- 健康経営
- 2021.12.03 (最終更新日:2022.04.06)
ビジネスで必要なレジリエンスとは?健康経営との関わりをご紹介
ストレスに負けないビジネスマンに
簡単に言えば心の回復力を説明する言葉なのですが、特に昨今SNSの爆発的普及も手伝った人間関係の悩みや、仕事での長時間労働など、オンでもオフでもさまざまなストレスを抱えやすい時代であるからこそ注目を集めています。
特に仕事でストレスを感じることは日常茶飯事であり、そのストレスに毎回押しつぶされてダメージを受けていては、身も心もボロボロになってしまうでしょう。
レジリエンスを向上させることで、ビジネスマン個人のストレス耐性もつき、企業組織で見たときにも社員一人ひとりの生産性向上が見込めるため、健康経営的な視点でも非常に有効です。
この記事ではレジリエンスという言葉の意味と、それが高いことのメリットや鍛える方法までお教えします。
レジリエンスとは?
まずはレジリエンスについての概要と、注目されるようになった背景から説明していきます。
概要
英語の「resilience」が元で、直訳すると「回復力・復元力・弾力」という意味の言葉です。
元々は物理学において「外力による歪みを跳ね返す力」として使われており、近年では心理学的に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに回復し、乗り越えていく力」として広まっています。
似た言葉として「ストレス耐性」や「ハーディネス」がありますが、前者はストレスに耐えられる程度を表すものに対し、レジリエンスはそのストレスに適応し生き延びる力です。
また後者は高いストレス環境の中でも健康を保てる人が持つ先天的な特性であるのに対して、レジリエンスは後天的にも向上できる能力であり、それぞれの言葉で使い分けがなされています。
注目される背景
初めは1970年代、ユダヤ人大量虐殺「ホロコースト」に関する研究がきっかけです。
ホロコーストによって生まれた孤児たちを研究したところ、過去のトラウマにより生きる気力を失った者、そのトラウマを乗り越え前向きに生きられている者の2パターンが存在し、後者はまさにストレスといった外的圧力をはね返す復活力と、逆境や困難にも負けず環境に合わせ変化していく適応力を有していると分かったことで、レジリエンスという言葉が注目されてきました。
日本でも2011年の東日本大震災の際、近年稀に見る大災害の中でも大きな暴動を起こさず、現状を受け止め前向きな姿勢を示した日本人に対して、そのレジリエンスをもつ国民性が海外から注目されました。
近年では労働環境の変化により労働者の心身への負担が問題となっているため、ストレスへの柔軟な対処能力、自身で回復できる能力としてレジリエンスの必要性が高まっています。
構成要素
レジリエンス能力を構成する要素は主に6つあります。
これらは後天的な向上も期待できるため、実際に欧米の学校では、子供に心の強さを教える「レジリエンス教育」が行われています。
自己認識
強みや弱み、また大切にしている価値観や目標などもしっかり認識しましょう。
さまざまな状況下でも、自分を見失わず正しく認識して行動することが大切です。
自制心
自身の感情や思考を制御することです。
正しい認識があっても感情のままに行動せず、その場に合った適切な行動が取れるよう自らを律しましょう。
自己効力感
「自分ならできる」と自信を持つことです。
自信があることで、逆境や困難の中でもひるまずに、自らの可能性を信じて行動を起こせるようになります。
楽観性
精神的柔軟性
問題に直面した際、物事を多角的に捉えて冷静に判断する能力です。
客観的に考え全体像を把握することで、本質が分かり適切な対処が可能になります。
他者とのつながり
自分と向き合うだけでは限界があります。
内面的要素だけでなく、外部要素としての他者とのつながりがあることで、ストレス環境下でも気持ちが楽になるでしょう。
レジリエンスの鍛え方
それでは上述したレジリエンスの構成要素を実際に向上させるためにはどうしたらよいでしょう。
ここでは4つの方法をご紹介します。
自身の思考パターンを理解する
向上させるにあたって、まずは自身の振り返りが大切です。
自分の思考パターン、見直すべき癖を見つけて効率的に鍛えましょう。
例えば何か成果を収めた時に「自分は何もしていない・運が良かった・周りのサポートのおかげに過ぎない」などとネガティブな思考をする傾向や、何か壁にぶつかった時に「こうすべきだ・こうしなければならない」といったような「すべき思考」などは改善する必要があります。
無意識にパッと言葉や行動にするのではなく、思考の傾向を理解・検討した上ですることで、今までかかっていた心身の負担が減るでしょう。
ありのままを受け入れる
今の自分、ありのままの自分の思考や価値観を受け入れて、自尊感情を高めましょう。
問題に当たるたびに自身を否定していては、何も行動に移せず適切な対処ができません。
自身の弱みを受け入れ理解し、その見方を変えることで、弱みと思っていたものが自身の特性・長所だと前向きに捉えることが可能です。
自身の成長を感じる
日々あらゆることに自身の成長を実感しましょう。
小さな成功体験の積み重ねが自己効力感を高め、自信がつきポジティブな思考が増えていきます。
「自分から挨拶できた」「予定より早く仕事を終えられた」「いつもより早起きできて時間を有意義に使えた」など、簡単そうなことを一つずつ着実に達成していき自信を深めていきましょう。
他者の影響を取り入れる
周囲の人から受ける影響は積極的に取り入れ、反映させましょう。
身近にいる尊敬できる人を思い浮かべ、「あの人だったらどうするだろう」、「そういえばあの時こうしていたな」などと想像し、自らの言動・行動に活かしてみることで、次第に理想の姿に近づいていきます。
レジリエンス向上のメリット
レジリエンスが向上することでどのようなメリットがあるのか、特に求められているビジネスシーンにおいて考えてみます。
ストレス耐性が高まる
多忙を極める業務や職場内の人間関係の悩みなど、現代社会はストレスに溢れており、それらを避けることは不可能です。
ストレスへの対処が上手くいかないと心身に疲労が溜まり、うつ病といった精神疾患にかかる恐れもあります。
レジリエンス向上により、自身で心身の健康を保つことが期待でき、より活き活きと働けるようになるでしょう。
変化への適応力が身につく
時代の流れや市場の競争激化による業績の変化、個人で見れば転勤や出張など、ビジネスにおいて変化は毎日のように起こるものです。
これらに毎度負担を強いられていては心身ともに持ちません。
レジリエンスの向上により精神的柔軟性が高まれば、目まぐるしい日々の変化にも柔軟に対応でき、負担は最小限に済むでしょう。
目標達成の力が身につく
キャリアを積み、昇格していくためには、当然目標の達成が求められます。
上へ行けば行くほど求められる目標も高く困難になっていくため、そこで折れずに「必要な試練だ」と前向きに捉える思考が必要です。
レジリエンスの向上がポジティブ思考に直結するため、目標の達成には必要不可欠であり、優秀なビジネスマンは皆持っている能力と言えるでしょう。
健康経営へのつながり
最後にレジリエンスと健康経営との関わりについてお話しします。
レジリエンス向上に向けた職場づくりは、従業員の働きやすさ・従業員満足の向上という点でまさに健康経営そのものです。
「心理的安全性」というキーワードが注目されているのですが、これは職場のメンバー一人ひとりが気兼ねなく発言でき、自然体でいられて安心して働けるような雰囲気を指します。
この心理的安全性が高い職場の特徴をいくつか挙げてみると、
- ミスをした時に隠さず素直に伝えられる
- 役職問わず自由に意見が飛び交っている
- 困ったときに気軽に相談し合える
- 情報共有・意見交換が盛ん
などがあります。
こういった環境づくりのために、企業はどんな取り組みができるでしょうか。
失敗できる環境を整える
どんなことでも、特に始めの頃は失敗がつきものです。
「失敗は成長のチャンス」と捉える風土を根付かせ、社員一人ひとりが意欲的に仕事ができる環境を作りましょう。
いざ失敗した時もフォローを欠かさず、決して責めずに一緒に解決策を検討してあげることが大切です。
情報共有・意見交換をする
活発な情報共有は必然的に社員同士のコミュニケーションを増やします。
コミュニケーションが増えるほど風通しが良くなり、気兼ねなく意見を発しやすい環境が生まれるでしょう。
上から下まで役職関係なく話しやすい職場は、和やかで安心感があり、心理的安全性が非常に高い職場と言えます。
このように企業として社員のレジリエンス向上に取り組めれば、社員一人ひとりにかかる心身の負担軽減と日々の健康につながるでしょう。
社員の健康が企業の経営にも直結するため、企業がレジリエンス向上に取り組むことは非常に有意義な施策です。
企業を評価する指標としても、このレジリエンスというものは活用されているため、企業の存在価値そのものにも直結してきます。
経営層の方はぜひレジリエンスというものを理解し、健康経営に取り入れていってください。
まとめ
今回はあまり聞き慣れない「レジリエンス」という言葉についてお話ししてきました。
現代を生きるわたしたちにとって、ストレスとの付き合い方は生涯の悩みと言っても過言ではありません。
ストレスに適切に対処し、心身にダメージを残さないためにも、レジリエンスを理解し向上させることが必要不可欠です。
ご紹介した鍛え方をぜひ参考にして、日々の向上に役立てていってください。
またビジネスにおいて特に重要なレジリエンスでしたが、企業が社員のレジリエンス向上に貢献できるよう、社内環境を整え、企業の健康経営を実現していくことが大切です。
心理的安全性の高い職場を作れるように、取り組み方を検討していきましょう。
関連マガジン
-
- 健康経営
- 2022.04.08
- スメハラはどう対処すべき?ワキガや香水・体臭などの事例別にご紹介
- スメハラは対策に配慮が必要なハラスメントです。デリケートな問題のため、指摘しにくく本人に自覚症状...
- スメハラは対策に配慮が必要なハラスメ...
-
- 健康経営
- 2022.04.06
- 認知行動療法とは?実践方法や自分でやるときのポイント
- 認知行動療法は精神病の治療で導入されていますが、セルフで導入でき、日々の生活でも役立つアプローチ...
- 認知行動療法は精神病の治療で導入され...
-
- 健康経営
- 2022.03.28
- ブライト500とは?選ばれた場合のメリットと申請方法をご紹介
- 健康経営優良企業というのをご存じでしょうか。 健康経営を導入する企業が増えている中で、特に力を入...
- 健康経営優良企業というのをご存じでし...
-
- 健康経営
- 2022.03.18
- 勤務間インターバル制度とは?何時間必要か、助成金
- 勤務間インターバル制度は、前日の勤務終了から翌日の勤務開始までの時間に一定のインターバルを設ける...
- 勤務間インターバル制度は、前日の勤務...
-
- 健康経営
- 2022.03.15
- プラークコントロールとは?セルフケアのやり方やブラッシングのポイント
- 歯の健康を保つうえで重要なのがプラークコントロールです。これは歯磨きをすることだと思われがちです...
- 歯の健康を保つうえで重要なのがプラー...