• 健康経営アドバイザー
  • 2021.10.15 (最終更新日:2022.03.26)

攻めの健康経営のカギとなる「プレゼンティーイズムとアブセンティーズム」とは?

目次

健康経営においても重要視されるプレゼンティーイズム・アブセンティーズム

労働損失 近年、出勤はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態による労働生産性の損失について注目されるようになりました。企業として労働生産性の損失を考える時、何らかの病気によって会社を休む状況を思い浮かべる方も多いと思います。
しかし実際に影響を及ぼしているのは、慢性疲労症候群・うつ病・腰痛・頭痛・花粉症をはじめとしたアレルギー症、生活習慣病などが挙げられます。
例えば、花粉症に罹患している方は症状が出ている時に目のかゆみや鼻のづまり、繰り返すくしゃみで仕事に集中できない、といった状態の従業員はいないでしょうか。
この状態の時は労働生産性が低下しており、結果的に企業の損失につながります。従業員の健康状態と生活習慣は労働生産性と密接に関わっていると言えるでしょう。
本記事では、健康経営における「健康と労働生産性の関係」を解説致します。

プレゼンティーズムとアブセンティーズムとは?

アブセンティーズム・プレゼンティーズム 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
具体的には、生産性の向上社会的評価の向上・企業ブランドの確立などに加え、これから説明するアブセンティーズム・プレゼンティーズムによる労働生産性の損失を抑制することが挙げられます。
生産性への影響度を評価する指標(健康コスト関連指標)には、アブセンティーズム・プレゼンティーズムがあります。

アブセンティーズムとは

健康問題による欠勤

  1. 欠勤や休職
  2. 遅刻早退など職場にいることができない状態
  3. 業務ができない状態

アブセンティーズムについては多くの研究があり、これまで予防と対策が行われていました。

プレゼンティーズムとは

別名「疫病出勤」とも言われ、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し体調不良があるまま働いている状態

 経営科学において、アブセンティーズム(健康問題による欠勤)については歴史的に多くの研究がなされているが、プレゼンティズムについては最近始まったばかりで労働生産性損失の観点から注目されています。
プレゼンティズムの定義は次の4つです。

  1. 体調不良で休むべきなのに出勤している状態
  2. 出勤している労働者の健康問題に関連した労働生産性損失
  3. 病気を持ちながら出勤している状態
  4. 出勤している労働者の生産性低下
プレゼンティーイズムの研究は2000年頃から主に北欧と米国で行われるようになりました。定義には健康問題を持ちながら出勤している状態で労働生産性損失を含むものと含まないものとされています。企業として注目すべきは、労働生産性損失を招く健康問題です。

アブセンティーイズム・プレゼンティーズムによる労働生産性の損失

労働損失 それではアブセンティーイズムとプレゼンティーイズムではどちらによる労働生産性の損失が大きいでしょうか。
欧米を中心とした多くの研究によればプレゼンティーズムによって企業には見えない(労働損失労働生産性の低下による経済的損失)が発生しておりその額は医療費や病気休業に関わる費用よりも大きいとされています。
日本でも現在プレゼンティーズムによる労働損失の研究が進められており、プレゼンティーズムに関する損失のボリュームの大きさが示されています。
出典元:経済産業省「平成27年度健康寿延伸産業創出推進事業 健康経営評価指標の策定・活用事業」東京大学政策ビジョン研究センターWG
 

1人当たりの労働生産性損失は、年間 76.6 万円

労働生産性と健康リスク アブセンティーズムプレゼンティーズムは、心身の健康状態や生活習慣が悪い従業員ほど高まる傾向が確認されています。
中小企業の従業員を対象とした先行研究(*)では、次の9項目で健康リスクを評価しました。
①主観的健康感②仕事満足度③家庭満足度④ストレス⑤喫煙習慣➅飲酒習慣⑦運動習慣⑧睡眠習慣⑨不正愁訴
健康リスクの高い従業員(=生活習慣・健康状態が悪い従業員)ほど、 
その結果、労働生産性損失は大きくなる傾向がありました。 プレゼンティーズムによる(体調不良などに伴う)従業員一人当たりの労働生産性損失は、年間 76.6 万円と推測されました。労働生産性の損失コスト


そのうえでアブセンティーズムプレゼンティーズムの平均値を比較してみたところ、アブセンティーイズムについては健康リスクレベルがある臨界点を超えるところで一気に上昇する様子が見えました。
このことから顕在化したリスク者が重症化しないための取り組みの重要性がわかりました。一方プレゼンティーズムに関しては、健康リスクの上昇に伴って増加する構造であることから、若年層を含めた健康リスクレベルが低い段階から働きかけとなる健康経営の施策が有効であるといえます。

報酬年額により労働生産性の損失コストを推計したところ、アブセンティーイズムとプレゼンティーズムによる損失コストは、低レベルの従業員が年間平均59万円であることに対して、高リスクレベルの従業員は平均172万円であり、約3倍の損失コストが発生していることが確認されました。
このように経済的な視点からも攻めの健康経営が重要であるといえます。

プレゼンティーズムの対策

長時間労働 プレゼンティーズムの背景には様々な健康課題がありますので、職場の課題に応じた対策が必要になります。
慢性疲労症候群では、職場での長時間労働もその一因になり得ます。
ノー残業デーの設定や年次有給休暇の取得状況の把握など、従業員の働き続ける体に休息を与えやすい仕組みを作ることも有効です。
メンタル疾患の予防には、ストレスチェックの推進や相談窓口の周知・関連する社内教育は重要です。

腰痛・頭痛は多くの職場でプレゼンティーズムにつながる要因となっています。ストレスなど個々でもやりにくくても、朝礼や掲示など決まった時間帯に職場で取り組むことで活動を促すことが可能です。
このような方法を職場の中で検討してみる衛生委員会がある職場であればこのようなことを議題に挙げてみるのも次のアクションにつながります。
心身ともに健康である状態であれば、本来の能力パフォーマンスを十分に発揮できます。
そのためにはプレゼンティーズムのことを理解し職場の健康課題に応じた取り組みを実践することが大切です。
若い世代は病気で休むことが少ない一方で、プレゼンティーズムによる損失割合が高い傾向にあります。無理が利く世代でもありますので残業時間や年次有給休暇取得状況などを確認して、疲労の回復や自身の健康に目を向けることを促すことも大切です。

まとめ

攻め健康経営 攻めの健康経営のカギとなるのは、労働生産性が低下する割合の大きい「プレゼンティーズム」対策が重要となることがわかりました。プレゼンティーズム対策を講じることで、結果的にアブセンティーズムや医療費の割合も低減させることにつながります。
健康経営の具体的取り組みに、長期的視点での施策が大切になることでしょう。
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