• 健康経営
  • 2021.11.04 (最終更新日:2022.03.26)

健康経営にも活かせるファミリーフレンドリーとは?概要やメリットについて

目次

仕事と家庭の両立に向けて

ファミリーフレンドリー 両立 女性の社会進出が進み、仕事と家庭の両立に苦労する社会人は非常に多く、それをいかにフォローできるかが企業の課題となっています。
それでなくても働き方改革の推進や、直近のコロナ禍による強制的なワークスタイルの変化により、社会人の生活や価値観は大きく変わってきています。
ワークライフバランスという言葉もよく耳にするようになり、仕事と家庭の見直しが必要とされている中で、今回は「ファミリーフレンドリー」についてご紹介します。
従業員の働きやすさ・企業の健康経営どちらにも直結するのがファミリーフレンドリーです。
概要やメリットを理解し、実際の事例も確認しながら、自社の経営に活かしていきましょう。

ファミリーフレンドリーとは

ファミリーフレンドリー とは

まずはしっかりと、そもそもファミリーフレンドリーとは何なのかを理解しましょう。
概要と、注目されるようになった背景を説明します。

概要

仕事と生活の調和・双方のバランスを整えることを表す言葉で「ワークライフバランス」が
ありますが、これの対象を老若男女問わず全ての働く社会人とするならば、「ファミリーフレンドリー」の概念が対象とするのは、その中でも育児や介護を担う社会人です。
つまりファミリーフレンドリーは、ワークライフバランスを考える上での要素の一つと言えます。
1980年代以降に欧米で普及し始めた概念であり、簡単に言うと「育児や介護といった家族的責任を負う従業員に対する配慮」のことです。
具体的に言えば、「家族的責任を負う従業員の仕事と家庭の両立を支援し、多様かつ柔軟な働き方ができるよう、従業員自身が選択できる仕組み」のことを指します。
このファミリーフレンドリーは「ファミリーフレンドリー企業」という形で用いられることが多く、主に企業が実現させる概念です。
各企業が導入する施策はさまざまで、育児・介護が目的の休業制度や、短時間勤務といった勤務時間に配慮した制度、育児・介護サービス自体の提供や、従業員への経済的支援などが挙げられます。
これら企業施策は章を変えて改めて詳しくご紹介しましょう。

注目される背景

ファミリーフレンドリー注目のきっかけとしてはさまざまな要因があり、女性の社会進出・核家族の増加といった家族形態の変化・社会人の価値観の変化などが挙げられますが、日本において急速に進んだ少子高齢化の側面が大きいでしょう。
女性の社会進出に伴って、仕事と育児の両立の難しさ・負担の大きさが指摘されるようになり、子供を産むのをためらう心理も生まれ少子化が進んできました。
また高齢化が進むことで、仕事をしながら介護をする社会人の増加にもつながるため、こちらも企業・従業員双方を悩ませています。
そこで少子化と高齢化社会に対応するため、企業のファミリーフレンドリー施策を支援する法律として「育児・介護休業法」が策定・改訂され、施策の導入を後押ししたという背景があるのです。

健康経営の視点によるメリット

ファミリーフレンドリー メリット

ファミリーフレンドリー施策を導入していると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
企業と従業員それぞれの視点で、健康経営と併せて考えてみたいのですが、ここで一度健康経営についておさらいしておきましょう。
健康経営とは「従業員の健康を経営的な視点から考え、それに対し戦略的にアプローチすること」です。
企業の経営管理と従業員の健康管理は、別個に考えるのではなく統合的に考えるべきもので、個人の健康増進はそのまま企業の業績向上につながります。
なぜかというと、心身ともに健康であれば医療費の削減に直結する上、仕事面で生産性が下がるのも抑えられるため企業活力が高まる、という考え方です。
これを踏まえてまずは企業視点でのメリットからご紹介します。

企業の視点

企業にとって、育児や介護によって従業員が退職することや急な欠勤が増えてしまうことが一番のネックですが、ファミリーフレンドリー施策を導入することで、それら難点の解消が期待できます。
従業員が育児や介護をきっかけになぜ辞めてしまうかと言えば、仕事とそれらの両立ができないと判断するからです。
もし休業制度や勤務時間の調整制度が整っていれば、フルタイムの時よりも育児や介護にしっかり時間を割ける分、辞める必要もなく今の会社を続けやすいでしょう。
何かサービスを利用したくても経済的に厳しい場合、支援してくれる制度があればそれらを利用しやすくなります。
育児や介護の時でも働きやすいと感じることで、従業員の企業への信頼は増し、企業からすれば離職率の低下が期待できるのです。
そしてこうした福利厚生が整っていることは、既存の従業員の離職防止だけでなく、求職者に対しても大きな魅力を与えます。
会社を選ぶにあたり福利厚生は外せない条件ですし、そこが充実しているほど競合他社と差がつきます。
女性はもちろん男性にとっても、育児休暇や介護休暇が取れるかどうかは重要な要素になってくるため、優秀な人材確保という側面で、企業にとってファミリーフレンドリーの導入は非常に効果的です。

従業員の視点

次に従業員視点ですが、企業視点でほとんど挙げてしまったとおり、安心感・会社への信頼という点が一番のメリットです。
健康経営における健康とは、身体はもちろん心の健康も指しており、仕事をするにあたっていかに働きやすい環境か、ストレスなく安心して働けるかが大切になってきます。
育児や介護といった場面はそれらをこなすだけでも心身に負担が大きいため、仕事と両立しようと思ったら会社の協力が必要不可欠です。
必要な期間お休みをもらえたり、育児や介護に合わせて勤務時間を変えられたりできれば、それだけ負担も減り笑顔で過ごせる時間が増えるでしょう。
子供や介護する相手に対してイライラしてしまうことも日々たくさんあるでしょうし、そこに仕事のストレスも加わらないようにするのが一番です。
また、一度退職してしまえばそれまでのキャリアを失うことにもなるため、そもそも従業員側も簡単には辞めたくないものです。
しかし制度が整っていないと、現実を考えたときにこの会社での両立は難しいとなってしまいます。
この会社なら安心して続けられる、休業明けも働きやすいだろうと思えることが従業員にとって最大のメリットなのです。

ファミリーフレンドリー企業の評価基準

ファミリーフレンドリー 導入

厚生労働省は平成30年度まで、「厚生労働省均等・両立推進企業表彰(ファミリーフレンドリー企業表彰)」という名で、仕事と育児・介護の両立を支える取り組みを積極的に行い成果をあげている企業に対して表彰を行っていました。
取り組みの姿勢や成果に応じ、「厚生労働大臣優良賞」・「厚生労働大臣努力賞」・「都道府県労働局長賞」の3種類が設けられていました。
ファミリーフレンドリー企業と評価するための基準として、以下の4つがあります。

  1. 分割でも取得可能な育児休業制度や、通算で93日を超える介護休業制度、年5日を超える子供の看護休暇制度など、法を上回る基準の育児・介護休業制度の規定があり、実際に利用されていること。
  2. 育児や介護のために、短時間勤務制度やフレックスタイム制などといった、仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方が可能な制度を持ち、実際に利用されていること。
  3. 事業所内託児施設がある、育児・介護サービス利用時の援助措置があるなど、仕事と家庭の両立を可能にするその他の制度を規定しており、実際に利用されていること。
  4. 育児・介護休業制度等の利用がしやすい(男性従業員も利用しやすい)雰囲気であり、経営層や管理職の理解もあり、企業文化として仕事と家庭の両立がしやすくなっていること。

賞としてはなくなりましたが、企業がファミリーフレンドリーを取り入れるにあたっては大いに参考にすべき基準です。
このあとに実際の企業の取り組み事例を確認しながら、導入時のポイントを押さえていきましょう。

企業の取り組み事例

ファミリーフレンドリー 事例

最後の章では国内・海外問わず、仕事と育児の両立を支援するにあたり考慮すべきポイントと、それを実現するための施策例を紹介していきます。

育児に対する時間的・経済的保障

産前・産後~子供が小さいうちは特に、親子ともに最もケアが必要な期間であるため、この頃に仕事を並行して行うことは現実的ではありません。
時間的・経済的な保証がない場合は、仕事と天秤にかけた時に子供を持つことを諦めるという選択に至る可能性もあるため、この点を保障する「産前・産後休業」や「育児休業」が非常に大切です。
これには国が定める休業と企業が独自に定める休業との2パターンがあるのですが、日本においては例えば男性の育休取得率は1割にも満たない現実があります。
対してスウェーデンでは9割もの男性が育休を取得しており、両親合わせて480日の育休が定められている上、分割での取得も可能です。

仕事復帰に対する施策

産休・育休を終えいよいよ復帰となれば、まさに仕事との両立が最も大変な時期なため、企業は従業員の負担を可能な限り減らし、復帰しやすい環境を作ることが大切です。
例えば企業内保育所の設置は有効な手段で、平成31年3月時点で認可外の事業所内保育施設は3402箇所存在します。
また、子供をオフィスに連れてきて働くことを認める「子連れ出勤」や、キッズスペース併設のワークスペースがあるママスクエアというビジネスモデルなどさまざまな施策があります。
短時間勤務やフレックスタイム制といった柔軟な働き方に加え、子供と一緒に働ける場所があるとさらに復職への安心感が増すでしょう。

悩み相談ができる環境づくり

仕事と育児を両立させるためには、職場の理解や、不安を和らげるための対話や情報共有が必要となります。
情報交換や悩みの共有により育児の不安を軽減するために、従業員同士がつながる機会を作ることは、コロナ禍により対面での接触が制限される今だからこそ非常に大切です。
イギリスのExperianでは、従業員のコミュニティの一つとして「Working Families Network(働く家族ネットワーク)」というものが築かれています。
子供の年齢に関わらず、育児や介護をする従業員同士が交流できる場であり、仕事との両立に役立つ情報も盛んにやり取りされ、あらゆるお悩み相談にも役立っています。

育児に専念する時間に対する配慮

リモートワークが可能になった現代では、良くも悪くも仕事とつながりやすくなりメリハリがなくなるという負の側面も存在します。
特に育児や介護において、「今この時間だけはしっかり集中して面倒を見ていたい」という時は必ずあるため、仕事と「つながらない権利」を保障するという考えは非常に大切です。
メリハリがつくことでより自律的な働き方が可能になり、結果的に生産性の向上も期待できます。
「つながらない権利」はフランスでは実際に法整備もされ、ドイツでも法律としてはないものの、企業独自で同様の制度を整えてきた経緯があり、例えばVolkswagenは18:15~7:00の間、従業員が携帯電話から仕事上のメールにアクセスできないという仕組みを導入しています。

まとめ

ファミリーフレンドリー 企業 昨今注目のワークライフバランスの中でも、育児や介護にフォーカスしたファミリーフレンドリーについて紹介してきました。
現代日本の経済状況では、子供が欲しくても生活が苦しく、なかなか一歩踏み出せないという方は非常に多いでしょう。
それらの改善のために国の政策も大事ですが、企業レベルでできる支援も多くあることが今回分かったと思います。
従業員が安心して出産・育児、あるいは介護に向き合えるよう、制度を整え、実際に利用できるだけの企業文化を作り上げていくことが企業の責務です。
企業の健康経営を実現するためにも、従業員ファーストの気持ちでファミリーフレンドリーについて考えてみましょう。
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