- 取組事例
- 2021.11.22 (最終更新日:2022.03.26)
戦略マップの重要性とは?健康経営への活用法
戦略マップとは
目標に向けた施策が図式化され、経営層だけでなく従業員一人ひとりにまで、やるべきタスクがはっきりと分かるようになるものです。
組織としての目標や、それに対するアプローチが明確になることで、従業員の働く意欲も向上し、抱える経営課題の解消へとつながります。
また戦略マップは健康経営においても非常に有効で、ホワイト認定を受けている企業のうち4社に3社が戦略マップを取り入れています。
この記事では戦略マップの概要とその効果、実際の作り方を学んだうえで、健康経営とどのように関わってくるのかを見ていきましょう。
戦略マップの概要
まず戦略マップとは何かですが、企業や組織が掲げる目標を達成するためのシナリオであり、そのための戦術が図として描かれることで、その時々の行動との因果関係や関連が分かりやすくなっているものです。
作成する目的は企業の経営課題や従業員の就業環境の改善であり、マップがあることでそれらが明確になります。
ではここで一度、戦略マップを理解する上で重要な関連ワードを紹介しましょう。
以下3つの要素を踏まえて戦略マップを考えることで、より自社に合った効果的なマップへと昇華していくでしょう。
バランススコアカード
戦略経営のために必要なマネジメントシステムのことで、「財務の視点」・「顧客の視点」・「業務プロセスの視点」・「成長と学習の視点」の4つの要素から成り立っています。
戦略マップはこれらバランススコアカードを補強するための枠組みであり、マップの作成にはバランススコアカードの知識が必要となります。
SWOT分析
経営戦略を策定するための方法で、「Strength(強み)」・「Weakness(弱み)」・「Opportunity(機会)」・「Threat(脅威)」の4つの視点から、経営戦略にあたっての現状分析をすることです。
戦略マップを作る際このSWOT分析をすることで、自社の強みや弱み、業界や市場の機会と脅威を把握できるため、市場や顧客に提供できる自社の価値を明確にする効果があります。
クロス分析
アンケート結果の集計でよく使われる手法で、アンケートの項目を絞ることで、それらに属するものがどのように関連してくるのかを分析するものです。
クロス分析の結果を戦略マップに反映させることで、その経営戦略が有効かを分析し整理できるようになります。
戦略マップ作成のメリット
それでは次に、マップを作ることによる効果をご紹介します。
経営戦略の視える化ができる
すでに述べましたが、戦略マップという図のおかげで、経営戦略の全体像がはっきりと見え、組織の抱える問題を把握しやすくなります。
ビジネスに限りませんが、目標達成のための基本として、現状何が問題なのか・どう改善していくべきかを明確にすることが非常に大切です。
課題や解決のプロセスが可視化している戦略マップは、効率的なビジネスには欠かせません。
組織のコミュニケーション向上につながる
課題解決における担当部署や担当者がはっきり分かるため、それぞれの部署内で進捗状況を共有するにあたり会話や意見交換の場が増え、結果としてコミュニケーションの向上へとつながります。
それぞれの戦略の連携促進につながる
戦略マップによって立ち上がる経営戦略は複数ありますが、それぞれ無関係なものではありません。
課題の内容や解決のプロセスは違ってもどこかで結びつく共通点があるため、その際各部門が連携することで、組織全体のパワーアップも期待できます。
軌道修正が容易になる
戦略マップを作っておけば戦略の修正や変更がしやすいのも大きなメリットです。
イレギュラーな問題が発生したり方針転換があったりすれば、最初に作った戦略マップに修正を加えるのは当然ですが、視える化したマップがあることで全体像を把握できている分、より的確でスムーズな修正・変更ができます。
戦略マップ作成の6ステップ
ここまで戦略マップの概要とメリットについて説明してきましたが、それでは実際に作るときの手順をご紹介しましょう。
基本的なテンプレートが存在し、主に6つのステップに分けられます。
1.ビジョン・ミッションを見直す
まず大切なのは企業がそもそも持つビジョンやミッションの見直しです。
会社を経営していくにあたっての、何をする会社なのか、どのように社会に貢献していくのかという原点に立ち返りましょう。
組織のビジョンを常に新鮮に保ち、その純度を保つことは非常に大切です。
戦略マップを作る際には、自社のビジョン・ミッションは何なのか、それは現代の社会に適したものなのか考え直し、話し合う場を設けましょう。
2.最終目標を設定する
ビジョンを達成するための戦略の中で、最終的なゴールがどんなものなのかを明確に定めましょう。
明確なゴールがあればそれに向けてマップが作りやすくなり、プロセスで必要なもの・不必要なものの取捨選択が可能になります。
3.4つの視点で戦略を分類する
ここでは先ほど紹介したバランススコアカードを活用します。
「財務」・「顧客」・「業務プロセス」・「成長と学習」4つの視点でバランスよく作成しましょう。
どれか一方に偏ることなく均等に見ることが大切で、問題の整理と集約をし、各フレーム間の因果関係を読み取ることで、解決策が見つけやすくなります。
4.重要成功要因を決定する
重要成功要因とは「KFS(Key Factor for Success)」と呼ばれ、それを抽出するためには市場環境や競合他社を調査し、さまざまな要因を見つけなくてはなりません。
これにより共有された成功要因が組織の意識を統一させることにつながるため、あらゆる知恵を搾り出し、成功の糸口を掴みましょう。
5.マップ外の経営戦略を模索する
一度経営戦略を組み立てたあとに、見落としてしまった重要な項目はないかを模索し、これまで考慮していなかった視点から、ビジネス成功のヒントを導き出します。
6.アクションプランを策定する
最後に行うのはアクションプランの策定、つまり具体的な行動を決めていくことです。
マップの構成が定まったら、その通りに戦略を進めていくために、各部署の各社員、一人ひとりが取る行動を決定しましょう。
やはり最後には具体的な内容を入れ込むことで、戦略マップはより良いものに仕上がります。
戦略マップ作成時の注意点
注意点は大きく分けて3つあります。
前述の6ステップと合わせてしっかりと理解し、ビジネス成功の具体的なイメージを持ちながら作成しましょう。
最終目標を明確化する
「作り方のステップ2」の繰り返しにはなりますが、最終目標を明確化することはそれだけ重要です。
目標を明確に定めれば、それに至るステップも一つひとつ明確になるため、より正確な戦略マップの作成が可能になります。
やるべきことが明確になれば仕事の効率も上がるため、社員の意識を統一できる点も大きなメリットです。
戦略マップに沿った行動をする
作ったあとの話にはなりますが、社員全員でマップ通りの行動をすることが必要不可欠です。
当たり前ですが作るだけでは意味がなく、どれだけ間違いなく有効な戦略マップでも、それで決めた通りの行動をしてくれないことには効果が最大限得られません。
社員が自己判断で勝手な行動を取らないよう、社員自身はもちろん、管理者の立場の人も肝に銘じておきましょう。
アクションプランが現実的なものかどうかを確認する
最後のポイントは、策定したアクションプランが実際に可能かどうかを確認することです。
経営層と現場では思っている以上にギャップが付きものであり、さまざまな事柄で理想と現実のズレは生じるため、マップにおこしたプランが夢物語で終わらないよう、実際に行動する社員やその部署で話し合い、すり合わせを欠かさないようにしましょう。
健康経営への活用
最後の章では、戦略マップと健康経営の関わりについてご説明します。
健康経営目線での作成メリット
健康経営に取り組むにあたり、戦略マップを用いることでその費用対効果が明確になる効果があります。
健康経営の担当者にとって、経営層との視点のズレが悩みの種になりがちです。
例えば「ホワイト500」の認定取得に対し、そのためのプロセスまで経営層は細かく見てくれないため、年々取得が困難になっているにもかかわらず予算の拡大の必要性を理解してもらえないということが起きます。
戦略マップがあることで、取得のために必要な健康施策やインフラ整備などを、成果の指標から順を追って説明できます。
より本質的な内容を経営層と議論しやすくなり、視点のズレも解消できるでしょう。
また、健康経営をノープラン、あるいは曖昧な計画のもと進めてきた企業にとっては、明確な成果を出すことは難しかったはずです。
「PDCAサイクル」を念頭に健康経営を考えた時、戦略マップは「P(計画)」にあたりますが、計画書たるマップを使うことで健康経営の全体像を俯瞰でも見られるため、「C(確認)」と「A(改善)」についても判断が容易です。
経営層にとっては特に、成果や費用対効果といったものは非常に重要な要素のため、戦略マップでそれらが明確になることで、「成果を伴った」健康経営の実現が期待できます。
マップの構成
健康経営においても、マップの主な構成や手順にはテンプレートがあるため参考にしましょう。
まずは「健康経営で解決したい経営課題」を書き、次に「健康関連の最終的な目標指標」、さらにこれを達成するために日々改善すべき指標として「社員の意識・行動変革」を書きます。
そして施策に対する社員の取り組み状況を示す「健康投資施策の取組状況に関する指標」を書き、最後に「健康投資」ということで具体的に取り組む施策内容を書くという流れです。
マップの活用術
活用する上でのポイントも、通常の戦略マップと大きな違いはありませんが、ここでは主に3つ紹介します。
- アウトプットの指標を定点管理し改善する
- 指標間の因果関係を検証する
- 経営層へ報告する
マップで作った指標を定期的にモニタリングすることで、社員の健康施策への参加に対して的確なタイミングで改善を促せます。
指標間での因果関係が視える化すれば、その検証結果を経営層に報告する際に、具体的な施策レベルまで落とし込んだ改善案を提案することも可能です。
まとめ
戦略マップがいかに経営にあたって重要かを見てきました。
計画を立てるということはどんなことでも大切ですが、こと会社の経営となれば尚更であり、マップがあるのとないのとでは、事業の成功の可能性が大きく変わってきます。
健康経営についても、従業員の健康管理や生産性の向上など、テーマが分かっていても具体的な目標や行動ステップが明確になることで初めて有効になるため、戦略マップを用いて全体像を把握し、社員全員で同じ意識を持って取り組んでいきたいですね。
導入がまだな企業はぜひこの記事を参考にして作成してみてください。
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