- 働き方改革
- 2022.03.11 (最終更新日:2022.03.27)
ダイバーシティマネジメントとは?多様な人材を採用するメリットをご紹介!
ダイバーシティマネジメントについて
ダイバーシティとは
「Diversity:ダイバーシティ」は日本語に訳すと「多様性」です。ダイバーシティという概念は、人権意識の高まりに伴い、1960年頃からアメリカを中心に広まりました。その背景には、人種差別や性差別などの差別行為が人権を侵害するものとして問題視されたことがあります。
多様性という考え方は、個人の属性やバックグラウンドによって差別されるべきでないとして、さまざまな文化や価値観を受け入れる姿勢を表しています。 個人の属性を具体的に述べると、以下の通りです。
- 年齢
- 性別
- 国籍
- 人種
- 民族
- 障害の有無
- SOGI
- 宗教
- 学歴
- 言語
ダイバーシティマネジメントとは、どのような経営方法を指すのでしょうか。
ダイバーシティマネジメントとは
ダイバーシティマネジメントとは「企業が従業員の個性を活かして、多様性を尊重しながら組織づくりを行う経営方法」です。女性の社会進出やグローバル化が進むにつれて、ビジネスシーンにおける多様性の在り方が問われています。
ダイバーシティマネジメントは、社会・企業・従業員の三者にとってメリットがあるため、多くの企業がさまざまな取り組みを実施しています。
経済産業省は、ダイバーシティマネジメントを推進するために、2012年から「新・ダイバーシティ経営企業100選」と呼ばれる表彰制度を設置しました。
このように、企業の取り組みが可視化される制度が整備され、社会全体の意識は高まっています。
ダイバーシティマネジメントの必要性
労働人口が減少している昨今、、ダイバーシティマネジメントは経営方法として社会的に重要視されています。個人が自身に合った働き方を選択でき、属性による差別を受けずに働ける環境が整備されることで、労働人口の確保が期待できます。
また、企業の視点からも、ダイバーシティマネジメントはさまざまなメリットをもたらします。
現在、日本の正規雇用の大半を占めるのは男性ですが、長期的な企業の安定には、ダイバーシティマネジメントの取り組みとして、女性登用・外国人採用・障がい者雇用・シニア層の雇用などの多様な人材の積極採用が求められています。
従業員の多様化が進めることで、イノベーションを起こしやすい環境を作り、企業イメージの向上が可能です。
また、採用の幅が広がることで人材の確保がしやすくなるというメリットもあります。
ダイバーシティマネジメントのメリット
ここでは、ダイバーシティマネジメントの導入により得られるメリットについてご紹介します。
イノベーションの創出
多様な価値観が尊重される空間は、企業成長に欠かせないイノベーションを生み出しやすくなります。
「イノベーションの父」と呼ばれる経済学者のJoseph Schumpeter(ヨーゼフ・シュンペーター)は、イノベーションに関して「既存の知と別の既存の知の新しい組み合わせから生まれる」と提唱しました。
能力や経験、教育バックグラウンドなど、多様性のあるメンバーでチームづくりを行うことで、革新的なアイディアが誕生しやすくなるでしょう。
人材確保の安定化
ダイバーシティマネジメントによって、人材確保の安定化を実現可能になります。
個人の属性を採用基準にするのではなく、組織に多様な人材を配置することを目的に採用活動を行えば、「採用の幅」の拡大が可能です。
また、テレワークやフレキシブル制など、多様な働き方に合わせたワークスタイルをダイバーシティマネジメントの取り組みとして採用することで、介護や子育てなどの家庭の事情による離職を防止が可能です。
離職率が低下すれば、採用コストや人材育成コストを抑えられ、企業のコスト削減にも効果があります。
企業イメージの向上
社会的に重要視されている「ダイバーシティ」に基づいた経営を行うことで、企業イメージの向上に効果的です。
SDGsが注目されていることからも分かるように、近年は世間の人権に対する意識が高まっています。ダイバーシティマネジメントは、それらに関連する取り組みの判断基準となっています。
さらに、ダイバーシティマネジメントを導入することで、取引先や投資家からの信頼を獲得できます。
取引先や投資家からの高い信頼を得ることで、投資額や契約数が増加する効果が見込めるため、さらなる企業の成長も期待できるでしょう。
また、企業イメージの上昇に伴い、従業員のロイヤリティを向上させる効果が期待できます。
ダイバーシティマネジメントは従業員の個性を活かす経営方針であり、従業員が働きやすい環境を実現できるため、結果的にモチベーション向上、業績の拡大という、従業員と企業双方のメリットにつながります。
ダイバーシティマネジメントの注意点
従業員への教育
従業員全員が安心して業務を遂行できる環境を目指すためには、従業員のダイバーシティに関するリテラシーを向上させることが重要視されます。個人の属性や考え方によって差別を受ける可能性がある環境は「ダイバーシティ」を実現させた環境とは呼べません。
例えば、LGBTQに対する理解が足りずに、無意識のうちにセクシュアルマイノリティを差別するような発言をしてしまうケースが見受けられます。
これは、性的指向や性自認の多様性に関する従業員の知識不足が原因です。
また、アウティング等が問題になり、優秀な人材にもかかわらず仕事を続けられない状況に追い込んでしまう可能性があります。
そのため、従業員への徹底したダイバーシティ教育が重要視されます。
コミュニケーションの促進
さまざまなバックグラウンドの従業員がチームとして活動するために、企業としてコミュニケーションを円滑に行える環境を整えましょう。それぞれの考え方を否定するのではなく、尊重しあえるような意見交換の場が必要です。
従業員同士の考えが衝突し、人間関係が悪化してしまうなどの事態は、生産性の低下につながります。
そのため、企業が主体となってコミュニケーションの促進に取り組みましょう。
スキルの把握
経験やスキルの異なる従業員のパフォーマンスを最大化するために、各人の個性を理解し、希望する働き方を尊重する姿勢が必要です。従業員がどのようなキャリアを築いていきたいか、成長のためにどのような支援を必要としているか、一人ひとり寄り添った対応が求められます。
このような個人に向き合う経営を実現するためには、経験やスキルの把握を目的とした面談やアンケートを実施しましょう。
ダイバーシティマネジメントの導入事例
宗教
「信教の自由」は個人が信仰する宗教の自由を保証したものとして、世界人権宣言第18条・日本国憲法の20条で定められています。企業には、信仰する宗教によって従業員が差別を受けないような取り組みの導入が必要です。
具体的な施策として、イスラム教を信仰する従業員のために祈祷を行う小部屋の設置や、宗教によって制約のあるドレスコードや食事に気を払うといった、信仰が阻害されないような配慮が重要です。
障がい者
厚生労働省によって障がい者雇用に関するルールが決められており、民間企業における法定雇用率は「2.3%」です。また、従業員を43.5人以上雇っている場合、1人以上の障がい者を雇用する必要があります。
さらに、障害者雇用促進法の第34・35条では、障がいの有無によって差別を受けないよう、雇用機会を均等に与えることが義務付けられています。
採用活動以外においても、バリアフリー環境の整備や、各人のスキルを活かすための職場づくりが求められます。
グローバル
外国人労働者を雇用することで、企業は新しい価値観や考え方を知る機会を獲得できます。業務に関してだけではなく、働き方やワークライフバランスなど、経営に活かせるさまざまな考えを吸収できるでしょう。
例えば、働き方改革が進んでいる国の従業員を雇うことで、どのような働き方が従業員にとって最適かを考えられる視野を身につけられます。
また、外国人の雇用にあたり、コミュニケーションを円滑に進めるため、社内で使用する公用語を英語に設定している企業も存在します。
セクシュアルマイノリティ
性的指向や性自認によって差別を受けない環境づくりが大切です。LGBT法案など、政府による法整備も世間から注目を集めていますが、セクシャルマイノリティが原因となる生産性の低下や離職率の増加を防ぐため、企業としても取り組みを行う必要があるでしょう。
さまざまな性的指向を持つ人材が働きやすい環境をつくるために、アウティング等の被害を防ぐことを目的にしたリテラシー教育を行っている企業もあります。
また、同性パートナーを持つ従業員へ、他の従業員と同等の福利厚生を整備する事例も見受けられます。
学歴
日本は学歴社会であるため、一般的に「良い大学を出て良い会社に入る」ことが目指される傾向にあります。しかし、大学の名前で人材を判断していると、自社に本当にマッチする人材を逃す可能性があります。
学生時代に学んできたことや留学経験、部活動など、幅広い観点から求職者を理解するように心がけましょう。
そうすることで採用の幅が広がり、自社に合った人材を獲得できます。
例えば、面接官が学歴を知らない状態で採用面接を行うことで、先入観を持たずに求職者と向き合えるでしょう。
女性
育児や出産でキャリアが左右されやすい女性が仕事を続けられるよう、企業は多様な働き方をサポートする必要があります。多くの企業は、性別を問わずに育児休暇の取得を促進したり、時短勤務・テレワークを導入したりして、離職せずに済む環境を整備しています。
また、日本における女性管理職の割合が低いことが問題視されています。実際にジェンダーギャップの状況を改善するためには、女性を管理職に積極的に登用する制度を設けている企業も存在します。
実際に活躍する女性管理職の姿を従業員に示すことで、キャリアアップの意欲を高めることが目的です。
女性の働きやすい環境づくりに関しては、以下の記事で詳しく説明しています。
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まとめ
ダイバーシティマネジメントは、企業が従業員の個性を活かして、多様性を尊重しながら組織づくりを行う経営方法です。
イノベーションの創出・人材確保の安定化・企業イメージの向上など、多様な人材を確保することで得られるメリットが多数存在します。
従業員への教育や、コミュニケーションの促進など、ダイバーシティマネジメントを導入する際に注意するべきポイントを確認し、取り組みを行うことが大切です。
また、ダイバーシティマネジメントの導入事例も紹介しています。
ダイバーシティの導入を検討している企業はぜひ参考にしてください。宗教・障がい・グローバル・セクシュアリティ・女性など、さまざまな観点から総合的にダイバーシティマネジメントを推進するようにしましょう。
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