- 取組事例
- 2021.12.02 (最終更新日:2022.04.06)
イノベーションと健康経営の関連とは?言葉の意味や実現に向けた課題
企業の発展に重要なイノベーション
新しい技術やアイデアを用いて組織を大きく変えること、というようになんとなくは分かっていますが、改めてその意味や使い方をしっかりと理解することは、企業を経営し、さらに発展させるために非常に重要なことです。
イノベーションを起こそうと口にするのは簡単ですが、イノベーションを実際に起こすためには解決しなければならない課題も多くあります。
この記事ではイノベーションという言葉の意味や種類、イノベーションを起こすために必要なことを説明し、注目されている健康経営との関わりもお話ししていきます。
イノベーションとは?
まずはイノベーションという言葉そのものについて詳しく見ていきましょう。
言葉の意味
英語の「innovation」からきており、和訳すると「革新・一新・刷新・技術革新」という意味があります。
ちなみに「innovation」自体を英英辞典で調べてみると、「the use of a new idea or method」とあり、「新しいアイデアや手法を活用すること」となるため、全く新しい技術の発明・0から革新的なものを生み出すというわけではありません。
「既存の商品やサービス、システムなどに対して、新しいアイデアや方法、技術を取り入れることで、社会や組織に大きな変革をもたらすこと」というのが正確でしょう。
例えばわたしたちがよく知る「iphone」を例に挙げると、携帯電話という既存のものに対して、インターネットやタッチディスプレイ、その他デザイン性といった既存の技術を組み入れたことで、人々の生活を大きく変えました。
0から作ったものではなく、既存のもの同士の組み合わせで新しい価値を生み出した点はまさにイノベーションの典型例です。
新しいアイデアを利用しさえすればイノベーションにあたり、意味合いはかなり広くなるため、ビジネスシーンにおいて非常に多様な使い方がなされており、技術革新以外にも、新しい価値観の提案・新機軸のマーケティング・過去になかった海外企業の買収など、さまざまなことをイノベーションと表現できます。
種類
イノベーションにはいくつか種類があり、3人の提唱者が定義するイノベーションをご紹介します。
まずはオーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターが挙げる5種類からです。
プロダクト・イノベーション |
「新しい生産物の創出」 |
プロセス・イノベーション |
「新しい生産方法の導入」 |
マーケット・イノベーション |
「新しい販売先・消費者の開拓」 |
サプライチェーン・イノベーション |
「新しい供給源の確保」 |
オーガニゼーション・イノベーション |
「新しい組織の創出」 |
続いてハーバードビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンによる、2種類の手法です。
創造的イノベーション | 顧客の意見・要望を取り入れながら行うイノベーションで、「持続的イノベーション」ともいう。 |
破壊的イノベーション | 既存の概念に囚われない新しい発想を積極的に取り入れることで、新商品やサービスを生み出していくイノベーション。 |
最後にハーバード大学経営大学院教授のヘンリー・チェスブロウが提唱する2パターンです。
クローズドイノベーション | 研究から開発まで全て自社の経営資源のみでまかなうという「自前主義」が主流だった1990年代以前に流行したイノベーション。 |
オープンイノベーション | 1990年代以降ネットやテクノロジーの大きな発展でグローバル化が進み、産業の効率化、人材の流動化も加速し競争が激化したため、大手の企業であっても自社資源だけでのクローズドイノベーションがほぼ不可能となったことで注目された、外部の資源や他業種が持つ技術やノウハウも活用するイノベーション。 |
イノベーションのジレンマとは?
ここで押さえておきたい「イノベーションのジレンマ」という理論があります。
上述のクレイトン・クリステンセンが提唱した理論で、成功した企業や大手企業が陥りやすい経営課題の一つです。
「ジレンマ」とは相反する2つの要素で板挟みになりどうにもできなくなってしまうことを意味しますが、イノベーションのジレンマとは既存顧客のニーズを満たすために既存商品の高品質化やサービスの進歩に注力した結果、顧客が抱く別の需要に気づけずに、新しい市場や技術に対し後手に回ってしまい失敗する現象を指します。
陥る要因としては主に3つあり、
- 既存の商品の改善を重視している
- 新市場は小さく参入価値が低いと判断し、魅力を感じない
- 新事業が既存の事業にも影響を及ぼしかねずリスクがある
というような点から、過去に自らも革新的な技術やビジネスモデルによって成功した企業であっても、大企業になるとその革新性を失い新興企業に足をすくわれるということが多々起きます。
社会全体をフラットな視点で眺め、リスクを抑えた小規模でのトライアンドエラーを繰り返し、ジレンマに陥らないように対策することが大切です。
注目されている背景
ではなぜイノベーションが注目されているのか、その背景を4つ挙げていきます。
企業課題の解決
企業は常に多くの経営課題を抱えていますが、イノベーションによってそれらの解決が見込めます。
イノベーションにより新たな生産方法が確立され生産性が向上すれば、従来より少ない人手での生産が可能になり、健康経営を阻害していた人手不足からくる長時間労働もなくなるでしょう。
さらなる経済成長
企業が発展していくためには新たな価値を常に提供することが大切であり、その点でイノベーションは必要不可欠です。
イノベーションの成功は新市場の開拓、収益の維持と拡大という莫大な経済的成果を得ることにつながります。
市場独占の期待
革新的なものを作り出し、新たな価値創造や市場開拓ができるということは、競合他社が未参入の市場を一時期でも独占できるということです。
特に中小企業や個人事業主は資本力が乏しい分、独占が叶えば大企業にも対抗しうる大きな武器となるため、イノベーションの持つ可能性は非常に魅力的です。
市場競争における優位性
競争が激しい昨今で、業界内の優位性は経営戦略において肝となります。
もし新技術やサービスで特許が取れれば国内外問わず大きな武器となり、既存顧客へのメリットはもちろん、新規顧客獲得へも大きな効果をもたらすでしょう。
イノベーションを起こすための企業課題
イノベーションは起こしたくても簡単に起こせるものではありません。
日本は技術力が高いと評価されていても、イノベーションを起こせていないのには日本ならではとも言える課題があるのですが、一体それはどのようなものでしょう。
企業文化に伴う消極的姿勢
昨今では成果主義を掲げる企業も増えてきましたが、年功序列の人事評価のような旧態依然とした制度や文化は未だ根強く残っています。
チャレンジを恐れ、会社に従順に過ごすだけで十分というマインドも生まれて当然な環境と言えるでしょう。
イノベーションを起こすには新しい発想や新しい技術が必要なため、こういった閉鎖的な企業文化や社員のマインドでは一向に起こせないのは明白です。
イノベーション・マネジメントの遅れ
イノベーションに限らずですが、企業の意思決定はスピード感が大切であり、新しいアイデアやビジネスモデルの創造と、事業化までのプロセスを迅速に行う必要があります。
既存事業の維持・継続というマインドではイノベーションは起こりにくいため、イノベーションに特化したマネジメントを導入し、就業環境を変化させることが重要です。
持続可能なイノベーション維持ができていない
イノベーションのジレンマでも述べたとおり、一度成功したからといって安泰ではなく、発展・成長を続け生き残っていくためには、「継続的なイノベーション」と「顧客・市場の開拓」を続けていかなくてはなりません。
新たなものは日々どんどん生み出されていく中で、既存のアップグレードだけでは競争力が落ちてしまいます。
既存商品の寿命を意識し、その都度で適切なイノベーションができるよう注意を怠らないようにしましょう。
イノベーションを起こせる企業とは
まずは常に敏感なアンテナを張ることです。
奇抜なセンスや閃きがなければイノベーションは起こせないと誤解されるが、自社資源で可能な「創造的イノベーション」や外部との提携による「オープンイノベーション」など種類はさまざまなため、市場の変化や時代の流れを敏感に感じ取れれば、常にイノベーションのチャンスは眠っています。
そしてリスクの正確な理解と適切なアクションが必要です。
イノベーションはリスクと不確実性に満ちていますが、そのリスクと、イノベーションに不可欠な先行投資とで天秤にかけ、財務状況に鑑みて何もしない選択肢を選ぶ経営層も多くいます。
しかしイノベーションにはスピード感も重要であり、一度他社に出遅れば巻き返すのは非常に大変なため、経営においては「何もしないことがリスク」という意識を持ち、適切な判断とアクションが大切です。
健康経営につながるイノベーション
途中触れましたが、イノベーションが新しい生産方法を生み出すことで、社員にかかる負担は大きく減らせるでしょう。
より効率的に作業ができれば人手不足による長時間労働や残業がなくなり、社員の健康管理に直結します。
健康管理は社員自身の意識ももちろんですが、いくら個人で健康の意識が高くても、就業環境が劣悪で、長時間労働が常態化していれば、適切な食生活や睡眠時間の確保が困難なため、そもそもとして企業が就業環境を整えてあげることが非常に大切です。
企業の業績アップのために必要なイノベーションが社員の健康にもつながっていくため、特に経営層は、業務で常に改善できることはないか、社員は何を求めているのかアンテナを張って模索することが重要です。
まとめ
なんとなくぼんやりした理解だったのが、正確な意味や使い方、そのメリットや課題なども確認できて、より実用的になったのではないかと思います。
新しいものを作るのは大変であり、それが0からとなれば尚更ですが、イノベーションは既存のもの同士の組み合わせで起こせます。
市場の動向をつぶさにチェックし、何か手がかりになるものが見つかれば、自社が持っている資源の組み合わせ次第で大きな変化を起こせるかもしれません。
難しいことには変わりないでしょうが、常にアンテナを張って、周囲に目を、耳を配りましょう。
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