取り組めば、自然に健康経営へとつながります。
社員が心も体も健康でいられるように、この記事を参考に取り組んでいただければ幸いです。
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