• 健康経営
  • 2021.07.13 (最終更新日:2022.03.26)

その企業に合った健康経営の取組をしている会社の事例

目次

健康経営をするなら、まずは現状を知ることから

禁煙 健康経営は自社の社員の健康を改善したり、維持したり、健康増進したりすることです。それを行うためには、他社に倣うだけでは、意味のある健康経営の取り組みができません。

例えば、喫煙に関する健康経営の取組をしている企業が多いので、まずはこれから取り組んでみようとする企業もあるでしょう。ですが、ただ他社がやっているから、うちもやってみようと言うだけでは危険です。会社によって、特徴があるからです。例を挙げると、A社では喫煙率が20パーセント前後で、社長はもともと喫煙者ではないが役員の一部は喫煙者、B社では喫煙率が50パーセントをこえていて、社長役員ともに喫煙者、C社では喫煙率が10パーセント未満で社長も役員も喫煙者ではない、という3社があったとします。健康経営の取組として1番初めに行うこととして、3社とも正しいと思いますか?
 

自社の現状を考えて取り組みを行う

社内の内情にもよるとは思いますが、A社は喫煙に関する健康経営の取組を行うことで、健康の改善が見込めるでしょう。ですがB社はあまりにも喫煙者の数が多いうえに社長、役員ともに喫煙者のため、社長と役員が禁煙の手本を見せてからであれば社員もついてくるかもしれませんが、そうでない場合は社員からの反感を買ってしまう恐れもあります。C社は、もともと喫煙率が低いので、一番初めに取り組む健康経営の施策としては弱いかもしれません。調べてみると、もっと他に優先順位を高くしなければいけないものがある可能性があります。

といったように、その会社によって健康経営をするための取組を何から始めればいいのかが違います。自社が何から始めればいいのかを知るためには、まずは自社のことを知る必要が第一前提です。

そうした上で、自社の事業の得意分野を生かした健康経営をしていく方法もあります。今回は、得意分野を生かした健康経営をしている企業の取組事例をご紹介します。

味の素株式会社が行っている食に関する健康経営

野菜 味の素株式会社といえば、調味料など食に関することを得意とした企業です。この企業が掲げている健康経営の方針は「食と健康の課題解決企業」。自社の健康経営の取組についても社外に幅広く伝えており、どうやって健康経営を行っているのかを他社に知ってもらう取り組みをしています。また、健康経営優良法人2021では健康経営銘柄として認定されており、今年で5回目です。健康経営銘柄の認定は、大規模法人のホワイト500に認定されるよりも狭き門となっています。

味の素株式会社が目指す健康経営は「バランスの良い食事」「適度な運動」「良質な睡眠」を意識したセルフ・ケアが習慣化し、心身ともに健康な状態が維持して従業員の中で健康文化が醸成することを目指しています。また、味の素株式会社では、2019年度までは健康経営の基礎固めをしていましたが、2020年度からは味の素流のセルフ・ケアの発展・充実に力を入れています。味の素だからこその施策はいくつかあるのですが、ここでは特に食に関する健康経営についてご紹介します。
 

食に関する健康経営の取組

健康 食事味の素株式会社では、食生活におけるライフステージ事による課題を一覧化しています。10代、20代、30代前半ぐらいまでに早寝早起き朝ごはんの習慣化を付ける。20代からは一人暮らしをする人が増えるため朝食をとらない人が増えるので、朝食を必ず取るようにする。20代、30代40代にかけては、体の変化が起こるため、やせすぎ・太りすぎに注意をする。30代からは過度な飲酒・喫煙に気を付ける、などが書かれています。また、中高年期には過剰栄養=食べすぎに注意だったりとか、60代からは低栄養=ロコモティブシンドロームに注意だったりということを、社員教育として伝えています。

さらに「勝ち飯」の紹介をしています。勝ち飯とは「何を食べるか」ではなく、「何のために食べるか」を考えながら、頑張っている様々な人の目標をかなえるカラダづくり・コンディショニングを実現する栄養プログラムです。「食事の勝ち飯」「補色の勝ち飯」の二種類があり、レシピも公開しているようです。
また「アミノ酸」についての理解を深めるため、アミノ酸に特化した知育も行っています。

オムロン株式会社は年度ごとにテーマを考える健康経営

体温計 オムロンと言えば、体重計や体温計などを主に作っている企業です。健康経営優良法人2021では3度目の健康経営銘柄に認定されています。オムロンでの健康経営活動の方針軸は「イノベーションを起こす人と組織を作る」「心身が健康で、社員が自分の人生を楽しんでいる状態を作る」「オムロンを卒業しても社会で活躍し続ける社員でいっぱいにする」の3つです。オムロンを辞めたとしても、健康に関する考え方を持ち続けられる人になってほしいという考え方は、とても重要ではないでしょうか。

オムロンの健康づくりの5つの指標は「運動:週2回以上の運動習慣」「睡眠:1日平均睡眠時間6時間以上8時間未満」「メンタルヘルス:メンタルタフネス度偏差値55以上」「食事:BMI18.5以上25未満」「タバコ:タバコを吸わないorやめた」です。これを「Boost5」と呼んでおり、この取り組みを従業員に浸透させています。2018年7月では72.8パーセントの人が認知していましたが、2020年7月では84.8パーセントとなり、浸透率は伸びています。そしてBoost5で何個達成しているのかということと、健康・生活習慣病予備軍・生活習慣病の割合が比例していることや、パフォーマンスが高い人ほどBoost5の達成率が高いことなどをグラフで示しています。
 

テーマごとの健康経営

運動オムロンは年度ごとにBoost5のうちの1つを取り上げて、注力テーマとして提示しています。2020年度は「運動」をテーマとしており、理学療法士による正しいフォームのラジオ体操の豆知識を盛り込んだ姿勢を社内ポスターとして張り出したり、オンラインで社内のラジオ体操の動画を配信したり、看護職、オムロンのプロハンドボールチームに所属する選手によるラジオ体操動画を作成したりなどしていました。その結果、運動の達成率が2018年では21パーセントだったのが、2020年では34.4パーセントに伸びています。

2020年度は新型コロナウイルスによる、外出自粛やテレワークなどがあったにもかかわらず、社員一人ひとりの意識が運動に向いていてということがよくわかる数字です。さらに、毎年1年の振り返りを行い、従業員に健康促進のためにどんな取り組みをしていたのかのインタビューやアンケートを行い、社内で共有しています。

2021年度の注力テーマは「メンタルヘルス」となっており、来年にはまたどんな結果になったのかを公表してくれるでしょう。

株式会社ローソンでは細かな数値を追っていく健康経営

パン ローソンと言えば、コンビニ大手チェーンの一つです。健康経営優良法人2021では健康経営銘柄に認定されており、今年で4回目。ローソンでは2016年から毎年独自で「ローソングループ健康白書」をHPで発表し、前年度の実績結果を載せています。ローソンでは健康であることに対しての目標値を細かく見ています。特に2019年度からは「肥満」「血圧」「肝機能」「脂質」「血統」「喫煙」の6項目です。2013年度から毎年のものを発表しており、その数値は徐々に改善されてきています。

ローソンが健康宣言を行ったのは2013年で、健康経営銘柄ができた2015年の時にも認定を受けています。また2013年度にコーポレートスローガンを「マチの健康ステーション」に変更(2019年に「マチのほっとステーション」に変更)しており、ローソンがいかに「健康」を意識した活動をしているかがうかがえます。
実際にコンビニの中でも、通常のローソンと「ナチュラルローソン」という健康を意識したコンビニも展開しているのは、他のコンビニとは違う点です。
 

ローソンの健康経営

アンケートローソンは基礎をしっかり押さえ続けた健康経営を行っているのが特徴です。
例えば、ローソンヘルスケアポイントと言うものがあり、
1.「健康」をチェック:健康診断の結果などと向き合ったり、毎月アンケートで生活習慣を振り返ったり、診断結果で生活習慣病リスクに該当しなければポイントがもらえるというもの
2.「健康」について学ぶ:健康に関するe-ラーニングを受講しテストに合格するとポイントがもらえる
3.「健康イベント」を実行:社内部活動やボランティア活動、健康に関する要素を盛り込んだレクリエーションを職場などで企画・実行するとポイントがもらえる
ということをしていたり、「元気チャレンジ」を行い上位者にはPontaポイントがもらえるという仕組みをとっています。

健康になればなるほど、お得に買い物ができるようになるというのは、ローソンだからできることかもしれません。

自社だからできる健康経営を探してホワイト企業になる

これからの世の中で求められるものは、やはり健康経営ではないでしょうか?
人は人生を楽しみながら健康でいられる環境に価値を感じています。さらに、これからは、ただ健康経営をするだけではなく、この会社だからこそできる健康経営とは何なのかというところにも注目していきたいところです。

自社の強みを生かした健康経営は、他社にはまねできない物であり、入社している従業員は、その強みに惹かれて入ってきた人たちです。最初の方向性は経営者や健康経営チームが記す必要はありますが、自社の強みに沿った健康経営をしていれば、従業員の中に「だったらこういう健康経営もアリなのでは?」という気持ちを持つ人が現れるかもしれません。

健康経営は経営者・従業員ともに考えていくものという側面もあります。自社だからできる健康経営とは何なのかを、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。
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