• 健康経営
  • 2021.11.16 (最終更新日:2022.03.26)

サルコペニアとは?健康経営との関わりやフレイルとの関連性について

目次

企業のリスク管理とサルコペニア

疑問 「サルコペニア」という言葉をご存じですか?
筋肉量が減ることによりからだの機能低下が起こる生活習慣病のひとつです。

最近では若者でもサルコペニア予備群がいるので注意が必要であると言われています。
その背景として新型コロナウィルス感染拡大によって、テレワークや外出自粛により1日のリズムが乱たことによる運動不足も原因のひとつです。

特に経営者の方は従業員の健康状態が事業に影響を及ぼすことが多くなってきたと感じている方も多いのではないでしょうか?
現状でも、健康管理に気が抜けない日々が続いています。
そこで今回は「サルコペニア」について紹介します。

サルコペニアとは?

衰え サルコペニアは、「筋肉(サイコ)」と「喪失(ペニア)」を意味するギリシャ語を組み合わせた造語です。

どんな症状?

筋肉量が減り、からだの機能が低下した状態を指します。
代表的な具体的な症状として次の2つがあります。
握力や足の筋肉・体幹筋など全身の筋力低下が起こること
歩くスピードが遅くなる・杖や手すりが必要になる身体機能の低下が起こること

原因は?

サルコペニアの原因は、何か一つに特定できることもあれば、明確な原因が特定できない場合もあります。
主に加齢によるもの・活動によるもの・疾患に関するもの・栄養に関係するものがあります。

加齢に関連する

加齢以外に明らかな原因がないもの
活動に関連するもの
寝たきり・不活発なスタイル・生活失調・無重力状態が原因

疾患に関連する

重症臓器不全(心臓・肺・肝臓・腎臓・脳)・炎症性疾患・悪性腫瘍・内分疾患に付随するもの

栄養に関係するもの

吸収不良・消化管疾患・食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う、摂取エネルギー・タンパク質の摂取量不足に起因するもの

様々な原因がありますが、おもに不活動が原因と考えられています。しかしそのメカニズムはまだ完全には判明していません。

診断基準

手足の骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下がある場合にサルコペニアと診断されます。
日本人のサルコペニアの診断基準は次の通りです。
  • 65歳以上の高齢者
  • 歩行速度が1m/秒未満
  • 握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合
  • さらにBMI値が18.5未満
  • 下腿囲が30cm未満の場合
  • サルコペニアのメカニズム
  • サルコペニア予備群の高齢者
 高齢者の場合は加齢や元々の体質、生活環境、生活習慣、慢性疾患など、複数の原因が絡み合ってサルコペニアが起こっていることがほとんどです。老年症候群のひとつとして考えられています。
老年症候群とは、高齢によくみられる症状の総称です。QOL(生活の質)の低下につながり、看護や介護を要する状態をもたらします。
主な症状:転倒、骨折、認知機能障害、めまい、貧血、関節痛、腰痛、ADL低下、嚥下困難、尿失禁、せん妄、抑うつ、低栄養、難聴

若者でもサルコペニア予備群

若者デスクワーカー 若者でもサルコペニア予備群がいるので注意が必要であると言われています。
65歳以下の人でも、デスクワークや自動車に乗る生活習慣によって、筋肉が著しく減っている場合があります。

サルコペニアのメカニズムの中に、「運動の機会が減ることや閉じこもりによって活動性が低下すること」が要因になることもあります。
若者でも日頃の運動不足から、知らない間に筋力低下をきたし、サルコペニアの状態にということもあるので注意が必要です。

肥満より要注意!!サルコペニア肥満

サルコペニア肥満とは、筋肉の量が減って体の機能が低下した状態に、肥満が加わったものといわれます。
特に若い女性は注意が必要です。運動不足やダイエット目的で食事制限を行うと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまいます。

サルコペニア肥満ではリスクが倍増します。サルコペニアによる転倒や骨折のリスクと肥満による糖尿病・高脂血症・脂質異常症などリスクが二重に高まります。
サルコペニア肥満の人はサルコペニアだけの人や肥満だけの人に比べ、生活機能の低下、転倒、骨折、死亡などになりやすいため、その重要性が強調されています。

サルコペニア肥満は65歳以上の高齢者に多いといわれていますが、早ければ40歳代の若い人でもサルコペニア肥満予備群がいるので注意が必要です。

高齢者特有の健康課題「フレイル」とサルコペニアの関連性

フレイル 「フレイル」とは、虚弱という意味です。
フレイルは健康と要介護状態の中間を意味します。
サルコペニアは筋肉量や筋力の低下による身体機能の低下であることに対し、フレイルは身体的だけではなく、精神・心理的、社会的な衰弱や虚弱を含みます。

どちらも原因として、加齢や栄養不足、身体活動量の低下、さまざまな疾患の合併などがあげられます。さらに、サルコペニア(筋力の低下)がフレイル(虚弱状態)につながるなど、ふたつの状態はお互いに関連し合っています。

サルコペニアの予防方法

スクワット 現時点薬による予防治療法は十分に確立していません。
予防法としての効果とエビデンスが蓄積しているのが栄養・運動です。専門家の指導を受けて、サルコペニアやフレイル対策をすることが大切です。

栄養対策

筋肉に良いとされる栄養(タンパク質・炭水化物・ビタミンB6)をバランスよく摂取することが大切です。
筋肉生成に効果的➡タンパク質が豊富な肉や魚、大豆、卵など
筋肉を動かすエネルギー源となる➡炭水化物(米・パン・麺類)
タンパク質の働きを助ける➡ビタミンB6(マグロの赤身・レバー・鰹・鶏ささみ・キウイ・バナナ)

運動(レジスタンス運動)

レジスタンス運動とは、一般的にいう「筋トレ」です。
運動には、ウォーキングや水泳などの有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)があります。
医師などに「運動しましょう」と言われると「じゃあ、ウォーキングでもしようかな」と思う方は多いかと思います。
実は有酸素運動も大切ですが、高齢者の方には「レジスタンス運動」に方が体に良いことがわかっています。
サルコペニアやフレイルで低下する歩行能力の改善には歩幅の大きさが関係しています。歩幅を大きくするためには、筋肉量を増大するレジスタンス運動が必要となります。

サルコペニアによる症状は、運動によって進行の程度を抑えることが可能です。
筋力や筋肉量を向上させるレジスタンス運動がより効果的となります。

レジスタンス運動とは?

レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。
具体的には「スクワット、ランジ、腕立て伏せ」です。
筋トレと聞くとダンベルや腹筋などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
腕や腹筋は小さな筋肉ですので、鍛えても全身への影響はあまり大きくありません。
太ももや体幹のような大きな筋肉を意識して筋トレすることが効果的となります。
健康長寿ネットにレジスタンス運動の動作について紹介しています。
詳しい動きが知りたい方はご確認ください。
長寿ネットレジスタンス運動www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/resistance.html

サルコペニアと企業のリスク

転倒 現在、労働人口が減少する中で人材確保は至難です。
あらゆる年代において健康と体力が確保できていれば、定年は暦年齢ではなく生理的年齢によって決定されることになります。

実際に多くの高齢者は「働けるうちはいつまでも働きたい」という意見を持っています。
企業としても持続可能な人材を有することで、企業の成長へとつながっていきます。
また経験や知識を持った従業員を失うことは企業にとって損失となります。
企業としてはいかに即戦力として長期的に働き続けてもらうために対策を講じることが必要になります。

企業のリスクとして考えられるのが労働災害です。労働者による不安全行動(人的原因)となります。
サルコペニア進行によるつまづきは、当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力の低下が原因と気づかない場合があり、注意が必要です。
つまづきが事故やケガの原因となる可能性もあります。
企業としてサルコペニアを知ることはリスクマネジメントになります。

健康経営の取り組みとの関連

現状把握 健康経営の取り組みでは、まず従業員ひとりひとりの健康状態を把握するところから始まります。
そのため健康づくりの方法も年齢や個人にカスタマイズすることができます。

例えば、中年期までの健康づくりはメタボリックシンドローム対策が中心ですが、高齢期になるとサルコペニアやフレイル対策が必要となります。
自社にかかえる従業員の年齢層や個々の健康課題に対応する取り組みが実践されます。

■事例紹介

高齢従業員活躍促進に向けての安全衛生対策事例を紹介します。
[身体機能セルフチェックを活用して身体能力の低下の気づきを促す取り組み]

自分が頭で思い描いている身体能力と実際の測定結果の違いを知ってもらい自覚してもらうことで運動の必要性を促す目的で行われています。

また転倒予防体操や正しいラジオ体操を行い、個々の転倒リスクを下げるためには、どこをどうすればよいのかの指導を行うなど高齢者に配慮した職場づくりになっています。

まとめ

サルコペニア 今回は「サルコペニア」を紹介しました。
高齢者だけでなく若者にも起こりうる生活習慣病ということがお分かりいただけましたでしょうか?
サルコペニアの原因となる骨格筋量減少への対策には運動・食事療法が効果的です。職場での転倒や事故防止のリスク対策として健康経営の取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
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