- 健康経営
- 2021.05.07 (最終更新日:2022.04.06)
働き方改革で教員の働き方は変わるのか。取り組み事例も解説
教員の働き方が問題となっている
日本の教員の忙しさとはどれぐらいなのか
教員の働き方が問題になっていることを、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。では、日本の教員の忙しさとは具体的にどれぐらいなのかを見ていきます。文部科学省による平成28年度の「教員勤務実態調査」によると、小学校教員ではおよそ33%が60時間以上勤務していることが分かりました。原則として1週間に40時間を超えて労働させてはいけないことになっているので、60時間以上の勤務では20時間の残業になり、過労死ラインの残業をしていることが分かります。この数字は小学校教員だけに注目したものですから、中学校教員と合わせて確認するとさらに多いです。これらの勤務時間には自宅での残業時間が含まれていないため、そのことを踏まえるとさらに労働時間が長くなると考えられます。参照:外部リンク
文部科学省 教員勤務実態調査(平成28年度)
教員はなぜ忙しいのか
ここでは教員の忙しさの原因、働き方改革が進まない理由、教員自身の課題について解説します。
もちろん教員が担う仕事は他にもあります。授業を行うには、授業の準備も必要ですし、学校行事の準備や保護者対応・運営も担当します。不登校の子ども達やいじめの問題に対して丁寧な対応が求められますし、登校・下校時の見守りもあるのです。ここで挙げた教員の仕事内容は一部にすぎないので、教員の仕事の忙しさが伺えることでしょう。ある学校では校内に不審者が現れたさい子どもたちを守るため、刺股を持って対峙した教員がいたようです。この状況を一般企業で考えると、刺股を持って不審者と対峙する従業員などいないのではないか、と考えられますよね。教員は子どもの命を預かる仕事だというわけです。
また、教員には「教員調整額」があります。教員は特殊な職業であるため、休日出勤や残業に対して給与が発生しませんが、その代わり月額のおよそ4%が支給されます。4%という数字がどこから来たかというと、文部省の実態調査によって昭和41年度に明かされた、月8時間の残業に相当する金額として計算されたものです。どうしても残業が発生する教員の仕事において、月に8時間ほどの残業が発生するのは仕方がないから、最初から給料にその金額を含めたわけですね。このことを考えると、現在の教員の残業時間はいかに多いのか分かります。
教員が、自分たちの給料体系を知らないことも深刻な課題です。ある学校では教員が労働条件や勤務条件のことを詳しく知らず、夏休みに初めてほかの先生に尋ねたとの例があります。就労規則と似た規則はあるものの、その存在を知っている教員がいないので、周囲と同じように働けばいいだろうと考えがちです。それどころか、就労規則で定められている勤務時間や休憩時間の存在を知らない教員もいます。休憩時間の存在を知らず、小学校の低学年を担当していて休めない教員もいるわけです。自分たちの現状が異常であることを知らなければ意義を唱える人もいないので、長時間労働が蔓延していると言えます。
教員が忙しい原因とは
教員の忙しさの原因は何でしょうか。教員の仕事自体が忙しいわけではありません。なぜなら諸外国の勤務時間の平均は、日本ほど長くないからです。日本の教員を忙しくしている大きな原因は、課外活動での指導にあります。課外活動での指導とは、お察しの通り部活動や行事、委員会活動などです。もちろん教員が担う仕事は他にもあります。授業を行うには、授業の準備も必要ですし、学校行事の準備や保護者対応・運営も担当します。不登校の子ども達やいじめの問題に対して丁寧な対応が求められますし、登校・下校時の見守りもあるのです。ここで挙げた教員の仕事内容は一部にすぎないので、教員の仕事の忙しさが伺えることでしょう。ある学校では校内に不審者が現れたさい子どもたちを守るため、刺股を持って対峙した教員がいたようです。この状況を一般企業で考えると、刺股を持って不審者と対峙する従業員などいないのではないか、と考えられますよね。教員は子どもの命を預かる仕事だというわけです。
教員の働き方改革が進まないのはなぜか
教員の働き方改革が進まないのはなぜでしょうか。お伝えした通り教員には、授業以外にもさまざまな仕事内容があります。一般的な企業と比較して公立校の教員は速やかに人員を増やすことが難しいので、慢性的な人手不足が発生しているわけです。教員の中でも公立校にて正規雇用で働く場合は、地方公務員の扱いになります。地方公務員には労働基準法第36条が適用されません。つまり時間外労働に対して、基本的に使用者と労働者の間で合意を得る必要がないのです。また、教員には「教員調整額」があります。教員は特殊な職業であるため、休日出勤や残業に対して給与が発生しませんが、その代わり月額のおよそ4%が支給されます。4%という数字がどこから来たかというと、文部省の実態調査によって昭和41年度に明かされた、月8時間の残業に相当する金額として計算されたものです。どうしても残業が発生する教員の仕事において、月に8時間ほどの残業が発生するのは仕方がないから、最初から給料にその金額を含めたわけですね。このことを考えると、現在の教員の残業時間はいかに多いのか分かります。
教員自身の課題もある
教員の働き方改革が進まないことには、制度の課題だけに限らず教員の意識の問題も忘れてはいけません。若い教員は保護者に対してずっと低姿勢で対応しているので、保護者から苦情を言われやすくなっていると考えられます。「何かあったらいつでも仰ってください」と言うと、保護者には苦情を受けてもらえるものだと捉えられるでしょう。保護者の中にも「教育はサービスだから不満を伝えるのは当然のことだ」と考える人が増えた結果、教員の権威が失われていきました。教員は保護者から不満を言われやすい立場になり、ますます対応するべき仕事量が増えていきます。教員が、自分たちの給料体系を知らないことも深刻な課題です。ある学校では教員が労働条件や勤務条件のことを詳しく知らず、夏休みに初めてほかの先生に尋ねたとの例があります。就労規則と似た規則はあるものの、その存在を知っている教員がいないので、周囲と同じように働けばいいだろうと考えがちです。それどころか、就労規則で定められている勤務時間や休憩時間の存在を知らない教員もいます。休憩時間の存在を知らず、小学校の低学年を担当していて休めない教員もいるわけです。自分たちの現状が異常であることを知らなければ意義を唱える人もいないので、長時間労働が蔓延していると言えます。
部活動指導員とは
部活動指導員について
教員の働き方の異常さが叫ばれている中、労働時間を削減する取り組みの1つとして、部活動指導員が制度化しました。部活動指導員は、部活動の時間が長すぎることが問題となり2017年に制度化されています。本制度の主な目的は教員の負担軽減のためと、部活動の質を上げるためです。中学校では担当部活動の経験がない教員が部活動を担当している割合が多いことが、現実となっています。 教員の心理的負担が増える原因には、経験のない部活動の顧問を任されることもあるのではないでしょうか。しかし専門的な知識を持つ外部の人材を部活動全体に配置することで、事故や怪我の防止や部活動の質を上げることに繋がります。部活動指導員を配置したことにより、子どもの技能向上に繋がったとの声もあるのです。部活動指導員の課題とは
部活動指導員による効果が出てきた半面、課題もあります。部活動指導員を副業として行う人がいるので、参加時間が限られることです。部活動指導員がいる時間には教員の参加が必要なので、学校により教員の忙しさが増えた例もあります。これでは、せっかく教員の労働時間を削減するために導入した制度を活用できていません。そのほかに、部活動指導員は技術指導に重きをおくため子どもの心情面に対しての配慮が少ないことも指摘されています。その他、部活動指導員の勤務体制や保護者とのコミュニケーションなど、まだまだ解決できていない課題も多いです。教員の働き方改革の取り組み事例5つ
教員の働き方改革がスムーズにいかない中で、アイディアを生み出して上手に取り組む学校もあります。ここでは、取り組み事例を5つ紹介しました。
また事務職員が中心となって、職員室の環境改善を行った小学校があります。教員が中央に集まりやすいように机の配置を行ったり、情報共有がしやすくなるようモニターを設置したりしたのです。授業で使いたい消耗品がどこにあるか分からなければ、ものを探す時間を使うことになります。そのような時間を削減するために、消耗品の配置を変更しました。在庫管理もしやすくなったので、教員にも事務職員にも使いやすい場所となっています。配布物はリーフレットスタンドを活用して、全ての配布物を子どもに配る形式を変更した中学校もあります。教員の働き方改革は進んでいないように思われますが、さまざまなアイディアを使って進めている学校もあるわけです。
作文や絵画などは、夏休みの宿題において提出しなければならないものの位置づけだったのではないでしょうか。これらの宿題を任意制にすることによって、教員の負担軽減を目指しました。コンクール等の参加についても、学校でまとめるようなことはせずそれぞれの家庭から直接申請する方式にしています。
①はじめに意識改革から行った事例
ある小学校では、はじめに意識改革を行うところから取り組みました。長時間労働が及ぼす影響や先進的な事例を記載した教員だよりを発行したり、校内研修を行って周知したりしたわけです。働き方改革について周知した次の年に、具体的な行動を起こしました。行動内容は、日程表や会議の実施方法を変更することや、部活動の制限、業務改革を担う組織の立ち上げです。その結果、時間外労働の削減ができました。②業務の効率化を実現するチームを結成した事例
業務の効率化を実現するチームを結成して、教員の仕事量削減に取り組んだ中学校があります。この中学校では、「教員のコミュニケーションスペースを担当するチーム」「会議室の効率化を図るチーム」「ペーパーレス化など仕事の改善を図るチーム」「環境の改善を図るチーム」の4チームを作って、働き方改革を進めているわけです。市の取り組みと連携してCAPDサイクルを回した結果、コミュニケーションの活発化やデータ量の削減、タブレットの活用による業務の効率化が進みました。③仕事内容の見える化を図って改善を目指した事例
ある高校では、仕事量の調査を行い、仕事内容の見える化を行いました。個人の残業時間を含む仕事量全てを理解し、個人が担う教科や部活動を含めてできるだけ作業量を均等にします。個人以外にもチームごとに仕事内容の見える化を行い、組織的に分業を可能にしました。④事務職員が中心となり働き方改革を進めた事例
ある学校では総務や財務に長けている事務職員が、仕事内容の専門性を活用して校務運営に参加し、働き方改革を行っています。保護者に疑問や不安があれば、問い合わせが増えて教員の負担が増加します。そこで事務職員が中心となり、学校のガイドブックを配布しました。ガイドブックには教育目標や感染症のこと、学校給食費などを掲載しています。これまでは紙媒体で行っていた保護者への調査を、Webのシステムを活用して集計作業の効率化を図りました。また事務職員が中心となって、職員室の環境改善を行った小学校があります。教員が中央に集まりやすいように机の配置を行ったり、情報共有がしやすくなるようモニターを設置したりしたのです。授業で使いたい消耗品がどこにあるか分からなければ、ものを探す時間を使うことになります。そのような時間を削減するために、消耗品の配置を変更しました。在庫管理もしやすくなったので、教員にも事務職員にも使いやすい場所となっています。配布物はリーフレットスタンドを活用して、全ての配布物を子どもに配る形式を変更した中学校もあります。教員の働き方改革は進んでいないように思われますが、さまざまなアイディアを使って進めている学校もあるわけです。
⑤仕事を厳選し効率化を徹底した事例
仕事を厳選し効率化を徹底した小学校があります。仕事を厳選といっても、ただ時間削減を目標にするのではなく育てたい子どもの理想像を共有したうえで仕事の効率化を図りました。また教員の負担が大きい部活動や成績関係、事務の仕事を取り上げ、具体策を練っています。通常、市立学校は3学期制なので通知表の配布は3回行われることと思います。しかし通知表の配布を10月と3月の年2回にして、教員の負担の軽減を目指したのです。教員の負担軽減ばかり考えて、子どもが長期休暇前に成績を振り返る機会を損なわないために、成績チャートを年2回配布しています。作文や絵画などは、夏休みの宿題において提出しなければならないものの位置づけだったのではないでしょうか。これらの宿題を任意制にすることによって、教員の負担軽減を目指しました。コンクール等の参加についても、学校でまとめるようなことはせずそれぞれの家庭から直接申請する方式にしています。
参照:外部リンク
文部科学省 学校における働き方改革
これからの教員の働き方改革とは
学校という組織自体を見直していく
学校の働き方改革を増進するには、学校と言う組織自体を見直す必要があります。学校組織のマネジメントを管理職が行うことが必要です。しかし教頭や副校長などの管理職も長時間労働が課題なので、全てを管理職に任せるのではなく学校全体で対策を練ることが大切になります。例えば、会議の回数を減らすことや類似した内容の委員会を統一することが具体的な対策です。長く勤務していて経験のある教員がその知識を発揮して、連携や役割作りを行うようにします。組織の運営を持ち回りで行うのではなく、適材適所に意味のある配置をした方がいいことは、教員だけではなく企業にも言えることです。ほかにも積極的に地域のボランティアや事務職員の参加、専門的な人材を活かして学校組織の運営をチームで行うようにします。学校組織をチームにしていくためには人材の確保が重要になるので、校長のマネジメント力も必要です。教員が担当する仕事を明確化する
お伝えした通り、小中学校は大変幅広い仕事を担当しています。その中には教員や学校の役割なのか線引きの難しい仕事もありますし、仕事をすることが習慣化しているものも多いです。担当している仕事を全て見直して、教員や学校以外が担える仕事は任せるべきだと考えられています。今まで教員や学校が担当していた主な仕事は3つに分けられます。・学校以外が担当するべき仕事
・学校の仕事ではあるものの、必ずしも教員がしなければならないわけではない仕事
・教員の仕事ではあるものの、負担が軽減できそうな仕事
上記3項目に今までの仕事を当てはめて、教員や学校以外に任せるようにしていくわけです。
勤務時間に関する意識を変えていく
勤務時間の管理を申告方式で行うのではなく、タイムカードや情報通信技術を用いた管理の徹底が求められます。しかし働き方改革の目的は勤務時間を管理することではないので、本当に必要とされている教育活動に不行き届きがあってはなりません。超勤4項目として、具体的に校長が時間外勤務を命じることができない項目が定められています。校長が教員に対して命じられないことは、例えば夜間の見回りや早朝の登校指導です。研修や人事評価を取り入れて教員全体のマネジメント能力の向上に務めたり、業務改善のために検査や評価したりすることが必要だと考えられています。働き方改革に取り組むことは健康経営に繋がる
働き方改革で長時間労働の削減や休日数を見直すことは、健康経営に繋がります。健康経営を行う企業は、長時間労働の削減に取り組んでいるからです。優良な健康経営を行う企業として経済産業省が認定する「健康経営優良法人」という制度がありますが、その認定項目の中にワークライフバランスの推進や過重労働対策があります。慢性的な人手不足を放置していると、さらに職場環境が悪化するのは学校も企業も同じです。これからは学校も教員を施設の資産だと考えて、戦略的に健康を目指す必要があるのではないでしょうか。
当コラムでは、健康経営について情報発信をしています。健康経営について理解を深めたい方は、以下も合わせてご覧ください。
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健康経営に係る顕彰制度について
まとめ
教員の働き方改革について、現状や課題、将来を解説しました。教員が担当する仕事内容は大変多いですが、そのことに対して疑問を持たなかった人が多いのも現実です。近年教員の働き方が指摘されているので、今後変化する可能性があると言えます。今後良い方向に変わっていく可能性も踏まえて、多角的に情報収集してください。
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