健康経営における睡眠の重要性は？睡眠に関連する取り組みもご紹介

今回は、健康経営の中に導入されている「睡眠」に関連する取り組みについてご紹介します。
健康経営の取り組みを導入している企業が増加傾向にある昨今、企業によってさまざまな取り組みが実践されています。
中でも睡眠は、直接的に業務に関わらないにしろ、人間の3大欲求のひとつと言われるほど、健康な体づくりの面で重要視されるもののひとつです。
とはいえ、健康経営に睡眠がどう結びつくのか、いまいちピンとこないという方もいるかもしれません。
今回は健康経営と睡眠の関連性について触れた上で、睡眠の質や睡眠習慣の改善、実際に健康経営で導入されている睡眠に関する取り組みの事例をご紹介します。

それではまずはじめに、健康経営に睡眠がどう関わってくるのか、という根本的な疑問から解消していきましょう。
そもそも睡眠には、体の疲れを回復させるための効果があるのはもちろん、脳に溜まった疲れを解消する効果があります。
人間が実感する「疲れ」は脳の自律神経を通じて感じる仕組みです。
そのため、自律神経を十分に休めることが脳を休めることになり、良い睡眠につながります。
脳の疲れは睡眠でしか回復させられず、パフォーマンス能力の低下や健康習慣の悪循環を引き起こしてしまいます。
しかし、日本人のほとんどが日中に眠気を感じ、非常に多くの方が不眠に悩んでいるのが現状です。
2014年に厚労省から策定された「健康づくりのための睡眠指針2014〜睡眠12箇条〜」の第8条には、「勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を」とあります。
このことからも、睡眠が健康経営にも重要な観点であることがわかるのではないでしょうか。

健康経営と睡眠の関連性についてわかったところで、続いては睡眠の質について解説していきましょう。
睡眠にはいわゆる浅い眠りと言われる「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」の2種類があります。
レム睡眠の特徴は「筋肉は動いていないけど脳は動いている状態」であることで、ノンレム睡眠はレム睡眠とは反対の睡眠という意味です。
床についてからできるだけ早めにノンレム睡眠に入ることが、効率的な睡眠につながります。
そのためにも、質の良い睡眠を心がけることが大切です。
では、睡眠の質についてもう少し深掘りしてみましょう。

質の良い睡眠の効果

質の良い睡眠を心がけることで考えられる効果は、主に以下の通りです。

• 疲労回復
• ストレス解消
• 記憶の定着
• 肌あれなどの予防

仕事をする上ではもちろんのこと、プライベートにも大きく関わる点で良い効果が見られるのがわかります。

質の悪い睡眠による影響

質の悪い睡眠、いわゆる「浅い眠り」を繰り返すことで考えられる悪影響には、以下のような点が挙げられます。

• 生活習慣病のリスク増加
• 肥満・太りやすくなる
• うつや不安障害の可能性が高まる
• 睡眠時無呼吸症候群になりやすい

精神面への影響はもちろん、体の不調や命に関わる重要な疾患につながる可能性もあります。
質の悪い睡眠の原因には、過度なストレスや睡眠前のスマホ、寝室の温度や湿度などの環境が考えられます。

不眠症のリスク

質の悪い睡眠が定着してしまうと、不眠症を発症するリスクも高まります。
不眠症とは、睡眠問題といわれる入眠障害・早朝覚醒・熟眠障害・中途覚醒を1ヶ月以上繰り返してしまい、日中の眠気や倦怠感、集中力や食欲が低下してしまう疾患のことです。
上述した質の悪い睡眠につながる原因により不眠症を発症しやすくなるため、日頃から質の良い睡眠を心がけることの重要性がよりわかるのではないでしょうか。
不眠症になってしまうと、日常生活はもちろん、意欲的に仕事に取り組むことも困難になってしまいます。
このことからも、健康的に勤労する上で睡眠の質を高めることが重要なのがわかります。
健康経営においては、不眠症につながるような悪循環を避け、体調面はもちろん、気持ちの面でのフォローが必要です。

健康経営においても重要な観点とされる睡眠は、誤った習慣が身についてしまうと健康に悪影響を及ぼしてしまいます。
上述した質の良い睡眠をとるためにも、良い睡眠習慣を身につけましょう。
ここでは、睡眠習慣を改善するために覚えておきたいポイントをご紹介します。

食生活の改善

睡眠にあまり関係ないような印象がある食生活ですが、実は睡眠にもつながる重要な観点です。
なぜなら睡眠の直前に食事をしてしまうと、体は消化を優先してしまうため、内臓が休まらず浅い眠りになってしまいます。
そのため、消化活動を優先して行っても問題がないよう、就寝3時間前を理想に食事を摂るのがおすすめです。
もし睡眠前の時間を確保できない場合は、できるだけ消化に良いものを夕食に摂るようにし、朝食でしっかりエネルギーを確保しましょう。
睡眠前の時間を確保できるようであれば、良質な睡眠に効果のある「セロトニン」を多く摂取できるタンパク質の豊富な食事を摂りましょう。
また、食事だけでなく、温かい飲み物で睡眠習慣を整えることも可能です。
温かい飲み物を飲むことで、内臓から自然に体温を上昇させます。
体温が下がり始めるタイミングで眠気がくるため、自然な睡眠を温かい飲み物で促せます。
胃に負担がかからない白湯や、体を温める効果の高い生姜湯、リラックス効果のあるカモミールティーなどがおすすめです。
食事や飲み物で効率的な睡眠につながる習慣を作りましょう。

入浴についての意識

睡眠に効果のある入浴を意識することも大切です。
先ほど温かい飲み物の箇所で少し触れましたが、上昇した体温が下がっていくときに自然な眠気が訪れます。
これは、体を温める効果のある入浴にも適用されます。
とはいえ、熱いお湯で一気に温めてしまうと体を覚醒させてしまい、負担をかけてしまうため、かえって非効率です。
入浴はできれば38℃ぐらいのぬるま湯にゆっくり浸かるようにしましょう。

休日の過ごし方を考える

休日だからといって2度寝をしたり、睡眠時間をとりすぎたりしていませんか？
仕事の疲れを一気に解消しようと、一気に寝て回復させようと考える方も多いかもしれません。
しかし、休日に睡眠のサイクルを変えてしまうことは、睡眠の質や習慣が乱れ、夜眠れなくなってしまったり、生活リズムが乱れたりと、かえって悪循環につながります。
そのため、休日だからこそ質の良い睡眠・睡眠習慣の改善を心がける必要があります。
普段は仕事で忙しくてできない食事や入浴に関する改善点を、休日を機に実行するのも良いでしょう。

寝る前の時間・寝室の環境を整える

良い睡眠は、良い環境からです。
1日の疲れをリセットするためにも、寝る前の時間や寝室の環境は非常に大切になります。
例えば、寝る前に寝室でスマホチェックをする方も多いかと思いますが、スマホから発せられるブルーライトは目を覚ましてしまうため、質の良い睡眠のためには厳禁です。
寝る前の時間でいかに自然な眠気を増進させるのが重要なため、絶対にやめましょう。
他にも、寝る前のカフェイン摂取や喫煙も、覚醒作用により入眠から遠ざかってしまいます。
効率よく眠気を誘うためには、まずこれらを避けることが必須です。
寝る前の時間を使ってより眠気を誘いやすくするためには、就寝前にヨガやストレッチなどの軽い運動をするのがおすすめです。
また、寝室の環境を整えることも重要なポイントになります。
例えば寝心地の良い枕やマットを用意したり、室内の温度や湿度を快適に保ったりということが挙げられます。
リラックスできる音楽やアロマを用意するのもおすすめです。
また、寝室が明るくなりすぎないように配慮することも大切です。
これらを意識することで、環境から良い睡眠につなげることが可能になるでしょう。

最後に、健康経営に睡眠に関する取り組みを導入する上で重要な観点をいくつか紹介しましょう。

睡眠研修の導入

健康経営に睡眠への取り組みを導入するため、組織全体で行う研修を「睡眠研修」といいます。
睡眠の質と量を確保し、心身の不調や業務中の睡魔への対策をとるもので、従業員全体が睡眠への意識を高めることを目標にした研修です。
睡眠研修をすることで従業員の健康を保てるのはもちろん、それによる生産性の向上や休職・離職のリスク回避などの効果があるため、近年導入する企業が増加しています。

アンケート調査

健康経営に睡眠に関する取り組みを導入する前には、まず従業員からアンケートを取ることから始めましょう。
健康経営として睡眠への取り組みを導入するにも、従業員の睡眠に関する現状や意見を取り入れないことには何も始まりません。
客観的な視点からさまざまな意見を取り入れることで、企業の中でどういった課題があるのか明確になります。
そのため、従業員の希望に沿った取り組みの実践が現実的になるでしょう。

睡眠指導の実施

睡眠に関する従業員全体の意識を高めるため、どういった習慣を取り入れれば健康的な睡眠を取れるか、といった指導をしていきましょう。
健康経営に関連する管理システムを導入している企業であれば、従業員の睡眠に関するデータが揃っていることが多いため、それぞれに合わせた指導も可能です。
従業員のデータを基に、健康経営の推進担当や産業医などと相談をしたうえで効率的な取り組みを実践しましょう。

管理職への訴えかけ

従業員が睡眠への不満を抱えていても、管理職が動かないことには企業としての取り組みは実践できません。
従業員が睡眠に関するどんな悩みを抱えているか、睡眠を効率よくとることで業務にどういった好影響を与えるのかを、しっかり管理職に訴えかけ、実践に向けて動くことが重要です。

相談窓口の設置

おそらく、多くの従業員が「睡眠に関する悩みってどこに相談すれば良いの？」と感じているでしょう。
また、睡眠の悩みは会社に相談しても意味がないと決めつけてしまっている従業員も多いかもしれません。
睡眠の悩みを誰にも相談できないと、質の悪い睡眠を繰り返して不調になるといった悪循環を生み出してしまいます。
こういった事態を防ぐためにも、睡眠に関する悩みを相談できる窓口の設置は、健康経営において重要であることがわかります。

仮眠室の導入

コストも少なく導入できる睡眠に関する取り組みに挙げられるのが、仮眠室の導入です。
業務の合間に短時間でも睡眠をとると、業務効率は格段に向上します。
実際、業務中の仮眠を認める企業も増えており、今や業務効率化のために有効な健康経営の取り組みと言えるでしょう。
スペースの確保が難しい場合は、業務中に軽い睡眠を取れるような時間を設けるだけでも良いかもしれません。

今回は、健康経営にも大きく関わる睡眠に関する内容を紹介しました。
良質な睡眠は健康な体を保つためにはもちろん、生産性の向上など、業務に関するメリットもあります。
直接業務の時間に取り入れるような観点とはいえないため、疎かになりがちですが、仮眠の時間を設けるなどの対策をとれば、業務中でも睡眠に関する取り組みは可能です。
健康経営に関する取り組みを実践していない企業はもちろん、睡眠に関する取り組みはまだ取り入れていないという企業も、ぜひ今回の内容を参考に今後の健康経営に活かしてください。