- 働き方改革
- 2021.06.18 (最終更新日:2022.04.06)
ホテル業界の働き方改革について。人手不足は対策されているのか
- 目次
ホテル業界の人手不足な理由とは①
ホテル業界の人手不足について
ホテル業界の人手不足はかなり深刻な現状です。労働力調査によると、宿泊業・飲食サービス業の就業者数は、平成27年が384万人で、令和元年が450万人です。多少の増減はあるものの、ほとんど横ばいです。しかし国土交通省の資料で全体の宿泊者数を確認すると、平成27年が5億408万人で、令和元年が5億4,324万人に増加しているわけです。ホテル業界は仕事の増加に対して人手が追い付いていない状況にも関わらず、東京オリンピックの開催が近づいています。東京がオリンピック開催地に決まった2013年以降は、外国人観光客も増加しているのです。ところが現在ホテル業界は新型コロナウイルス流行の打撃を受けており、社会情勢に左右されやすい業界だといえます。参照:外部リンク
労働力調査 令和元年
国土交通省 宿泊旅行統計調査平成27年
長時間労働だから
ホテル業では長時間働くことや休日が少ないことを前提として、シフトを作っているのが現状です。ほとんどの業界では休日が100日以上あり、土日祝は休めることと思います。ホテル業の場合は施設にもよりますが、休日自体が少ないため基本的に連休が取れないわけです。肉体労働を伴うホテル業は疲れが溜まる仕事にもかかわらず、まとまった休みがないので疲れが取れません。たとえば朝食から夕食まで営業しているレストランの場合、日勤以外に夜勤や早朝のシフトを組んで対応します。夜勤の従業員は深夜まで閉店後の作業を行いますし、早朝の従業員は朝食を経て昼過ぎまで働くのです。体力のあるうちはこの働き方も可能ですが、歳を重ねた時に同じ働き方ができるかどうかと考えると、疑問を抱きます。不規則な働き方だから
24時間稼働しているホテル業界は、不規則な勤務形態になりがちです。早朝や夜勤の勤務があるだけではなく、毎日決まった時間に勤務しにくいので、予定を入れにくい特徴があります。不規則な勤務形態が合わなくて体調が悪化する人もいるので、このことも人手不足となる原因の1つです。転職する人が多いから
ホテル業界には、ホテルの仕事が好きだから就職する人がたくさんいます。1つのホテルに留まり続けるのではなく、実績を積んだら他のホテルでの勤務を経験したいと考えている人が多いわけです。ほかのホテルへ移ったことをきっかけとして、役職を変えることもできるので、昇給に繋がります。自分の可能性を試したい人や新しいことにチャレンジしたい人が、前向きに行動しているのです。そのため多くの人の転職の理由が、ネガティブなわけではありません。ホテル業界は他の業界と比較して、転職しやすい業界です。ホテル業界の人手不足な理由とは②
縦社会が根付いているから
業務の過酷さのほかに、上司や先輩との付き合いもあります。特に上下関係が厳しいのは、歴史のあるホテルです。もう少しで出社だから仮眠を取りたいのに、夜勤が終わった上司の飲み会にそのまま参加せざるを得ないこともあります。上司も自分と同じように早朝のシフトが入っている場合は、自分だけ飲み会を断るわけにもいきません。ほとんど仮眠できない状態で、肉体労働をするのが過酷なことは簡単に想像できます。飲み会と同じようにサービス残業も、同調圧力によって断れない雰囲気になるのです。職場の緊張感を維持するためにも、多少の上下関係は必要かもしれません。しかし厳しすぎると従業員への負担となり、悪い部分が目立ちます。
当コラムには、ホテル業界について解説した記事があります。ホテルスタッフの仕事内容や仕事の辛さや楽しさを知りたい人は、合わせてご覧ください。
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ホテル業界の人手不足は対策されているのか
人手不足が深刻だと聞くと、対策されているのか不安に感じる人もいることでしょう。ここでは、ホテル業界の人手不足の解決策を紹介します。
本質的な対策が必要
ホテル業界の人手不足を解消するために、少しずつAIの導入が始まっています。しかしホテルにおもてなしである接客を求める利用者も多いので、全てAIで対応させることは難しいと言われているのです。そのため人手不足には本質的な対策が必要で、求職者を増やして離職者を減らすことが必要不可欠になります。長い道のりを移動してやっとたどり着いたホテルで、ロボットの接客を受けたら、温かみを感じない人もいるでしょう。このことを考えると、完全に機械化したホテルを標準化するのは難易度が高まります。これからは接客以外の部分で科学技術を活用し、接客には心をこめられる人間によるサービスを展開することが考えられるわけです。人手不足を軽減するために有効な取り組みとは
離職者を減らすために
従業員が働き続けたいと感じられるような職場作りをしているホテルもあります。近年働き方改革によって働き方が多様化しているので、その流れに乗れば労働環境を改善しやすくなるのです。ホテル業界でも勤務間インターバルを導入して、残業時間の抑制を試みる会社があります。勤務間インターバルでは基本的に8時間から13時間空けることが望ましいという考え方がありますが、今までのホテル業界では本制度を設けることが困難でした。勤務間インターバルを導入すると、14時出勤で23時に終業する従業員の場合、翌日の8時からしか出勤できません。ホテル業界の現状に合わせながら、少しずつ推奨されている時間に近づけるなど、よく考える必要があります。連休が取れればしっかり疲れが取れる人も多いと思いますが、これはホテル業界も同じです。ところが人手不足が常態化しているので、休み自体が久しぶりだという人もいます。離職率を低下させるために、大手ホテルは連休を制度化しました。休息期間として1週間を設けて、従業員が離職しにくくなったホテルもあります。このように連休を制度化して、離職率の低下を抑えられたホテルもあるわけです。
せっかく福利厚生として保養施設があっても、休み自体が取れずにほとんど活用されていなければ、本末転倒になります。現在は福利厚生のアウトソーシングサービスというものがあり、それらを活用しているホテルもあるのです。従業員にとっては、会社が福利厚生を手配するよりも幅広いサービスを利用できるメリットがあります。福利厚生にかかる人件費の削減も期待できるので、福利厚生のアウトソーシングサービスを利用すれば業務の効率化に繋がるのです。1つの会社で100万件以上の優待サービスが揃っている会社や、地域ごとに利用できるサービスを充実させている会社がありますから、細かい需要にも合わせてもらえます。
実際に幅広い需要への対応が必要だと感じていたホテルが、福利厚生のアウトソーシングサービスを上手に活用した例もあるのです。本サービスの導入後、従業員のモチベーションの向上を手助けしたり面接時の話題作りになったりしています。最近は従業員のことを考えている会社のために、多様なサービスがあるわけです。
求職者を増やすには
従業員のことを考えて働きやすい環境作りを行っている会社であれば、良い評価を広めたいと思います。制度を整えていれば、SNSなどで良い評価が広がる可能性があるわけです。悪い評価も簡単に広がってしまうということなので、同僚に対してハラスメントをしていたら、そのことが広がってしまうかもしれません。これは、ホテル業界に限ったことではないのです。働きやすい環境作りの成功例はいくつかありますが、ホテル業界はまだ働き方改革の流れに乗れていないと感じることも多くあります。ホテルで働く人の一日の流れとは
まだまだ働き方改革が滞っているホテル業界のスタッフは、どのように働いているのでしょうか。ここではホテルスタッフの働き方の一部を解説します。
ホテルスタッフの一日の流れを確認するうえで、利用者の動きは欠かせません。ホテル利用者は15時頃にチェックインして、18時頃にレストランで食事をします。チェックアウトは翌日の11時までです。早番といっても、全ての人が同じ時間帯に出勤するわけではありません。チェックイン・チェックアウトの時間が、ホテルの仕事で一番慌ただしい時間となりますので、その時間帯にたくさん人を入れる傾向にあります。ホテルが24時間営業している場合は、全ての時間帯に人を入れる必要があるので、基本的に時差出勤の形を取っているのです。
17時が近づいてくると、夕方の営業の準備を進めていくのです。レストランスタッフに向けて社食サービスを提供しているホテルでは、格安で夕食を食べられます。同じレストランでも昼と夜で提供するサービスが異なりますので、臨機応変な対応が必要です。翌日の準備・後片付けを速やかに終わらせて、21時ごろに閉店します。
ホテルスタッフの一日とは
ホテルで働くホテルスタッフは、どのような一日を送っているのでしょうか。ホテルスタッフの1日を、大まかな流れで見てみましょう。働く場所にもよりますが、8時に出社する場合は、およそ10時頃までチェックアウト業務を行います。10時から15時頃までは、チェックインの準備やお客さまの対応を行うのです。15時から18時までチェックイン業務をして、そこから24時まで翌日のチェックアウト準備などをします。これらのほかにも、レストランのスタッフと連携をしたり予約受付をしたりと、業務はたくさんあるわけです。ホテルスタッフの一日の流れを確認するうえで、利用者の動きは欠かせません。ホテル利用者は15時頃にチェックインして、18時頃にレストランで食事をします。チェックアウトは翌日の11時までです。早番といっても、全ての人が同じ時間帯に出勤するわけではありません。チェックイン・チェックアウトの時間が、ホテルの仕事で一番慌ただしい時間となりますので、その時間帯にたくさん人を入れる傾向にあります。ホテルが24時間営業している場合は、全ての時間帯に人を入れる必要があるので、基本的に時差出勤の形を取っているのです。
レストランスタッフの一日
旅行の楽しみの1つなのが、レストランでの食事です。10時前に出勤すると、テーブルのセッティングや予約の確認などを行います。開店前に1度休憩を取ってから、昼食の営業が始まるのです。利用者を滞りなく案内できるように、席や予約状況の確認を随時行います。レストランスタッフの仕事内容には、新メニューを考案するための試食会などもあります。17時が近づいてくると、夕方の営業の準備を進めていくのです。レストランスタッフに向けて社食サービスを提供しているホテルでは、格安で夕食を食べられます。同じレストランでも昼と夜で提供するサービスが異なりますので、臨機応変な対応が必要です。翌日の準備・後片付けを速やかに終わらせて、21時ごろに閉店します。
ナイトインチャージとは
インチャージという言葉はある時間の現場責任者のことを指すので、ナイトインチャージは夜の時間帯の責任者です。ナイトインチャージは、人員の配置や仕事の分担、新人の育成や進捗管理などを行います。また異なる時間帯のインチャージへ業務の引継ぎを行うことも、大事な仕事です。担当する時間内にトラブルが発生したときは、インチャージが責任を持って対応します。出勤したらチェックインの状況確認を行い、本部への報告資料の作成や清算の準備などをしたのち、チェックアウト業務と朝番への引継ぎをするわけです。夜勤はしんどいと感じる人もいれば、電話の対応がないので自分の仕事がはかどると感じる人もいます。ホテルスタッフの一日を知っていると、ホテルの利用者になるときに、「今はこの時間帯だから、忙しいかもしれない。」と想像できるようになるでしょう。コロナ禍におけるホテル業界とは
最初に資金繰りの調整を行った
新型コロナウイルスの流行により、ホテル業界が行ったのは資金繰りのための金融機関への連絡です。あるホテル事業者は2度の緊急事態宣言を受けて、1年の3分の1の需要が全てなくなったと伝えています。ホテルの運営は利用者にサービスを提供するために大掛かりな装置を必要とする「装置産業」になります。ホテルに限らず大きな借入を抱えている旅館の事業者も多いので、速やかに資金繰りをしても、支援は行きわたりませんでした。テイクアウトのような新たなサービスも始めるため、ホテルスタッフの心のケアも大切だと考えています。どんな仕事をしている人でもコロナ禍に対する不安はありますが、その影響が直接響くホテル業の人たちは、さらに抱える不安も大きいことでしょう。不安が大きい中で、仕事に対するやる気やモチベーションの維持をするのも難しいことです。ホテルスタッフのモチベーションを維持することも、生産性の向上に繋がるため資金繰りの一環だと考えて行動しています。
コロナ禍は未曾有の事態ではありますが、今までの経験と同じ状況になっているわけです。東日本大震災が発生したときでも、ある飲食チェーン店は速やかに銀行へ借入れの電話をしました。この飲食チェーンは、今までの経験から未曾有の事態が発生すると資金繰りが厳しくなることを覚えていたため、電話一本で解決に繋げられたのです。常日頃から金融機関と信頼関係を築いてきたことも、大きな分岐点となりました。
コロナ後のホテル業はどうなるのか
コロナが収束した後のホテル業界は、需要の回復が見込めます。しかしコロナが社会に起こした変化は、ある程度続くとの考え方もあるわけです。今までは団体旅行のプランなどがありましたが、アフターコロナからは少人数での旅行プランが増加する可能性があります。今までシニア世代が好んできた国内旅行の形を、若者世代がそのまま引き継ぐかどうかも疑問です。旅行の需要が変化すれば、今までの営業の仕方を変えていく必要があります。コロナ禍であっても、地方によってはインバウンドの需要があります。現在圧倒的に需要があるのは中国なので、これから先の需要がどうなるかは不透明です。コロナ後の需要の変化を見極めて、流れに乗る仕組みを整えることも大切になります。
健康経営を行うホテル事業者がある
利用者の動きに合わせて働くホテルスタッフの仕事は、長時間労働になりがちです。不規則な勤務形態になりやすい中でも、ホテルスタッフのために健康経営を行う事業者があります。長時間労働の削減や休暇の取得状況の確認などを行い、働きやすい職場作りを行っているわけです。また異なるホテルではメンタルヘルス対策として、若年層・管理職を分けて研修を行いました。対象を分けて研修することによって、メンタルヘルスの問題を自分事だと感じてもらうように工夫をしているわけです。このホテルでは食生活の改善を目指しており、社員食堂にて専任シェフがメニューを提供しています。免疫力向上を目的とする料理や料理長とのコラボメニューなど、バラエティに富んだアイディアはホテルならではです。
当コラムでは健康経営について情報発信をしています。身体を壊してまで会社に尽くす時代から、自分の私生活のことを考える時代へと変わっています。以下もコラムも合わせてご覧ください。
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まとめ
ホテル業界の働き方改革について解説しました。旅行者が多く人手不足に陥っているかと思えば、新型コロナウイルスの流行によって今までの働き方が難しくなるなど、社会情勢に影響を受けやすい業界です。しかしホテルスタッフからの笑顔のおもてなしを受ければ、旅行の道のりや普段の仕事で疲れた心を癒してくれます。コロナウイルスが収束したら、ホテルを利用したいと考えている人は多いことでしょう。
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